【ALPINA B3S】各部メンテナンス【70,000Km】
8月に入った途端、猛烈な熱気が襲ってきますね。
汗が止まらない毎日ですが、頑張っていきましょう。
今回のメンテナンスレポートは、ALPINA B3Sが各部メンテナンスの為入庫したのでレポートしていきましょう。
走行距離は70,000Km。クーペの40thアニバーサリーモデルになりますね。
過去に一度販売した記録がありますが、それとはまた違う車輛で珍しいモデルですね。
今回は基本的なメンテナンスとして油脂の交換等の他、
センサーの異常や、経年による劣化が気になる部品の交換を行うのですが、E46モデルでは比較的多い症例になる為、
E46にお乗りのオーナーは症状が出てないケースであってもメンテナンスの参考になる部分もあるかと思います。ATFの交換。
しっかりとATFを温めた状態で内部で発生したスラッジと共に一気にATFを排出させます。
ATFの交換方法は様々あるのですが、当社では全量交換のみを行っており、
交換作業は最短でも車をお預かりする1泊2日での作業となります。ATF交換は閉店する前に作業を行い、ATFを排出後にオイルパンを取り外した状態で一晩掛けて、
内部に残ったATFを排出させます。オイルパンにはマグネットがついており、内部で発生したスラッジを吸着しています。マグネットには多くのスラッジが付着しているのですが、特に問題はなく想定内の量です。
ATFは他に使用されているオイルと同様に使用していけば徐々にスラッジを含んで汚れていく為、
経年や走行距離等を見極めて交換する事が大切です。
長期間交換をしてないと不具合を発生させるリスクが高くなる為交換を断られるケースや、
交換方法を誤ってしまうと不具合の原因になる事もある為、慎重な対応が必要になるのですが、
掛かりつけの主治医や知識・経験が豊富な工場等に相談し、状態を確認しておくと良いでしょう。
取り外したオイルパンは綺麗に洗浄を行い、
装着面に残った古いガスケット等はオイルストーンで除去し綺麗に整えておきます。新旧のガスケット、ATFエレメント、ドレンボルト。
黒くなっている方が使用後のATFエレメントで、黒くなっているのは内部で発生したスラッジによるもので、
ATF交換の必要性は明らかだと思います。
基本的にドレンボルトは新品へ交換する事がセオリーなのですが、
再使用してしまうとATF漏れの原因になる為、絶対に止めて下さい。
同様にガスケットも自身が潰れる事で密着性を高めている為、当然交換が必要です。新しいATFエレメントを装着。
ガスケットを隙間無くしっかりと密着させる為、車体側も装着面を綺麗に整えてからオイルパンを装着。新旧のATシフトポジションセンサー。
シフトレバーの位置がP・R・N・Dのどの位置なのかを検出するセンサーです。
センサー系は経年劣化で不具合を発生させる事が多く、消耗品として経年を考慮して交換が必要なのですが、
E46では比較的多いトラブルで、メーターパネルにギアマークの警告表示が出ます。
これはミッション系に何らかのトラブルが発生している際に点灯するもので、
必ずしもATシフトポジションセンサーだけの不具合で点灯するものではない為、
テスターで診断、かつ実作動の状態も確認し交換と判断致しました。新しいシフトポジションセンサーを装着。
こういった部品を分解して修理する事も場合によっては可能なのですが、
経年が進行していると様々なパーツが劣化している影響で、
修理をしたとしても短期間でエラーの出る回数が多くなったり、
逆に上手くセンサーが感知しないケースも考えられる為、
そういった不安を回避させ、不具合の度に掛かる工賃等のメンテナンスコストを考慮すると、
部品のデリバリーがあるうちは、新品に交換してしまった方が安心して走行を楽しめるでしょう。
古いモデルのDMEなど部品のデリバリーが終わっているものなどはしっかりと故障探求の上
現品を修理していく事も可能です。
規定量のATFを注入していきます。
ATFの注入はシビアで、エンジンを掛けながら注入作業を行うのですが、
ある一定の温度を超えてしまうとATFが膨張する事で正確な量を計測する事が出来なくなってしまう為、
テスターで温度管理を行いながら素早く作業を進めて行きます。
最後に油面調整の為のテストランを繰り返し行って油面調整作業を終えたら注入作業が完了です。
交換時のトラブルとしてATFの入れ過ぎにより、内部のATFが泡立ってしまうフォーミングが発生してしまうと、
一部が潤滑不足になったり、正確な油圧が発生せず、油温の上昇に繋がる事があります。
逆にATFが少ないとクラッチが滑ったり、潤滑不足になって内部パーツを摩耗させてしまう等、
いずれにせよATFは多くても少なくても不具合を発生させてしまう為、
交換作業は経験や知識の豊富な工場で行う事が大切です。
エンジンオイル交換。
古いエンジンオイルを排出する前にフラッシング剤を注入し、
内部で発生したスラッジやカーボン等の汚れを落していきます。
エンジン内部ではスラッジやカーボンが多く発生する為、
エンジンオイルが吸着する事で汚れを取り除いているのですが、
定期的なオイル交換を怠ってしまうと、吸着されなくなった多くの汚れがエンジン内部を浮遊し循環する事になり、
ガスケットを傷付けてエンジンオイル漏れを発生さたり、オイルポンプの詰まりや内部パーツの摩耗、
エンジンオイルの性能が失われて冷却されなくなる事で
オーバーヒートを発生させてエンジンブローのリスクが高くなります。
エンジン内部に汚れが堆積してしまうと、やがてヘドロ状なってオイル交換だけでは除去出来無くなり、
オーバーホールを行って除去を行うか最悪の場合、
症状が悪化してしまうとエンジンが使用不能になってしまう事もある為、
オイルの管理はしっかりと行う必要があります。10分~15分程アイドリングを行って手の届かない箇所までフラッシング剤を浸透させ汚れを落した後に、
