【ALPINA B6 2.7 Cabriolet】24ヶ月法定点検&車検整備【120,000Km】
現場はレストアから一般整備車検などを次々に消化しなくてはいけない作業もあり、相変わらず忙しそうですが
明日は早朝から関西に納車・引き取りに伺う予定の為、ショールーム内でメール・書類・ブログなどを口実に
ひっそりと体力の温存を図っております・・・
今回のメンテナンスレポートはALPINA B6 2.7 Cabrioletの24ヶ月法定点検と車検整備です。走行距離は120,000Km。
当社ショールーム内に展示されているのをご覧になられていた方も多いのではないでしょうか。
車輛オーナーが長期海外転勤から戻られたので(祝)、4年振りに公道を走らせる為にリフレッシュさせていきます。
さすがに4年間ほぼ動かさずでしたので、通常のオイル類の交換の他に消耗品や各ホース類、
足廻りやブッシュ等も含めて各部のチェックをしながら作業を進めていきましょう。
まずはエンジンオイルパンからのオイル漏れ修理とエンジンマウントを交換する為にエンジンハンガーで
エンジンを保持して作業を進めていきます。アクスルキャリアとエンジンを分離させ
オイルパンを外してオイルパンガスケットを交換。取り外したオイルパンを確認して内部の汚れや状態をチェック。
オイルパン内の洗浄とガスケット取り付け部分をオイルストーンで綺麗に研磨し
取付する準備を進めていきます。
エンジンマウント交換。新旧のエンジンマウント。
見比べると非常に判りやすいのですが、
経年で弾力性が無くなって新品パーツ(左)と比べて潰れてしまっている事が判ります。
走行方法にもよりますが、負担が多く掛かるパーツなので劣化には注意が必要です。タイミングベルト、テンショナー、ウォーターポンプの交換。ウォーターポンプを外した状態。
装着面の錆等をオイルストーンで落として表面を綺麗に整えておきます。
新旧のタイミングベルト、ウォーターポンプ、タイミングベルトテンショナー。
タイミングベルト廻りの整備は部品の状態の良し悪し関係無く三点をセットで交換します。
何かしら一点でも不具合がでるとエンジン損傷となりますので、こういった箇所は必ずセオリーを守りましょう。
取り外したウォーターポンプ。
多少の錆は発生していますが交換時期としては丁度良いタイミングでしょうか。
酷い物になると全体が錆で覆われてオレンジ色になっている事もあるので、
その様な事を防ぐ為にもパーツだけでなく定期的な冷却水の交換も重要になってきます。タイミングベルト交換時はカムカバーを取り外す為、カムカバーガスケットを交換。
同時にカムやロッカーアームなどに異常が無いかも確認しておきます。カムシャフトシール、Oリングを交換。新旧のカムカバーガスケット、スクリュープラグ。
プラグの再使用はNGです。再使用すると高確率でオイル漏れします。
新旧のスパークプラグ。
電極が消耗する事により火花が飛び難くなる事で始動性が悪くなったりエンジン性能の低下に繋がってしまうので、
定期的に確認し状態によっては交換が必要です。
スパークプラグの交換の際には交換時期や性能を均等にする為に単品のみでの交換は行わず、
必ず全てのプラグを同時に交換して下さい。新旧のファンベルト、エアコンベルト、パワステベルト。
3本セットで交換。
状態によってはそれぞれで単品で交換する事もあるのですが、交換時期を同時期にしていた方が
作業時間や工賃等のメンテナンスコストの削減に繋がるので同時交換をお勧めしています。サーモスタットを取り外して新品へ交換。
内部に錆の発生が無いか確認しておきます。新旧のサーモスタット、Oリング。水廻り整備時などは同時に交換する事の多い部品ですね。
クーラントレベルセンサーを交換。E30モデルではセンサー故障が多いですね。
消耗品と考えて良いでしょう。
新旧のクーラントレベルセンサー。
センサーだけでなくレベルセンサーに繋がるコネクターも同時に交換。フューエルホースを交換。
亀裂が入っている箇所が見つかったので、まとめて交換していきます。
ゴム系のホース類はどうしても経年劣化してしまう為,交換が必要になる部品になりますが、
ホース表面を確認しただけでは劣化の判断はなかなか難しいので、必ずホース断面を確認して
劣化具合を確認する必要があります。ホース類はトラブルが発生してから交換するのではなく、
