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MAINTENANCE REPORT

【Z3 M Coupe】フルブッシュ交換etc,,,【61,000Km】

久しぶりの更新です。4月間近、暖かい日が続いてますね。
新店舗に移転してしばらく経ちますが、おかげさまで整備ご依頼も多く忙しく毎日を送らせてもらっています。
旧店舗でのレポートも多く残っているので、しばらくは新旧混在でのレポートアップになるかと思います。

今回のメンテナンスレポートはZ3 M Coupeのオイル漏れの修理や足廻りのリフレッシュ作業を行います。
走行距離は61,000Km。年式を考えれば低走行と言っても良い車輛ですが、
経年による消耗など当然ありますので、そういった点に注意しながら作業を進めて行きましょう。
アンダーカバーを外すとベッタリと漏れたオイルが付着していました。
アンダーカバーが装着されているモデルはカバーが漏れたオイルを受け止めてしまい、
オイル漏れに気付いた時には症状がかなり悪化しているケースがほとんどです。
エンジンオイル交換などのタイミングで一度アンダーカバーを外してもらい、見てもらうのが良いと思います。
クラッチの残量チェック。
始動からしばらくするとギアが入りにくくなるという
クラッチカバー・ディスクなどの定番トラブルです。
まずはVANOSユニットからオイル漏れ修理をしていきましょう。
VANOSユニットは構造上オイル漏れが発生しやすく、
可変バルブ機構は非常に優れた機構ではありますが、ここに問題があるとそのエンジン本来のレスポンスを
味わえない事がほとんどです。パッと見では判断できませんが、タイミングチェーンカバーやA/Cコンプレッサー
などにオイルが付着している時などはVANOSからのオイル漏れを疑ってもよいでしょう。
VANOSユニットを取り外す為、カムカバーを外し、カム廻りに偏摩耗など無いかもチェックしておきます。SSTを使用しVANOSユニットを取り外します。VANOS内のスラッジ量なども確認。
VANOSを取り外して分解しながら内部の洗浄を行うのですが、
エンジン内部が汚れている状態ではVANOSだけを洗浄しても
意味が無いケースもある為、パーツ単体で見るのではなく、エンジン全体の状態を確認しながら、
作業メニューを作成していかないと、折角の作業が意味を無くしてしまう事があり、
古い車になればなる程、そういった点に注意をしながら無駄のないメンテナンスを行う必要があります。VANOSの取り外しが完了。
スラッジの量やオイルの汚れ具合を見ると、もう少し早いペースのオイル交換が必要かもしれません。取り外したVANOSユニット。
オーバーホールを行って内部の状態を確認し、スラッジの洗浄を行ってOリング等の消耗品を交換します。各パーツに分解してパーツの状態を確認し、各ガスケット・Oリングを交換。取り外したソレノイドバルブと新旧の各種Oリング。
交換するOリングは多い為、交換もれ等がない様にしっかりと確認しながら作業を行います。ソレノイドバルブへ新しいOリングを装着。
経年劣化で徐々に油分が抜けてしまうと、弾力性が無くなって固くなる事で密着度が失われてオイル漏れを発症する為、
定期的な点検・交換が必要なのですが、エンジンオイル交換を怠っていると汚れたオイルに含まれたスラッジが、
Oリングやガスケットの劣化を早めてしまう為、オイル漏れを防ぎパーツの劣化を軽減する為にも、
定期的にエンジンオイル交換を行う事は非常に重要で、しっかりとしたオイル管理が必要です。
洗浄を行ったVANOS本体にソレノイドバルブを装着。新旧のソレノイドカバーガスケット、各Oリング、オイルフィルター。
劣化や経年が気になるパーツは全て新品へ交換。オイルポンプ部のOリングの交換。VANOSは様々な箇所にOリングが使用されている為、交換もれがない様に1点1点確認しながら交換を行います。VANOSを戻す前にエンジン側に付着したオイル汚れ等を綺麗に落としておきます。圧力リミットバルブのOリングを交換。カムカバーに残った古いガスケットの除去を行って装着面を綺麗に整えた後にカムカバーの洗浄を行います。新旧のカムカバーガスケット、プラグホールガスケット、カムカバーボルトのラバーシール。
