MENU

MAINTENANCE REPORT

【2002 4MT】24ヶ月法定点検&納車整備【E10】

当社のストック車輌だった71y 2002 4MTの24ヶ月法定点検と納車整備をレポートしていきましょう。
昨年10月に納車は完了しておりますがご愛嬌という事で・・・

下取り車として入庫した車輌で乗られていた車輌の為、大きな問題も無く良い状態をキープしており、
大掛かりなレストア整備は必要無いのですが、あと数年で50年を迎える経年車である事は否めませんので、
現状のまま納車という訳にはいきません。また、新オーナーが山口県在住という事もあって
何か問題が出てもその日のうちに対応という事も現実的に難しく、
今回はレストアという作業では無く、良い状態をキープし今後も問題無く走行を楽しんで頂く為の
作業を中心に経年劣化部分などを考慮しオーナーと打ち合わせながら作業を進めて行きましょう。約50年の経年を感じさせないグッドコンディションをキープしている状態なのですが
水廻りホースやウォーターポンプなど交換していきます。
取り外したラジエター。
機能的には水漏れも無く良好なので、内部洗浄を施し、お色直ししておきましょう。
ウォーターポンプは基本的に消耗品として定期的に交換が必要なパーツの為交換します。装着面のガスケット跡や付着していた錆や汚れ等はオイルストーンを使用して除去し装着面を綺麗に整えておきます。取り外したウォーターポンプ。
内部のインペラ部が錆びてしまっていたのですが、想定内なので特に問題はありませんが
定期消耗部品としてはちょうど良い交換時期だったと思います。
新旧のウォーターポンプ。
装着に使用するガスケットも新品を使用します。ウォーターポンプの交換が完了。ラジエターはリセット完了。新旧のラジエターアッパーホース、ロアホースなど。ホース類は全て交換していきます。
経年が進むと油分が抜けて固くなる事で弾力性が無くなって、密着力が不足する事でホースバンドで締付けても
冷却水が噴き出してしまったり、エンジンの振動等で亀裂が入り破損してしまったりする事がある為、
状態を確認して劣化している様ならトラブルが発生する前に事前に交換しておく事が大切です。新旧のサーモスタット。ホースやホースバンドも新品へ交換。
サーモスタットは冷却水の温度を管理しており、
エンジンの温度が低い状態ではラジエターを通さずに冷却水を循環させ、
エンジンの温度が高くなればラジエターへ循環させて冷却水を冷やす事でエンジンのオーバーヒートを防いでいます。
このパーツも長期に使用していると不具合を発生させる為、消耗品として定期的に交換が必要です。新旧のラジエターキャップ。
ラジエターキャップは単なる蓋の役割だけではなくしっかりと密封する事で圧力を上げて沸点を高める事で
冷却水は100℃でも沸騰しなくなりオーバーヒートを防いでいます。
高圧の状態が続くとラジエターやホース類へダメージを与えてしまう為、
ラジエターキャップのプレッシャーバルブが開いてリザーブタンクへ冷却水を逃がす事で適度な圧力を保っています。
逆に圧力が下がって負圧状態になってもラジエターやホース類へダメージを与えてしまう為、
バキュームバルブが開いてリザーブタンクから逃がしていた冷却水を戻して圧力を調整しています。
ラジエターキャップの内部のパッキンが劣化すると高温になった冷却水が噴き出したり、
圧力弁が上手く機能しなくなればオーバーヒートやオーバークールのリスクが高くなる為、
消耗品として定期的な交換が必要です。
ラジエターキャップの交換が完了。
交換と言ってもキャップを替えるだけなので御自身でも簡単に交換が可能なのですが、
適応していないパーツでは上手く機能しない恐れがある為、必ず適応品を使用する事が大切です。
作業を行う際も注意が必要でエンジンが暖まった状態では冷却水が高温高圧になっており、
ラジエターキャップを開けると高温の冷却水が噴き出して非常に危険なのでご自身で交換を行う際は注意して下さい。ブレーキフルードの交換を行う際にホース類の状態を確認した所、劣化していたので交換。ホース類はエンジンの熱等の影響を受け易く経年劣化が進行する為、状態の変化に注意して確認しておく事が大切です。交換するブレーキホース一式。
マスターシリンダーのプラグシールも漏れていたので新品へ交換。ブレーキホースの交換が完了。ブレーキフルード交換。専用の機材を使用してブレーキラインのフラッシングを行い、
