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第66回 Battery
今回は電気のお話です。 上の写真はバッテリーの電圧数値。 見て分かる通り、あきらかに異常な電圧値17.88V。 一般の乗用車の正常電圧は12V。 何故このような現象が起きてしまったのでしょうか? |
今回の車輌はALPINA B3 3.0 ショウルームの隣にピットスペースがあるのですが このB3が入ってきた途端に周辺が箱根の温泉卵で有名な大涌谷状態に。 大涌谷をご存知ない方もいらっしゃると思いますので 簡単にその匂いを表しますと。 硫黄の匂いです。それを強烈にしたような本当に目が染みるほどの匂い。 最初は私達も車輌異常に気付かず、オーナーからエアコン等の電装部の作動がおかしいと 伺い、その強烈な匂いの発生源を辿るとバッテリーが沸騰しておりました。 そうなった原因は一体なんでしょうか?調べていきましょう。 |
まず、非常に簡単にですがバッテリーの構造を説明致しましょう。 バッテリーの内部にはセルという槽が6個並んでおり 1セルは約2.0Vの電圧を発生します。そのセルが直列に6個つながることによって 12Vの電圧を発生させるわけです。 そのセル内には正極板と負極板という鉛合金、電解液が入ってます。 電解液の内容は希硫酸といって簡単に言うと硫酸を水でうすめた液体。 この硫酸基が電気化学的な働きで鉛合金にくっついたり、電解液に戻ったりして充放電が可能になります。 バッテリーが過充電されるとセル内の電解液中の水が電気分解されることによって酸素と水素の発生が盛んになり、 正極板からは酸素ガス、負極板からは水素ガスを放出するわけです。 そのまま放置し続けると爆発しますのでとても危険だったりします。 このガスが大涌谷の匂いの元でした。 |
それでは過充電の原因は? それはオルタネーターの故障が原因。 通常、オルタネーターの故障と言うと メーターパネル内にバッテリー警告灯が付き充電しなくなってしまうケースを思い浮かべますが 今回のように過充電してしまうケースも有ります。 過充電の場合は他の各電装機器にも影響を及ぼしかねないですし、 硫酸は猛毒になりますので非常に危険だったりもします。 今回の故障原因はオルタネーターのIC不良。 ご存知の通りオルタネーターはエンジンの回転に合わせベルトで回転させます。 それに合わせオルタネーターでは交流電流を発生させ、 IC(レギュレーター) によって直流に変化され電圧も12V(厳密には違いますが)に変換されます。 今回は電圧制御が不可能になった為、異常電圧がそのまま各電装部に回ってしまい故障となった珍しいケース。 |
という理由からオルタネーター交換。 アルピナは大容量140アンペア。 各リレーも交換し、作業は完了。 |
ラゲッジスペースに溜まった電解液はそのまま放置するとあっという間に錆が大発生しますから もちろん全て洗い流し、洗浄致しました。 キーを捻ればエンジンがかかるという一連の動きは本当に日常的であり 電気の流れも目で見えるものではないので普段、車を使用していく上で バッテリーの存在さえも失念しがちですが、 バッテリーセル内部ではエンジンの始動時や充電時に約7V〜14Vの電圧変化が起き 電気化学反応を忙しく行っているわけです。 ですから1年に一回は停止電圧を測定し、良否判定をする事をおすすめ致します。 もちろん蓄電池ですからしっかりした製品であれば早々に駄目になってしまうことはありませんが、 安価なバッテリーはセル内の極板の不具合等も出やすいので注意が必要です。 |