経年や走行距離などを考慮してトラブルが出る前に交換する事が大切です。タイヤハウス内部への取り回しも他のパーツと干渉しない様に注意を払いながら作業を進めます。ホースクランプは経年で締め付ける力が弱ってしまったり破損してしまう事があるので
再使用はせずに必ず新しい物を使用します。フューエルホースの交換が完了。
電源コネクターも樹脂製なので硬化して劣化が進行してくると割れてそこから燃料が浸み出てくる事があるので
ホース類だけでなく関連するパーツの劣化にも注意が必要です。フューエルフィルターの交換。
取り外したフューエルフィルター内部のガソリンを排出するとフィルターで取り除かれた汚れが出て来ました。
普段気にせず給油をしていると思いますが、空気中の塵や砂埃が混入したり、
結露した水分やスチールタンク内部の錆等がガソリンに含まれているので定期的に交換しましょう。
新旧のフューエルフィルター。
同時にホースやホースクランプも交換します。
最後に適正な状態になっているか燃圧テストを行ってフューエル関連のパーツの交換が完了。
エンジンオイル交換。
フラッシング剤を注入しエンジン内部で発生したスラッジやカーボンを落とした後に
汚れと共にエンジンオイルを排出。
しずくが垂れなくなるまで時間を掛けてオイルの排出を行い、異常な金属片が混ざってないか廃油のチェックを行って
エンジン内部の状態を探ります。
チョイスしたオイルは当店ではお馴染みのFUCHS TiTAN SuperSyn 5w-50。
汚れの集約性が高いだけでなく、オイル消費量を抑えて低温時から高温時まで安定した性能を発揮し
新旧車輌を問わずオーナーから支持され、リピート率が非常に高い100%化学合成オイルです。オイルエレメントを交換し、適量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。ATFの交換。
当店での交換方法は全量交換のみを行っており、
様々なリスクを避ける為にもその他の交換方法では作業を行っておりません。
閉店前に排出を開始し一晩掛けてATFの排出を行うので最短でも1泊2日の作業時間を頂きます。
ATFのオイルパンの磁石に付いたスラッジを確認しATシステムに不具合が出てないか、
正常に機能しているか状態を探ります。ATエレメントを交換。オイルパンは綺麗に洗浄を行い、ATエレメントやオイルパンガスケット、Oリングは新品を使用して装着。問題は無いか内部の状態を確認し各パーツを元に戻していきます。新しいATエレメントを装着。洗浄、乾燥を終えたオイルパンへガスケットを装着して車輌へ戻します。E36以降のモデルはオイルゲージが無くなって油面調整が大変なのですが、
E30はオイルゲージがあるのでATFの量を目視で確認して油面調整が可能です。
油面調整は必ずテストランを含めて調整を行わないと正確な調整が出来ないので要注意。デフオイルの交換。
粘度が高いので必ず油温を上げた状態で排出を行わないと時間が掛かるだけでなく
上手くスラッジを排出出来無いので注意が必要です。
パッと見綺麗ですが四年間という時間を考慮すると、本来のデフオイルとしての性能は期待出来ませんので
見た目に惑わされないよう・・・
ドレン・フィラーボルトのワッシャを交換。
ワッシャは自身が潰れる事で密着度を高めているので一度使用してしまった物は再使用出来ません。
装着には必ず新しいワッシャを使用します。規定量のデフオイルを注入してデフオイルの交換が完了。
交換を怠ると内部で発生したスラッジが研磨剤の様になってベアリングやギアを傷めて異音を発生させたり
想定外のトラブルが発生する事もありますので、定期点検時にはチェックをし、
必要があれば交換していきましょう。
パワステオイルの交換。
新油は透明の赤い色なのですが、徐々に透明度は薄れて発生したスラッジの影響で黒味を帯びてきます。
交換は専用の機械を使用してパワステオイルラインのフラッシングを行って、
内部で発生したスラッジを車外へ圧送させて綺麗な状態にしてから新油を注入します。
エア抜きを行ってパワステオイル交換が完了。
ブレーキフルードの交換。
専用の機械を使用して内部で発生した水垢や錆等の汚れを古いフルードと共に車外へ圧送させます。
ブレーキフルードは吸湿性が非常に高く、
走行していなくても徐々に劣化していく為定期点検の際には交換が必要なのですが、