経年劣化してしまう為、経年を考慮して定期的に交換が必要なパーツです。新旧のスパークプラグ。
交換する際は仮に1本だけに何らかの症状が出ていたとしても単品での交換は行わず、
必ず6本セットで交換を行って下さい。エンジンオイルエレメントベースからのオイル漏れの作業を行います。
漏れている箇所が非常に見え難い為気付かない事が多いのですが、
エンジンを下から見てインテーク側に漏れたオイルが垂れている場合はここからのオイル漏れがあるケースが多いです。オルタネーターを外し
オイルエレメントベースを取り外します新旧のオイルエレメントベースガスケット。
新しいガスケットを装着。
E30モデルのようなガスケットだとオイル漏れも起こりにくいのですが、
この形状だとオイル漏れの頻度としては多めになってしまいますね。
エンジンオイル交換の前にエンジン内部のフラッシングを行って、
内部に堆積したスラッジやカーボン等の汚れを落します。
使用するフラッシング剤は【wynn’s OIL SYSTEM CLEANER】
汚れに素早く浸透するだけでなく、汚れを落す際の摩擦を抑え、内部に保護被膜を形成し、
再付着防止効果で一度落した汚れの再付着を防止する事で、新しいオイルの再汚染を防ぐ効果が期待出来ます。フラッシング剤を1本注入し、エンジン内部のフラッシングを行います。10分~15分程アイドリングを行い、フラッシング剤を浸透させて汚れを落とした後に、
落とした汚れと共に一気にオイルを排出。
出来るだけエンジン内部に汚れを残さない為に、
オイルの排出には充分に時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行います。
エンジンオイルレベルセンサーを交換。
新旧のオイルレベルセンサー。エンジン始動時にオイルチェックランプが点灯していても
放置されがちな部品ですが、万一を考えれば交換しておくべき部品ですね。
センサーの装着部からもオイル漏れが発生するケースがある為、
装着面の汚れなどは綺麗に取り除いておく事が大切です。
新しいオイルレベルセンサーを装着して交換が完了。
新旧のエンジンオイルエレメント。使用するOリングやワッシャ等も全て新品へ交換。
新しいエレメントと比較するとかなりオイルが汚れていた事が判ります。
エンジンオイルエレメントはエンジンオイルが吸着した汚れを濾過する事で汚れを取り除き、
クリーンな状態にして再びエンジンへオイルを戻しているのですが、
汚れが酷くなるとエレメントが目詰まりしてしまい、オイル流量が少なくなってしまうのを防ぐ為、
バイパス機能によって濾過は行われず、汚れたオイルがそのままエンジンへ戻ってしまいます。
バイパスしているかどうかはモニター出来ませんので、エンジンオイルフィルターの交換は
オイルの性能を充分に発揮させる為にもエンジンオイル交換と同時交換をおすすめしています。新しいオイルエレメントを装着。
装着の前にエレメントケース内部に残った古いオイルを綺麗に取り除いておく事も大切です。エンジンオイルは【FUCHS TiTAN SuperSyn 5w-50】をチョイス。
真冬の低温時から真夏の高温時まで性能を遺憾なく発揮し、オイル消費量を抑え、
一気に高回転域まで吹け上がるエンジンにリピートするオーナーも多く、
支持率が高い高性能低燃費の100%化学合成エンジンオイルです。規定量のエンジンオイルを注入し、エンジンオイル交換が完了。
エンジンオイル量は多くても少なくてもエンジンに悪影響を及ぼす為、
目分量ではなく必ず計測して規定量を注入する事が大切です。ブッシュの交換作業に入ります。
足廻りパーツを取り外す為、妨げになるマフラーやプロペラシャフトなどを先に外しておきます。ドライブシャフト等で見えなかった箇所に凹みや擦り傷等の異常が出てないか確認。トランスミッションを降ろす為、接続されているシフトリンケージを外しておきます。取り外したトランスミッションに異常がないか各部のチェックを行って、各部の消耗品等を交換していきます。クラッチの削りカス等で汚れたハウジング内部。
