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第60回 M3C SMG

 

 
 
今回のメンテナンスレポートの主役はM3C SMG

お客様がオークション代行で購入した車輌。

購入後、他店でメンテナンスされ、その後当社に持ち込まれました。

走行距離は86,000km

エンジンオイル漏れ・プレッシャーバルブ
おそらく規定値外?・フロントローター 残無し?・フロントパッド リアパッド 汚れ大?・『ブレーキオイル』
おそらく水漏れ?ガタ?・ウォーターポンプ サーモスタット ラジエターホースアッパーロア 冷却水
おそらく消耗大・ベルト類
おそらく異音?ガタ?・ファンカップリング
消耗していたんでしょう・フロントタイロッド ロアコン フロントスウィングサポート フロントスタビブッシュ
パワステオイル漏れ・パワステインテークホース リターンパイプ
バックランプ付かなかったのでしょう・バックランプスイッチ
エンジンオイル
(他にもあったかも)

上記の内容を施工してもらったそうです。

内容的には結構ボリュームありますね。

ここまでメンテナンスされているオーナーは何が気になってご来店されたのでしょう?

1・『高回転域での異音?』
2・『以前318isクーペを所有していたがM3ってこんなフィーリングなの?(悪い意味で)』

そんな疑問をお持ちになってご来店されたようです。

それじゃあ、と言う事で車輌を確認する前にまず乗らせて下さい。と言い
オーナーを隣に乗せてステアリングを握ります。

オートマモード、マニュアルモードを使い分けながら走ります。
私『遅いですね・・・・・』
オーナー『そうですか・・・・』
2000~3000回転のモッサリした吹け上がりが気になります。
3000回転以上回すと無理矢理車の性能で誤魔化されている感じのフィーリング。

SMGのシフトアップダウンのタイミングも何かおかしい。

ウィンドウを開けエンジン音も確認。

カリカリカリカリカリカリ。

ノッキング音も大きい。

左リアトレイ付近から

コトコトコトコトコトコトコト。

リアアッパーマウント抜けてます。

一通り確認させてもらってからリフトアップしました。

私『アンダーフロアカバー付いてないですけど・・・・』
オーナー『え?アンダーフロアカバー??? 』
私『M3Cに標準で付いてますけど、メンテナンスされたお店で言われませんでした?』
オーナー『いいえ。言われてないです・・・』

まぁ良くある事です。

下廻り確認、エンジンブロック横にオイル漏れ発見です。

プレッシャーバルブ交換前のオイル漏れ跡でした。

アレ?

別にフロントメンバー部分にオイル溜まりが。これもオイル漏れ跡ですかね。

いやいやいや、エンジンオイル漏れてました。

ミッション部確認。



私『SMGのハイドロリックオイルジャジャ漏れですよ・・・』
オーナー『先日、メンテナンスしたお店持っていったんですが・・・』
私『直してくれないんですか?そんなこと無いでしょう?』
オーナー『SMG一度も触った事ないって言われまして・・・』
私『・・・・・』

まぁ良くあることです。

施工した作業が無駄だとは言いません。施工前の状態は不明なので。

オーナー様と相談し、最初のご質問にあった

1・『高回転時の異音』・・・・ノッキング音やら色々な音が出ている為、要検査。
2・『ISクーペのレスポンスの良さ』・・・・
所有された方はわかるでしょうが4気筒特有のあの軽さをM3に重ねてしまうのはきびしいが実際にレスポンスは××

と遠慮せずお答えさせて頂き、まず

1・オイル漏れを止める。(エンジン及びミッション)
2・フィーリングを良くする。(エンジンの吹け上がりに関係する箇所)
3・その他気付いた点あれば。

以上を改善する為にお預かりさせていただきました。
 
 
 
 
 
まずは全体の状態を確認する為テストランと漏れてるのか修理した後のオイル漏れ跡なのかを判別する為、スチーム洗浄。

テストラン中、漏れたオイルがマフラーに付着しとてつもない白煙が・・・・

一歩間違えると冗談抜きで炎上です。

確認するとミッション後部からのオイル漏れのようです。
SMGハイドロモーターは交換された形跡があり綺麗でした。
どうもSMGとミッションをつなぐドライブモーターからオイル漏れしているようです。