古いエンジンオイルと共に一気に排出させます。
廃油はそのまま処分するのではなく、
異常な汚れや金属片等が含まれてないか確認を行ってエンジン内部の様子を探ります。新旧のエンジンオイルエレメント。(ワッシャやOリングなども必ず新しいパーツを使用します)
今回チョイスしたエンジンオイルはFUCHS TiTAN SuperSyn 5W-50。
苛酷なレースにも使用されるオイルで、低回転から高回転までストレスなく一気に吹け上がるだけでなく、
オイルの消費量を抑え、真冬の低温時や真夏の渋滞等での高温時でも安定した性能を誇っています。
特に高性能エンジンを搭載したM3モデルやALPINAのオーナーに支持され、
リピート率も非常に高い、お勧めの100%化学合成のエンジンオイルです。エンジンオイルの排出を終えたら、新しいオイルエレメントを装着し、
規定量のエンジンオイルを注入して交換作業が完了。エンジンオイル交換後は忘れずにオイルインスペクションのリセットを行います。
交換時の表示は21,650km。
今回の交換は、計算すると25,000km-21650km=3,350kmで交換した事になり、
交換のタイミング3,000Km~5,000Kmの間を推奨しておりますので丁度良い時期では無いでしょうか。
リセットをすると表示は25,000kmになり、様々な走行情報を元にコンピューターが管理を行い、
数値が減っていく事で最適な交換時期を知らせてくれます。
テスターをDMEへ接続し、故障コードをスキャンして見ると…
ECM・TCMと2箇所のエラーを検出。
トランスミッションスイッチのエラーは、ATシフトポジションセンサーの交換で解決済みなので、
最後のテストラン前に消去していきましょう。
ECMのエラーはラムダセンサー不良なので、交換していきましょう。
今回はラムダセンサー(02センサー)のエラーなので、エンジン側と触媒側と2箇所に、
それぞれ2つ付いているセンサーを外して交換。
ラムダセンサーの交換は体感ではありますがアルピナモデルに多く見られる気がしますね。
新旧のラムダセンサー(エンジン側)
ラムダセンサー(02センサー)とは、排気ガス中の酸素濃度を測定しているセンサーで、
その情報を元に電子制御燃料噴射をコントロールする事で最適な空燃比にし、
燃費の悪化や触媒に掛かる負担を減らすだけでなく、排気ガスに含まれる有害物質を少なくさせています。
不具合が発生するとエンジンの回転数が安定しなくなるハンチングやエンストを起こす様になり、
燃費の悪化だけでなく触媒にも悪影響を及ぼし、最悪のケースになると空燃比が異常となって、
バックファイヤーやアフターファイヤーを発生させ、まともに走行できなくなる事もありますが
そこまでいくと他にも不具合が出ている事も多いので、
定期的な点検を行っていれば早期に動作不良を発見できる部品のひとつかと思います。
高温の排気ガスに晒されている為、センサーには汚れが多く付着しており、
このまま使用していけば更に性能は悪化し、燃費にも悪影響を及ぼします。
一般的に新車から5年が経過、走行距離が80,000kmで交換ともいわれているようですが、
あくまでも目安として参考程度にし、自身の走行方法や走行環境によっても交換時期は変わってくる為、
車輌の状態を見て交換を行う事が大切ですね。
目に見えて症状が出ない事もある部分なので、
エラー消去だけされ様子を見て下さいと放置されている事も多いですね。
触媒側に付いているラムダセンサーを取り外して交換。新旧のラムダセンサー。冷間時の異音の為、ベルト・テンショナー・プーリー等の各消耗品を交換します。
新旧のエアコンベルト、エアコンベルトテンショナー。
劣化が進むとテンショナーのプーリー内部のベアリングが摩耗してしまう事で異音を発生させます。
異音を放置していると、最終的にベアリングに異常が出てプーリーがロックする事でベルトとの間に摩擦が発生し、
摩擦によってベルトが切れてしまうと、
エンジンルーム内で切れたベルトが暴れて他の部品を破損させたりする事がある為、
異音に気付いたら放置をせずに早めに掛かりつけの主治医へ相談し処置して下さい。新旧のファンベルト、ファンベルトテンショナー、アイドラプーリー、テンションローラー。
ボルトや埃などからベアリングを保護する為のキャップなども当然交換になります。
ワイパーカウルカバーにダメージが見られたので交換を行います。拡大すると所々にヒビ割れが発生し、比較的目に付く箇所なので見ため的にも劣化が気になると思います。
E36・E46モデルでは定番の交換パーツなのですね。事前にワイパーを外してからカウルカバーを取り外すのですが、作業自体はそれ程難しくなく、
クリップビスで固定されている為、簡単に取り外す事が出来ます。
(新品のクリップビスはパーツに付属している為、古いクリップビスは破損を気にせず取り外しても大丈夫です)カウルカバーの下は、かなり汚れている事が多く、
新しいカバーを装着する前に綺麗に汚れやゴミ等を除去しておきます。
この際にエアコンフィルターの状態を確認し、
フィルターの汚れが目立つようであれば同時交換しておくと良いでしょう。新旧のカウルカバー。
樹脂製の為、雨風に晒されたり紫外線を受ける事で徐々に経年劣化が進行して白化し、
最終的には割れたり破損してしまいます。
特に走行には影響の無いパーツの為、ボロボロの見た目が気にならなければ急いで交換する必要ではないのですが、
それ程高価なパーツでは無いので、亀裂が目立つ様であれば交換しておきたいパーツですね。
新旧のエアエレメント。
このエアエレメントには上部にプレフィルター(不燃布フィルター)がセットされているのですが、
思ったよりも汚れている事に驚かれた方もいるのではないでしょうか?