綺麗に洗浄を行ってから各部の状態を確認し、パーツを取り外していきます。インプットシャフトのスプライン部分は使用していくと、グリスが切れてしまう事で、
どうしても錆が発生してしまうのですが、
レリーズベアリングの動作をスムーズにさせる為に慎重に錆を取り除き、グリスアップをしておきます。トランスミッションの作業を行う前にスチーム洗浄で全体の汚れを綺麗に落としておきます。クラッチパーツを点検・交換する為、エンジンから取り外します。取り外したクラッチパーツ。
全体的にプレート・クラッチに焼けがあり、あまり状態は良くありません。
クラッチ焼けの原因は半クラッチを多用したり、クラッチプレートが摩耗してしまうとクラッチが滑ってしまい、
クラッチペダルを離しても半クラッチの状態が続いてしまう事で発生します。
クラッチプレートが高温になって焼けてしまうと、焼けた匂いだけでなくプレートが歪んでしまう事もあり、
そうなると変速が出来なくなるだけでなく、フライホイールやトランスミッションにもダメージを与えて、
最悪の場合トランスミッションの交換が必要になる為、
変速時に違和感を感じたら早めに掛かりつけの主治医に相談して下さい。フライホイールは歪み等が出てないか計測を行い、問題が無ければ軽く研磨して表面を綺麗に整えておきます。今回交換する各ブッシュ、ショックアブソーバー、クラッチ等のパーツ一式。リアアクスルキャリアを降ろす前にデフオイルを排出。ブレーキローターなどを外していきます。
今回はサイドブレーキレバー側でサイドブレーキワイヤーを切り離します。
リアアクスルキャリアを降ろし、現状を確認し、アームなどにクラック等が出てないか各部の点検を行います。
このモデルで使用されているセミトレーリングアームは1960年代にBMWが確立した、
リアサスペンションシステムの傑作の1つなのですが、走行距離が10万km以上経過していたり、
リアセクションのブッシュが交換されてない車輌のタイヤは八の字になって、
タイヤの内側のみが偏摩耗している事が多いのはBMWをお乗りの方はご存知の方も多いかと思います。
ブッシュが劣化したまま走行を続けると弓型の形状のリアアクスルキャリアは、
弓の反りが開く方向に変形が進行してしまい、開きが大きくなるとトーアウトが大きくなり、
オーバーステア気味になって本来得られる性能に悪影響を及ぼすだけでなく、
タイヤに負担が掛かり偏摩耗が進行してしまいます。
この為、走行距離や経年等も含め、ブッシュの劣化の判断が重要になる足廻りシステムなのですが、
駆動力を常に受け止めている箇所になる為、ブッシュが正常だとしても、
経年で徐々にリアアクスルキャリアの変形が進んでいる事を考慮したメンテナンスも必要になる事があります。
リアセクションの分解の際は、必ずリアアクスルキャリアの寸法を計測し、
許容値内に収まっているか確認しておく事が大切です。
ブッシュの交換は各パーツに分けてから作業を行います。リアスタビライザーの現状を確認。スウィングサポートのブッシュにはクラックが目立ちます。デフマウントブッシュはデフカバーを外してから交換。リアアクスルキャリアブッシュは左右共にクラックが発生。セミトレアームエキセントリックブッシュ。
高剛性や低フリクションが求められ、基本的に剛性や密度が高いブッシュが使用されるのですが、
傷が入ったりクラック等が発生してしまうと機能は失われてしまう為、
多少でも異常が見つかれば早急な対応が必要です。
新旧のリアアクスルキャリアブッシュ。
古いブッシュには経年劣化でクラックが発生している為、ブッシュの効果は期待出来ません。
酷い状態になると、ブッシュで固定されているはずの中央の芯が交換の際にちぎれて抜けてしまい、
危険な状態で走行していたという事例もある為、走行中の違和感や経年劣化等には注意して下さい。
プレス機で新しいリアアクスルキャリアブッシュを圧入。デフマウントブッシュを交換する為にデフカバーを取り外した際は、同時に異常がないかデフ内部を確認。
デフカバーの装着面の錆や汚れ、ガスケットの残りかす等をオイルストーンで取り除き、装着面を綺麗に整えておきます。取り外したデフカバー。
作業の前に洗浄を行って綺麗に汚れを落しておきます。デフマウントは変速時や発進・停止時のデフの振れを吸収し軽減しているブッシュで、