特に古いモデルは吸湿の影響で錆が発生しやすく、錆が発生してしまうと正常なブレーキ操作が妨げられる可能性が
高くなってしまうので、異常が見つかれば原因を突き止める為、ブレーキシステム全体の点検が必要になります。
4輪共にブレーキフルードの排出を行って異常な汚れや錆等が排出されてないか確認を行います。
特に問題が見つからなければ規定量のブレーキフルードを注入しエア抜きを行ってブレーキフルードの交換が完了。冷却水の交換。
フラッシング剤を注入し、内部で発生した水垢や錆等の汚れを圧送して車外へ排出させます。
フロントショックアブソーバーはオーバーホールして再生します。新旧のタイロットエンド。
ボールジョイントの動きも悪くガタも出ていたので丁度良い交換時期でしょう。
新旧のロアアーム。
ASSY交換。
取り外したロアアームのボールジョイントのブーツが破損しており、
中のグリスが切れてしまっています。ボールジョイントも正常に機能してくれず異音の原因になります。
ロアアームコントロールブッシュ。
ブラケットからブッシュのみを打ち抜いて交換。
他のブッシュよりも負担が多く掛かり交換比率が非常に高いブッシュなので状態の変化には注意して下さい。新旧のフロントアッパーマウント、スプリングパッド(アッパー・ロア)
アッパーマウントはアルピナ専用部品になります。
新旧のフロントスイングサポート。
ASSY交換。スプリングコンプレッサーを使用して各パーツを組立ていきます。リアショックアブソーバー一式。こちらもオーバーホールで再生しました。
取り外したリアアッパーマウント。
ダメージが多くクラックが入っていました。新旧のスタビブッシュ。新旧のリヤスウィングサポート。
ASSY交換。ミッションマウントも新品へ交換。新品のフロントブレーキローター。
前後のブレーキローターを計測した所、交換時期に来ていたので前後共に交換。
こちらもアルピナ専用部品。
新旧のフロントブレーキパッド。
ブレーキローターと同時にブレーキパッドやセンサーも交換。
ブレーキパッドはブレーキ鳴き防止の面取りを行っておきます。新旧のリアブレーキローター。新旧のリアブレーキパッド。
フロントと同様にパッドの面取りを行ってセンサーも同時交換。タイヤの山はありましたが、経年を考慮し新品に交換。4輪ホイールアライメント調整。
足廻りの脱着を行ったので4輪ホイールアライメント調整を行います。
テストランを行って交換した部品を馴染ませてから仮止めだったパーツの本締めを行って
メーカーの基準値を元に何度もテストランを繰り返しながら
その車輌に最も適した数値を導き出していきます。
ブッシュの消耗具合やタイヤ・その他の部品の消耗によっても最適な数値が異なってくるので
非常にシビアな調整が必要です。テスターでバッテリーの電圧を計測すると既定の数値を下回っていたので、新しいバッテリーへ交換。
テスターで計測しなくても四年という期間を考えれば要交換ですが・・・
タイミングベルトを交換したので次回に備えてステッカーに交換時のデータを書き込んでおきます。全ての作業を終えたらテストランを行って、修理箇所やその他に問題がないか確認。
その後、陸運支局へ持ち込み車検を取得します。
無事に車検を取得し、帰路も各部の状態を確認しながら工場へ戻ります。
24ヶ月定期点検記録・車検証・車検ステッカー・定期点検ステッカー等をオーナーへお渡して
今後のメンテナンス等をお伝えして納車となりました。
今回は四年間眠っていた車輛のメンテナンスを行いました。
ガレージに放置・・・という訳でなく
週に一回はエンジンをかけていたので、エンジンがかからないなどのトラブルはありませんでしたが
時間の経過だけでも、ゴム系の部品を中心に消耗が進んでいる箇所が多く見られましたね。
これが完全放置の場合は、おそらくエンジンもかからない、ブレーキの引きずりなど様々なトラブルが出ている
可能性もありプラスαの作業が必要になる事がほとんどです。
一般修理に関してもそうですが、最近、眠っていた車(不動)を再生して欲しいがいくらかかるか?
といったお問い合わせも多くいただきます。
実車を拝見しないとこちらもお答えが出来ません・・・ざっくりでいいから!という方もいますが
原因もわからずにざっくりとお答えする事も出来ません・・・
全国何処でも伺えますので、お考えの方は実車拝見させて下さい・・・
2019年03月12日