元々は右側(新品)の状態から、走行方法や使用する環境によっても汚れ方は変わるのですが、
砂埃、落ち葉や種子等が多く付着していました。プレフィルターは大きな落ち葉や昆虫等の大きなゴミを取り除いており、
次段フィルターの性能維持やロングライフ化に役立っています。
画像の様に落ち葉や昆虫が付着している事が多く、定期的に点検し大きなゴミ等は取り除く必要があるのですが、
汚れが酷くなったり、経年が経過していれば劣化によりエアエレメント自体が破損してしまう事もある為、
走行距離や経年を考慮して交換が必要です。新しいエアエレメントを装着して交換が完了。
交換の際は必ず装着前にエアエレメントボックス内を綺麗にしておく事が大切です。
Aピラーの内装生地が浮き上がってしまっています(助手席側)
E46系のモデルではウィークポイントとして同様の症状に悩まされている方も多いのではないでしょうか?
内装の剥がれは欧州車では多くみられるトラブルで、BMWだけでなく輸入車では頻繁にみられる症状になるのですが、
日本の気候の影響等で経年劣化が進行し、
7~8年が経過すれば天井が垂れ下がったり内装が浮き上がってしまう事が多く、非常に悩ましいトラブルだと思います。Aピラーの内装生地の剥がれは、運転していても非常に目に付く箇所なので非常に気になりますね…。運転席側のAピラーにも同様に症状が出ています。症状が出始めると徐々に悪化が進んで剥がれる範囲が広がっていくのですが、
少しだけ内装が剥がれたぐらいだと、
そのままの状態で修理するタイミングを見計らっている方も多いのではないでしょうか?
基本的に少しでも内装生地の剥がれを見つけたら、早めに貼り直しを行ってしまった方が、
常に内装の状態を気にしなくて済むので精神的にも良いと思います。Bピラーにも内装生地に浮きが見られます。更にCピラーも内装生地が剥がれて浮きが出ています。後部座席側なので運転していれば目線に入らない為、それ程気にならない箇所なのですが…
それでも一度見つけてしまうと、ボコボコしている感じが気になってしまいますね。新旧のCピラー内装パーツ。
貼り直す事も可能なのでご自身で施工されている方も多いと思いますが、
今回は本体のプラスチックの劣化等も考慮して貼り直しはせずに新品部品へ交換。新旧のBピラー。
大きな剥がれは無かったのですが浮きが目立つ為、被害が拡大する前に他の箇所と同様に交換。新旧のAピラー内装。
運転していれば一番目に付く箇所の為、
気になってしまうと注意が散漫になって運転に集中出来無くなってしまったり、
運転する楽しさも半減してしまう為、内装の剥がれや浮きを見つけたら出来るだけ早目に処置しておきたいですね。全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に不具合等が無いか確認を行い、
特に問題が無ければ全ての作業が完了です。
オーナーへ分解整備記録簿をお渡しし、今回の作業内容や今後のメンテナンス等をお話しして納車となりました。
今回はATFの交換を含めた基本的なオイル類の交換と
ATシフトポジションセンサーやラムダセンサー等のセンサー系の修理、
ベルト等の消耗品、経年劣化が気になる外装や内装パーツの交換を行いました。
センサー類や外装、内装パーツ共に経年劣化してしまうパーツも多く、
愛車を長く維持する為にはオイル類の管理だけでなく、
自身の車輌のウィークポイントを把握しておく事が大切になるのですが、
全ての情報を把握していくのは困難ですよね。
なので、掛かりつけの工場の主治医と相談しながら
長期のメンテナンスプランを立てておくと良いのではないでしょうか。
優先順位を決めて、作業を行っていくと長く良い状態でドライブを楽しめる事が可能になるでしょう。
2020年08月15日