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第73回 機関と外装
今回は2台のM3Cを取り上げてみようかと思います。 一台は『最近ベルトの鳴きがうるさくて。。。』との事で入庫。 もう一台は仙台からのオーナーの車輌で外装のガラスコーティング等の作業を実施致します |
ベルト鳴きのひどいM3の距離はあとわずかで100,000Km。何年かぶりにご来店のオーナーの車輌なので その他に何か問題が無いか点検を実施。 エンジンをかけるとベルト部からの異音は確かに確認、 その他の部分からもガチャガチャとエンジン音に混じり合い異音と判断できる音が・・・ ・ ・ ・ ・ ・ フロアパネルを外し ベットリと垂れたオイルと付着した埃汚れを確認。 ・ ・ パワステからのオイル漏れは即目視にて確認。 ・ ・ エンジンオイルと思われる漏れも発見。 ベッタリと付いた汚れの上を漏れたオイルが垂れている状況なので昨日今日に漏れ始めたわけではなさそうです。 良く確認すると、ファンベルト後部、エンジンのフロント側からの漏れと確認できました。 |
エンジンフロント側からのオイル漏れとなると一番に見ておくべき箇所はVANOSユニット。 |
予想通り、VANOSユニットからのオイル漏れでした。画像はClickで拡大します。 |
SSTを使用し、VANOS本体を外します。 この時に普段確認する事の出来ない箇所等は点検し、問題が無い事を確認した上で作業を進めます。 VANOS単体で駄目になってしまっていることもあれば、 カムホルダーのガタツキやスプロケの不具合等が絡み合い、アイドリング不調や ある一定のエンジン回転域だけ吹けないといった現象が表面化しているケースも多い為です。 |
取り外したVANOSユニットと新品の比較。 もともと付いていたVANOSは普段見えない下部がオイル汚れでアルミ地が見えないほど。 |
取り外しと逆の手順で取り付け作業を進めます。 |
始動時非常に音が気になったベルト部の交換。 右の写真がテンショナーになります。足廻りのショックアブソーバーと構造は基本的に変わりません。 油圧が保持されている間は、ベルトが伸びてしまっても自動で張り調整してくれますが テンショナーが伸び切り、張り調整が出来なくなるとキュルキュル、カチャカチャと音が出てきます。 プーリーやローラーもベアリングを使用し、回っていますからベアリング不良やシャフトのガタツキにより異音が出ます。 |
オイルの漏れている量としては一番酷かったパワステ部の修理。 ギアボックスやオイルポンプに不具合が現れる前に適切な処置が必要です。 ギアボックス内のオイルとスラッジがそのままではオイル交換をした意味が全く無くなってしまいますから 全ての汚れを取り除いた後、新しいオイルを注入します。 |
ビルシュタインR2000でエンジンの内部洗浄。 エンジンのガチャガチャ音は機械的な故障が見られなければカーボンスラッジを除去する事により 解消出来るケースが多く、消音だけではなくアクセルのピックアップとエンジンの吹け上がりも見違えます。 15,000〜20,000Kmくらいに一度の施工をおすすめします。 |
全ての作業が終了し、エンジンをかけるとガチャガチャ鳴っていた異音は消え、 期待の出来るエンジン音変わりました。 テストランを開始し、全体のフィーリングの向上を確認しつつ走っていると。 あれ?ストールしてる。 何時の間に? キーを捻って再始動。 普通にかかるし、問題は無さそう。アイドリングもブレは無し。 アクセルのピックアップも良い。 たまたまかなぁと思いつつも疑問を残し、その日のテストランは終了。 翌日 テストランを続けていると またストール。 昨日の今日なので車の挙動には気を配っていたので、ストールした時の各部の状況を 振り返りながらキーを捻り再始動。 全く問題無くエンジンはかかる。ハンチングを起こしたり、フィーリングの変化も無し。 DMEテスターで診断をかけてもエラーコードは無い状態。 エンジンストール時の規則性を何点か見つけ出し、原因の追究へ。 |