内部で発生した水垢や錆汚れ等を古いフルードと共に車外へ圧送。
4輪全て作業を行って排出された古いブレーキフルードに異常な汚れや錆等が含まれて無いか確認を行い、
異常が見つかれば原因を特定する為、
マスターシリンダーやブレーキブースターを外す等大掛かりな作業が必要になります。
ブレーキフルード交換が完了。
ブレーキフルードは吸湿性が非常に高く、
交換した時から吸湿が始まっており走行するしないに関わらず劣化は進行し、
画像の様に無色透明の状態から徐々に紅茶色へ変化し黒味を帯びてくるので状態の変化には注意が必要です。
ご自身でもリザーブタンクの蓋を開ければ確認する事は可能なので、フルードの状態を確認しておくと良いでしょう。
基本的に車検毎に交換を行っていると思いますが、交換を怠ると含まれた水分により錆を誘発して
ブレーキピストンを固着させる等でブレーキの引き摺りや片効きを発生させ、
含まれた水分がブレーキの熱で沸騰してブレーキライン内に気泡を作り出すと油圧が伝わらなくなる為、
ブレーキが効かなくあるベーパーロック現象を引き起こすので、劣化を放置したまま走行する事は非常に危険です。ミッションオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入しミッション内部で発生したスラッジを効率よく落とします。
MT車を気持ち良く走行させる為にはスムーズなシフトチェンジが必要なのですが、
ミッションオイルが劣化していると変速時の引っかかりやシフトが入らなくて抜けてしまったり、
無理矢理シフトを入れてしまうと内部ギヤを傷めて破損する事がある為、ミッションオイルの劣化には注意が必要です。
スムーズに変速を行う為にも定期的な交換が必要なのですが、
変速が困難だったり走行時にカリカリなどと異音が発生していたら、
交換時期に関わらず掛かりつけの主治医のいる工場へ相談して下さい。
交換は必ず温めた状態で行い、フラッシング剤の効果で落としたスラッジと共に一気に排出させます。ドレンボルトには漏れ防止のシールテープを新しく巻き直しておきます。
シールテープは巻き付ける方向が決まっており、間違って施工すると逆にオイル漏れを誘発するので要注意。しずくが垂れなくなるまで排出を終えたら、規定量のミッションオイルを注入して交換が完了。デフオイル交換。ピンボケ申し訳御座いません・・・
交換の前にフラッシング剤を注入し内部で発生したスラッジを排出させ易くします。
デフオイルは内部のデファレンシャルギアを潤滑させており、スムーズにコーナーを走行出来るのは、
このギアが可動しているおかげなのですが、ギアが噛合う事でスラッジが発生する為、
汚れが酷くなるとオイルに含まれたスラッジが研磨剤の様になってオイルシールを傷めてオイル漏れを発生させたり、
最悪の場合スラッジの影響でギアが欠けてしまうと走行が出来なくなってしまうので定期的な交換が必要です。デフオイルは粘度が高く冷えた状態では排出に時間が掛かるばかりか
内部のスラッジを上手く排出する事が出来ない為、
交換の際は必ずオイルを暖めた状態で排出する事が大切です。出来るだけ内部に古いオイルを残さない様に排出には時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行います。排出を終えたら規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換が完了。
トランスミッション・デフ共に綺麗な状態でしたが、当社ではオーナーチェンジの際には必ず交換し納車となります。
マフラーを吊って支えているマフラーハンガーを交換。
マルニの場合マフラーが脱落するという事は無いと思いますが
この状態だとリアのアクスルキャリアに接触し金属音が響き耳障りなので交換になります。
新旧のマフラーハンガー。
こちらも定期交換部品になります。
イグニッションコイル、イグニッションケーブルは経年を考慮して交換。
新旧のイグニッションコイル、イグニッションケーブル。
安定した電圧を供給する為にそれぞれ単体では交換せずに必ずセットで交換を行います。
新旧のスパークプラグ。
電極の消耗や焼け具合等の状態を確認し、劣化が進行していれば交換が必要です。
ご自身で交換する際などは必ず適合したスパークプラグを使用し、
装着の際に無理に装着などは絶対にNGです。締め付けトルクも規定値を超えないように。