ドライブモーター本体にはギアスイッチが付いているのでそこからの漏れなのか本体からの漏れなのか
を判定する為に、マフラー遮熱板を外し、再度スチーム洗浄でオイル漏れ跡を落としテストラン。
 
 
 
 
結果はドライブモーター本体からのオイル漏れでした。
ギアスイッチからのオイル漏れであればギアスイッチのみの交換を考えましたが
ドライブモーターASSYでの交換になりました。
赤い矢印部分がオイル漏れ。専用ハイドロリックオイルの為、グリーンに着色されています。
 
 
 
 
 
ドライブモーター交換。
マフラー、ドライブシャフトを外し、消耗している箇所で同時に交換できる所は同時に交換。
 
 
 
 
SMGオイルが大量に付着し、本来のマウントとしての機能を果たせない状態のミッションマウントも同時に交換。
 
 
 
 
 
亀裂が多く目立ったユニバーサルジョイントも交換。
 
 
 
 

エンジン側のオイル漏れはVANOS取り付け部のガスケットとカムカバーガスケット、プラグホールガスケット不良の為。

VANOSガスケット、VANOSフィルター等交換し、
VANOSソレノイドの機能テストとチェックをし、この部分のオイル漏れ修理は完了。

 
 
 
 
 
カムカバーは端が切れてしまっている程の消耗。昨日今日でオイル漏れが始まった訳ではなさそう。
カムカバーを交換する際にボルトガスケットも交換。ここが未交換の場合、オイル漏れが再発しやすいです。
 
 
 
 
 
レスポンスアップ、ノッキング対策の為のメンテナンスを施工し、プラグ、フューエルフィルターも交換。
 
 
 
 
最後に新品のアンダーフロアカバーを装着し作業は完了。
 
 
 
 
完成後のテストラン。
SMGのエア抜きも走行時行い、走り込むほどにシフトアップダウンの切り替わりのタイミングが早くなっていきます。
色々な媒体を拝見するとSMGは故障しがちで敬遠されがちなM3ですが
シフトの切り替えタイミングが早い車輌は非常に乗っていて面白い車輌です。

車輌価格自体も6速モデルより安価で良質な車輌も多いですから当社は
SMGがしっかりと機能している車輌であればおすすめ致します。

ですが購入後、しっかりと定期的に下廻りを確認出来る環境下である事、またその認識を
乗り手がしっかりと理解している事が大前提です。下廻りを定期的に確認し
ちょっとでもオイル漏れや異常が見られたら早期に解決する事です。

どんな高額な車輌でも距離や年式を重ねればオイル漏れは確実に起きます。

今まで何台も初期SMGは修理してきましたが
オイル漏れ放置によるモーター焼き付き等が原因になりシフトが出来ない状態が多く見られます。
もちろんSMG初期動作不良も見られた車輌ですが、当社で修理しているSMG車輌は
異常放置による不具合が多く見られます。
一度、焼き付いてしまえば、その後いくらオイルを足そうともその本来の機能は回復致しません。

悪化の一途を辿るのみです。

今回のオーナー様は車輌価格を安く押さえ、購入後リセット作業をし
全体のコンディションを整え、良い状態を把握した上で、乗っていくという非常に良い付き合い方だと思います。
ご予算の都合上、足廻りの作業は次回になりましたが
異常が出てきている箇所、その作業と共に同時に施工すべき箇所とを説明し
その意味も理解していただき、納車となりました。

目で見えるものだけではなく、放って置くと起こりえるであろう事態を予測し、
二度手間にならないよう、手を入れてあげるタイミングをアドバイスするのも私達プロショップの仕事だと考えます。

最近では車を安く(もちろん相場として当てはめるには絶対数が少ないので難しいとは思いますが。)
購入し、何もせずに乗って行こうとする方も最近では少なくないです。
納車整備にどんな事をしたのかも把握していない方が大勢いらっしゃいます。
売り手にも問題があるでしょうが、買い手にも、もうちょっと注意が必要かなとも思います。

足廻りを触ったにも拘らず一ヶ月も経たない内に足廻りから異音や
明らかに以前から漏れているオイル漏れが見つかる。

どうなんでしょう?

考え方、感じ方は人それぞれですから、その押し付けはしませんが。

先に書いた通り、施工した作業が無駄だとは言いません。施工前の状態は不明なので。
 
 
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