【E36 M3】シフトチェンジ異常【85,000Km】
埼玉からご来店のM3。
高速走行した後に、シフトチェンジがスムーズに行われない
とのオーナーからの訴えで入庫しました。まずはレリーズシリンダーを疑いましたが、
問題は無かったのでSSTを使用してクラッチプレートの残量チェック。
まだ残量はありますが、クラッチプレートの測定面を変えながらチェックすると
クラッチプレート表面が均一に減っていない事も判明し
熱膨張によるクラッチプレートの歪みが一つの原因となり、シフトチェンジが困難になる事が
あるので、オーナーと打ち合わせをし今回はクラッチKITの交換を実施します。まずはミッションを降ろしチェックします。 ハウジング内部はクラッチプレートが磨耗した粉塵で汚れているので洗浄します。 プレッシャープレートを押す役割のプッシュロッドに錆が発生しているので
これではレリーズベアリングの動作に支障が出てしまいます。 取り外したクラッチプレート。
残量はまだ大丈夫ですが、取り外して測定すると歪みが大きく出ている事が良く分かりました。
クラッチ部のトラブルはどうしても、ミッションを降ろさないと目視で確認出来ないので
今回のようなケースの場合は、今まで蓄積された過去の修理事例を参考にしながら
原因を特定し作業に移る事もあり、過去のデータの大切さを実感させられる事も多いですね。 このような錆も、シフトチェンジが困難になる原因の一つと考えられます。スチームで綺麗にハウジング内を洗浄します。プッシュロッドに発生した錆は、プッシュロッド自体を傷つけない番手のサンドペーパーを使用し
丁寧に除去します。 除去後は、すぐにグリースアップし錆の発生を抑えます。 ボールピンを交換。 このボールピンを支点にして、レリーズフォークが動きボールピン自体の消耗が進むので同時に交換します。 クラッチプレートの新旧。 クラッチカバーの新旧。 レリーズベアリングの新旧。
クラッチ交換はこの3つのパーツを1セットと考えて交換するのがセオリーです。
稀にレリーズベアリングだけを交換・・・・といったような修理事例を聞きますが
間違い無く、早期に再度ミッションを降ろす事になる可能性が高いので、そういった修理は
避けた方が無難です。新しいクラッチカバーに注油をします。
これはクラッチカバーの動きを滑らかにし、クラッチペダルを踏んだ時に出る異音を防ぐ為のものです。
一度組み付けてしまうとなかなか再度見られる所では無いので、細かく作業を進める事が大事になりますね。 フライホイール表面も随分と荒れているのが分かりますね。 こちらもサンドペーパーで綺麗に面を整えてからクラッチパーツを組み付けていきます。 作業終了後は高速、一般道をテストラン。
クラッチ部分だけではなく、車輌のトータルコンディションも合わせて最終チェックし
入庫前のシフトチェンジの不具合が嘘のような気持ち良さでシフトアップシフトダウンが
楽しめました。
クラッチの切れが悪い、シフトチェンジがスムーズに行えないといったような症状は
オイルのチョイスの問題から今回の修理事例のように、かなりの数の原因が考えられる事が
多く、症状を聞いたのみでは原因を特定する事が難しい事も多いのですが
実車を拝見させていただければ、スムーズに原因が判明する事も多いので
このような症状でお困りの方はお気軽にご相談下さい。
2013年07月31日