他のブッシュの様に大きく亀裂が入る事は稀なのですが、劣化が進行するとデフケース全体が動いてしまう事で、
バックラッシュ(ギアの噛み合わせの隙間)の数値が変わって異音を発生させ、
内部のデファレンシャルギアに負担を掛けて、最終的にギアが破損してしまうこともある為、
結構重要なブッシュだったりします。
新旧のデフマウントブッシュ。
新旧のリアスタビライザーリンク。
新旧のリアスタビブッシュ。
亀裂が入る等で大きく劣化する事がない為、見た目に異常が無さそうな感じに見えますが、
経年劣化で油分が抜けて徐々に固くなってしまうと弾力性が無くなってしまう為、
負担が掛かって形状が変形している事が多く注意が必要です。
カーブ時のロールが多くなったり、車線変更の際に左右の揺れ幅が大きく不安定な走行になり、
特に高速走行時等は非常に危険な状態になる為、コーナーリングや車線変更時に
違和感を感じた際は早目の対応が必要です。エキセントリックブッシュ交換。
プレス機で古いブッシュを打ち抜いて新しいブッシュを圧入。新旧のセミトレアームエキセントリックブッシュ。セミトレアームエキセントリックブッシュの交換が完了。デフカバーを装着する際は装着面をオイルストーンで綺麗に整えておく事が大切で、
作業を怠ると新しいガスケットを使用したとしても、
装着面に付いた微細な汚れや装着面の凹凸等で密着性が低くなる為、短期間でオイル漏れが発生してしまいます。
装着の際は新しいガスケットだけでなく液体ガスケットを併用して装着していきます。デフカバーの装着が完了。取り外したリアのコイルスプリング、スプリングパッド(アッパー・ロア)
新旧のスプリングパッド(アッパー・ロア)
見た目に大きな変化は無くても確実に劣化は進行している為、再使用は厳禁です。
コイルスプリングは特に異常はなかった為、交換せずにそのまま使用します。新旧のリアショックアブソーバー。
アッパーマウント・バンプラバー・ダストカバーを交換。古いショックアブソーバーには内部のオイルが漏れて多くの汚れが付着しています。
経年で内部のオイルシールが劣化する事でオイル漏れを発生させ、その影響で減衰力が徐々に弱まると、
コーナー走行時や段差を乗り越えた際に車体の揺れがなかなか収まらなくなり、
走行時の安定性も失われ、乗り心地が悪化してしまいます。
リフトアップ時には要チェックです。
取り外したリアアッパーマウント。中央の芯の周りにクラックが入っていますね。
こうなるとショック・マウントどちらも機能していないと思って良いでしょう。
新しいスプリングパッド(アッパー・ロア)、コイルスプリングを装着。新しいリアショックアブソーバーを装着。新旧のリアブレーキローター。新旧のリアブレーキパッド。
新旧のブレーキパッドを見比べると大きく摩耗している事が判ります。
新しいブレーキパッドはブレーキ鳴きを防止し、偏摩耗を防止する為面取り処理をしておくのですが、
新品をそのまま付けるけるよりも、面取りをする事でブレーキの利きの向上やブレーキ鳴きの抑制につながります。リアブレーキローター、ブレーキパッドの交換が完了。
新しいパッドとローターを交換した際は、
焼き付けを行って当たり面の密着度を高めてローターの歪みを防止するのですが、
交換初期は擦り合わせがピッタリと合ってない為、しばらくは急ブレーキ等のブレーキング等は避ける事が大切です。トランスミッションの作業を行う前にスチーム洗浄を行って、経年で付着した汚れを落しておきます。ハウジング内に装着されているボールピンを交換。
非常に小さく単純なパーツなのですが、ボールピンを支点としてレリーズフォークが作動しており、
このパーツが摩耗したり何らかの原因で折れてしまうと、ギアチェンジが出来なくなってしまう為、
クラッチ交換の際は必ずセットで交換を行います。新旧のボールピン・スプリングホルダー。
交換の際は状態に関わらず必ずセットで交換。錆が目立っていたスプライン部はスムーズに可動する様に錆を綺麗に削り落としておきます。錆を除去を終えたら適量のグリスを塗布しておくのですが、量が多くても少なくても動作不良の要因になる為要注意。新旧のクラッチディスク・クラッチカバー・レリーズベアリング。