まずはエアホースの抜けや破損等でエアの吸い込みが無いかどうかをチェック。 ・ ・ ・ 一箇所だけ切れたエアブーツ発見。 非常に分かりづらい所が切れていました。 |
もちろんこちらは交換。 交換しつつもこれで完治するだろうか?と疑問に思いつつもテストラン。 結果はストールしました。 こうなるとエンジンの回転数を制御している各センサーやCPUを検査しなくてはいけません。 エラーコードが出ていない場合でも経年や走行距離でその性能は徐々に落ちてきてしまいます。 ずっと100%の性能を維持してきたものがいきなり0%になりエラーコードとして出るケースももちろんありますが そういった場合は複合的に故障要因が重なり合い不具合として表面化する場合が多いものです。 今回のように、車全体のコンディションの底上げをすると、性能が落ちたセンサー類が その良くなったコンディションについていけない場合に今回のような現象が起こります。 各パーツの導通状態や抵抗値の検査、新品時の性能緒元等を比較し、検査を進めていった所・・・・ エアフロセンサーの機能がかなり低下し空気の流入量の測定値にバラツキが出る場合にエンジンストールする事が判明。 現状をオーナーに説明をしパーツ交換。 エアフロ自体が決して安価なものでは無く、構造はホットワイヤー式になりますので、 中には洗浄する方もいるようですが 根本的な解決には至らないケースも多いので、新品と交換です。 DMEに残っている全ての学習を一度リセットし初期化させ作業は完了です。 今回の作業を施工する前には、しっかりと油圧がかかっていないような ダランとしたエンジンフィールでしたが施工後はカッチリとしたエンジンフィールに変化しました。 もちろん今後乗り続けていくには、まだまだ手をかけて行くべき箇所もオーナーに伝え、納車となりました。 確かに手間がかかるケースもありますが、一度手を入れた所がすぐに駄目になり再修理というケースは稀ですし 致命的な不具合が無い限り手をかける事によって新車時に近いフィーリングを取り戻せるのも ドイツ車ならではの特徴なのではないでしょうか。 |
こちらはボディガラスコーティングの下準備中のM3C。 こちらは当社で販売した車輌。走行は46,300Km。 1年に2回、必ずメンテナンスで入庫していただいております。 オーナー自身も非常に大切にしているのが分かります。 |
コーティングという作業は磨くという作業に目が行きがちですが(もちろんそれも大事ですが。)、 いかに下準備に手間をかけるかによって仕上がりの良し悪しに関わってくるといっても過言ではありません。 |
とにかく外せるパーツは全て外します。 マスキングテープの使用は必要最低限に。マスキングテープで養生してしまう事が殆どだと思いますが、 せっかくコーティングしたのに、モールとボディの際に汚れが残ってたら嫌ですよね。 |
納車時には綺麗だった所も納車から2年程経過し、土埃が溜まっています。 全ての汚れを落とし、トラップ粘土で鉄粉除去をし下廻り、エンジンルームをスチームで洗浄し、コーティングの開始です。 |
作業工程は割愛させていただきます。詳しくはメンテナンスレポート第36回に詳しくUPしていますのでご参照下さい。 当社で使用しているのはエシュロンのガラスコーティング剤。 撥水の仕方と持ちも良いのですが、しっかりと磨き上げたボディに施工すると 非常に深みがでて今まで使用してきた中で比較してみてもかなり良いコーティング剤。 |
細かい箇所や取り外したモール類も全て洗浄しボディに取り付けていきます。最後に光軸調整をし作業は終了。 ここまでやると金額的に高いんだろうなぁと思われがちですが、 お客様からの声を聞くと他店で施工するのとあまり変わらないようです。 ご興味ある方はお気軽にお問い合わせ下さい。 |
走りのステージが仙台ですからM3が活躍するのは雪解けから秋まで。 存分にそのポテンシャルを楽しめるようにエンジンのコンディションを整え。 |
デファレンシャルから漏れていたオイルも修理、飛び石で傷付いたフロントガラスは 車両保険を使って新品に。以上で作業は完了。 今年年末に車検を迎える車輌なので、車検時の打ち合わせをさせていただき納車となりました。 |