イグニッションコイル、イグニッションケーブルの交換が完了。エアエレメント交換。
エンジンは燃料と空気の混合気をピストンが圧縮してスパークプラグで爆発させて動力を得ているのですが、
エアエレメントはクリーンな空気を取り入れる為に空気中の塵や砂埃、
小さな虫等の不純物を濾過する役割を担っています。
車検毎に交換するケースが多い部品ではありますが
年間の走行距離が多い方や渋滞地区、峠や山道等を走行する車輌は、
汚れが多く溜まる傾向の為、若干早目の交換が必要になります。
新旧で比較すると汚れている事が良く判ります。
新旧のフューエルフィルター。
給油の際に混入した塵や砂埃、タンク内で発生した錆等を取り除いているのですが、
汚れが酷くなると燃料の供給が少なくなって燃料の流入量が低下し燃圧が下がるとパワーダウンするだけでなく、
エンストを発生させ始動する事が出来なくなってしまいます。
異物の混入はキャブレーターにも悪影響を与える為、汚れが酷くなってから交換するのではなく、
状態を確認して多少早目でも交換してしまった方が安心です。フューエルフィルターの交換が完了。
交換の際は接続されているホースやホースバンドの経年劣化にも注意して下さい。新旧のバッテリー。
バッテリーの交換が完了。
電装系の異常はバッテリーだけのトラブルだけでなく、オルタネーターが壊れた影響で発電が滞る事で充電は行われず、
バッテリーの電力を使い切ってエンストに繋がるケースもある為、オルタネーターの状態の変化にも注意が必要です。エンジンオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し、エンジン内部で発生したスラッジやカーボンの汚れを落すのですが、
特に経年車は汚れが堆積している事が多く、フラッシングによる影響も考慮しながら作業を行う事が大切です。
特に古い設計のエンジンでは内部の汚れの発生には注意が必要で、
充分に性能を発揮させエンジン内部をクリーンな状態を常に維持する為にも定期的にオイル交換を行って下さい。10分~15分程アイドリングを行ってエンジン内部にフラッシング剤を浸透させて汚れを落し、
古いオイルと共に一気に排出させます。
エンジンオイルエレメント交換。
出来るだけ内部の古いオイルを残さない為に排出には時間を掛けてしずくが垂れなくなるまで行い、
同時に廃油に異常な汚れや金属片が含まれて無いか確認しエンジン内部の状態を探ります。新しいオイルエレメントを装着し規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。新オーナーには車検2年を取得してからの納車となったので、検査ラインを通してきたのち
どうしてもリアブレーキの制動とサイドブレーキが気になりチェック。検査ラインでの制動テストに問題は無かったので、気にしすぎかなとも思いましたが
どうもシリンダーが動いたり動かなかったりのようだったので
リアブレーキ廻りは一式交換してしまいましょう。
交換するリアブレーキパーツ一式。
サイドブレーキワイヤー、ドラムカバー、ホイールシリンダー、ブレーキシュー。
当然左右全てを交換します。
サイドブレーキワイヤー、ホイールシリンダー、ブレーキシューを装着し調整を行います。ドラムカバーを装着し動作を確認して交換作業が完了。排気ガス測定を行い、車検セッティングから通常セッティングにキャブを調整していきます。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に異常が無いか確認します。高速走行も実施し高速走行時の冷却水の温度の上昇やブレーキシステム等に異常が無いか確認。
合流での加速やスムーズな車線変更、高速走行時も経年を感じさせない安定した走行を楽しむ事が出来ました。
車を巧みに操りながらドライバーと車が一体となるドライブフィーリングはクラシックモデルの魅力ですね。
車検証、定期点検記録簿、車検ステッカー、定期点検ステッカー等をオーナーへお渡して納車となります。山口県まで納車ロングラン片道1,000Kmの旅です。1泊2日で無事にお届け出来ました。
瀬戸内の海岸線が綺麗でプライベートでもお邪魔したいなと思いました。
ドライブステージは豊富だったので、楽しいマルニライフを送って下さい。
これからも宜しくお願い致します。

2020年01月17日