画像にはありませんが、クラッチを固定するボルトも再使用はせずに必ず新しい物を使用します。フライホイールの摩耗状態や歪み等の確認を行い、問題が無ければ研磨して綺麗に整えておきます。フライホイールの研磨を終えたらクラッチシステムを装着。センター出しを行ってクラッチディスク・クラッチカバー、ミッションハウジングを装着。
エンジンマウントを確認すると他のブッシュと同様にクラックが発生しており交換が必要な状態。反対側も同様に細かいクラックが発生。
クラックが発生しているブッシュは、経年劣化により油分が抜けて弾力性が無くなっており、
ブッシュの効果は期待出来ない為、出来るだけ早目の交換が必要です。新旧のエンジンマウント。
重量のあるエンジンを支えながらエンジンの振動を吸収しているブッシュの為、
特にハイパワーなエンジンを搭載しているモデルで、スポーツ走行やサーキット等を走行している方は、
ブッシュ本体自体が大きく損傷するというよりも、固定されている金属部がちぎれて分離してしまう事があり、
通常よりも劣化が早くなる傾向の為注意が必要です。
新しいエンジンマウントを装着。ミッションマウントの交換。新旧のミッションマウント。
ミッションマウントは捻じれる方向で消耗が進みます。
ミッション搭載状態では交換の判断がつきにくい事もありますが、
トランスミッション脱着などのときには高価な部品では無いので同時に交換してしまった方が良いでしょう。
新旧のユニバーサルジョイント。
取り外したプロペラシャフトは凹みや歪み、ジョイント部にガタツキ等がないか状態を確認。
新旧のセンターベアリング。
マフラーを降ろした際等に点検を行って、経年や消耗を考慮して交換しておくと安心です。スプライン部にグリスアップをしてプロペラシャフトを組み込みます。フロントセクションの作業へ。各足廻りのブッシュの劣化状態を確認。フロントコントロールアームには漏れたオイルの影響でしっとりと濡れて砂埃等の汚れが付着。
ゴム部品にオイルが付着したりオイルに付着した砂埃等がブッシュの隙間へ混入する等で、
ブッシュの劣化・消耗を助長させてしまう為、多少であってもオイル漏れの放置は禁物です。フロントコントロールアームに装着されているフロントロアアームコントロールブッシュは、
ブッシュの中でも多くの負担が掛かる箇所の為交換頻度が多く、劣化には注意が必要なパーツです。スプリングコンプレッサーでスプリングを縮めて各パーツへ分解・交換を行います。取り外したフロント足廻りパーツ一式。
新旧のフロントショックアブソーバー。
砕けて取れてしまったのか、取り外したショックアブソーバーには本来装着されている
バンプラバーが無くなっていました。
バンプラバーはショックアブソーバーに装着されているサスペンションの1つで、
ショックが最大限に縮んでストロークした際に、インナーロッドが底付きしてしまうのを防止しています。
このモデルはウレタン製のバンプラバーが使用されているのですが、経年劣化すると衝撃によって亀裂の発生や
大きな力が掛かれば破損して全て外れてしまうケースがあります。
バンプラバーが取れてしまっても走行する事は可能なのですが、底付きによってロッドが接触する事で、
ガリガリ音やゴンといった異音の発生、ショックアブソーバーや関連するパーツに負担を掛け、
突き上げ感が出る事で不安定なコーナーリングや乗り心地が悪くなってしまいます。
車高調整している車輌は車輌を下げた際に乗り心地を改善する為、バンプラバーをカットして使用する事があり、
劣化が進行するとタイヤハウスに接触してしまうケースもある為、状態の変化には注意が必要です。新旧のフロントアッパーマウント、スプリングパッド(アッパー・ロア)
リア側よりもフロント側の方が負担が大きくなる為、こちらも必ず交換になります。新しいショックアブソーバーへ各パーツを組み込んだら車体へ装着。
装着の際は本締めは行わず、仮止めの状態で組んでおきます。新旧のフロントロアアームコントロールブッシュ。
圧入されているブッシュを打ち抜いてブッシュのみを交換。新旧のタイロッドエンド。ASSY交換。
ボールジョイントのブーツ部に経年劣化による亀裂や破れ等があれば交換が必要です。新旧のフロントスウィングサポート・スタビブッシュ。
フロントスウィングサポートはブーツ部が破れていたり動きが鈍くなっている場合は交換が必要です。
スタビブッシュは捻じれる力が大きく掛かる箇所なので、変形や損傷等の状態の変化には要注意。新旧のフロントコントロールアーム。ASSY交換。
ブーツだけでなく、ボールジョイントの可動にも要注意です。プレス機で古いフロントロアアームコントロールブッシュをブラケットから打ち抜き、新しいブッシュを圧入。SSTを使用してフロントロアアームコントロールブッシュを圧入するのですが、
無理矢理入れてしまうと装着の際に破損してしまったり、
折角交換しても短期間で再び破損してしまうケースもある為、慎重な作業が必要です。新しいタイロッドエンド、コントロールアームを装着。
特に右側のフロントロアアームコントロールブッシュは排気システム近くに装着されており、
遮熱板でカバーされているとはいえ、左側のブッシュよりも熱の影響を受ける為、
劣化の進行には注意が必要で、熱の影響等で右側のブッシュのみ劣化が進行してしまったとしても、
基本的に左右セットで交換を行います。ショックアブソーバーを車体へ装着。
リフトへ乗せた状態で本締めを行ってしまうと、タイヤを接地した際にブッシュの捻じれだけでなく、
4輪ホイールアライメントも適正な数値に調整が出来なくなってしまいます。
その為、足廻りパーツは仮組みの状態で装着を行い、タイヤを接地させて軽くテストランを行って、
各パーツやブッシュを馴染ませてから本締めを行う事が大切です。フロントスタビライザー一式を装着し、各ブッシュの交換が完了。4輪ホイールアライメント調整を行う前に軽くテストランを行ってブッシュを馴染ませてから、
仮止めだった各足廻りパーツの本締めを行ってアライメント調整作業へ入ります。
足廻りパーツを脱着した際は調整が変わってしまう為、必ず再調整が必要なのですが、
長期に調整を行っていなかったり、段差を勢いよく乗り越えた際に数値が変わってしまう事がある為、
心当たりがある方は要注意。
調整が適正でないと不安定な走行になり、ブレーキング時にステアリングが振られたり、
タイヤの偏摩耗、常にステアリングで補正しないと左右どちらかに車体が流れて真直ぐに走行出来なくなったり、
真直ぐに走行しているのにも関わらずステアリングのセンターが適正な位置になっていない、
ステアリングを切っているのに思う様に車体が曲がらない等、特に高速走行時は非常に危険な状態になる為、
この様な症状が出ている場合は速やかに掛かりつけの主治医に相談して再調整を行って下さい。調整はタイヤやブッシュ、パーツの消耗具合等によっても数値は変わってしまう為、
同じモデルで調整した数値や以前調整した時と同じ数値では適正な数値にする事は出来ません。
調整を行う際はメーカーの数値をベースに、
知識が豊富なベテランのスタッフがテストランと調整を何度も繰り返しながら、
その車体に合った適正な数値を導き出していきます。全ての作業を終えたら最終のテストランを行って、修理箇所やその他に違和感がないか確認を行い、
同時にブレーキローターとブレーキパッドの摺り合わせや焼き付け作業を行います。
新しいブレーキの当たり付けには慣らし運転が必要で、通常の走行なら300km~1,000kmを目安として、
急発進、急ブレーキ、急ハンドル等の急が付く運転は控える事が必要なのですが、
特に難しい事はなく普通の運転をしていれば問題ありません。後日、オーナーへ分解整備記録簿、4輪ホイールアライメント調整データをお渡しし、
今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。

今回はZ3 M Coupeのフルブッシュ交換をメインにオイル漏れ修理やVANOSのメンテナンス、
足廻りのリフレッシュやクラッチ、ブレーキ等の交換等、総合的な作業を行いました。
経年モデルは通常のメンテナンスだけでなく、経年で劣化してしまうパーツを考慮したメンテナンスが必要で、
特にゴム系部品やブッシュ等は経年で劣化してしまう為、いずれは交換が必要になるのですが、
走行方法や走行環境等によっても交換時期が変わってくる為、ご自身の車輌の交換時期を把握しておく事が大切です。

2021年03月30日