【E46 M3】各部メンテナンス【71,000Km】
本日は愛知からご来店のE46 M3のレポートをお伝えしていきます。
走行距離は71,000Kmで購入されてから、ほぼノーメンテナンスで乗られてきたそうです。
まだまだこれからも乗り続けるとの事なので、
不具合箇所などが無いかをチェックしながら作業を進めていきましょう。
お預かりした後の冷間始動時にエンジン前方からキュルキュルといった音が出ていたので
そういった点も踏まえて各部のチェックを進めたところ
ベルト部の消耗・フロントブレーキパッド・ローターの交換時期・デフサイドシールからのオイル漏れ
が判明したので、さっそく整備を開始していきましょう。ベルトを確認するとヒビ割れが多く発生しており、このまま放置していると断裂してしまうだけでなく、
エンジンルーム内で切れたベルトがヘビのように暴れて各部を損傷させたり、
ウォーターポンプに巻き付きロックさせオーバーヒートを引き起こして最悪の場合、
エンジンが損傷してしまう可能性もありますので、
ベルトからの異音や状態の変化には細心の注意を払った方が良いでしょう。
M3・ALPINAはハイパワーなエンジンを搭載している為ベルトに掛かる負担も多く、
シビアコンディションでの使用やスポーツ走行をしている方は通常よりも劣化が早まる傾向なので
経年や走行距離などを考慮して、写真のようになる前には交換しておくべき部品かと思います。新旧のアイドラプーリー。
内部にベアリングが入っているのですが、使用していくと内部のベアリングが摩耗してガタが出たり、
異音が出たりします。ベルトの交換の際にはこちらも消耗パーツとして同時に交換しておきます。
新旧のファンベルトテンショナー・テンショナープーリー。
ここでの注意点はテンショナーを固定するボルトも交換という事ですね。
ネジ山などに問題が無いのに何故か・・・
ボルトやネジにはある一定の範囲内で伸び縮みをする弾性域があり、
その範囲内でバランスを保ちながら部品を締め付けている役割を持ちます。
今回のテンショナーの固定のようにかなりの駆動力が加わる箇所などに関しては取り外した段階で
その弾性域から外れてしまっている(ネジが伸びてしまっている)と判断し、
こういった細かいボルトなども新品に交換していくというわけです。
たかがボルトですが、弾性域を外れたネジは簡単に破断します。
今まで何度かそういったケース事も見ていますので、
力が大きくかかる箇所のボルトなどは細い太いに関わらず見直ししていく必要性があります。
新旧のファンベルト。
様々な状況により劣化が進む為、交換時期は様々なので一概には言えないのですが、
定期点検の際に状態を確認し、走行距離や経年等を考慮して劣化が酷くなる前に交換しておく事が大切です。
新旧を見比べると状態の変化が判ります。
このようにヒビ割れが多く発生すると冷間時やステアリングを切った際に異音を発生させるので、
少しでも違和感を感じるようであれば、早めに点検した方が良いでしょう。
このように劣化したベルトは前触れもなく突然切れてしまう事もあるので異音を放置したまま走行する事は厳禁です。新旧のエアコンテンショナープーリー。
こちらは機械式ですね。
各パーツを取り付けし、ベルト部の作業は完了です。
次の作業はフロントブレーキです。
前輪部のブレーキローターの摩耗値、歪み測定をした所、
交換が必要な状態だったのでブレーキローターとブレーキパッドを同時に交換していきます。ブレーキキャリパー、ローターを外します。新旧のブレーキパッド。
新品のブレーキパッドはそのまま装着するのではなく、鳴き防止とブレーキング効果を高める為、
面取りやパッド表面を整えておきます。
新旧で見比べるとブレーキパッドの減り具合が良く判りますね。
ブレーキパッドはギリギリまで使用する事は避け、定期点検の際に多少でも早めに交換してしまった方が
不用意にローターを傷つけてしまう等のトラブルを回避する事に繋がるのでご自身の走行方法を考慮して
交換時期を判断すると良いでしょう。
ブレーキ系のメンテナンスを疎かにしてしまう事は自身だけでなく
他者にも迷惑をかけてしまう事もあるという事を肝に銘じる必要がありますので
定期的にチェックし、問題があればしっかりと整備を行う事が大切です。
新旧のブレーキパッドセンサー。
こういったセンサーも都度交換です。
再使用すると思わぬトラブルが出るものです。
特にE90モデルからはセンサーの形状から破損しやすく、
Idrive上の交換時期のお知らせに関係してきたりと、未交換のままではややこしい事の方が多いので
再使用は当社ではしておりません。
新旧のブレーキローター。
M3には放熱穴のあるドリルドローターが採用されており高い放熱効果により
ブレーキの耐熱限界で発生するフェード現象を抑えています。
しかし、ドリルドローターは放熱穴の無いブレーキローターと比べると耐久性が低く
クラックが入りやすい事が欠点で、クラックを見逃してしまうと症状が悪化して
ローターが割れてしまう事があるのでクラックの発生には注意が必要です。
長期間使用していると均一に削れる事は少なく、波うちが出ている事が多いので
何箇所かで計測を行って異常が見つかれば交換が必要です。
新しいブレーキローターを取り付け、
パッドをキャリパーに装着してブレーキの交換作業が完了。サイドシールからのデフオイル漏れ修理の前にデフオイルを排出。
排出前にフラッシング剤を注入し、内部で発生したスラッジを排出しやすくします。
デフオイルは粘度が高い為、冷えた状態では排出に時間が掛かるばかりでスラッジを上手く排出する事が出来ません。
排出前は必ず温めた状態で行い、内部で発生したスラッジと共にしずくが垂れなくなるまで
時間を掛けて排出させます。デフサイドシールを交換していきましょう。
デフサイドシールを交換する為、ドライブシャフトを取り外し、
アウトプットドライブフランジ、サイドフランジを取り外します。
デフオイル漏れはデフケースやフランジ部分の塗装が写真のようにしっとりとした感じで目に映るので、
接地している状態だと漏れを見逃している事もありますので
リフトアップした際には良く確認し、漏れが無いかを確認しておきましょう。
外したサイドフランジ、アウトプットドライブフランジ。
アウトプットドライブフランジのスプラインに異常が無いか確認し、
サイドフランジに圧入されているオイルシールを交換します。新旧のオイルシールとOリング。
ゴミや汚れ等が噛み込まない様に綺麗に除去してから斜めに入らない様に慎重にオイルシールを圧入。サイドフランジに新しいOリングを装着。
経年で油分が抜けて硬化してしまうと、弾力性が無くなって潰れてしまう事が原因でオイル漏れを発生させる為、
オイルシールと同時にセットで交換します。
左右共に交換。
反対側と同様にアウトプットドライブフランジのスプラインに異常が無いか確認し、
サイドフランジに圧入されているオイルシールを交換します。新旧のオイルシール、Oリング。
反対側と同様に新品へ交換。デフ側に異常は無いか確認し、左右のオイルシール、
Oリングを交換したサイドフランジ、アウトプットドライブフランジを装着。
ドライブシャフトを装着してデフオイル漏れの修理が完了。規定量のデフオイルを注入し、デフオイルの交換が完了。全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に違和感が無いか確認を行います。
テストラン時には同時にブレーキローターの焼き付け作業を行って
ブレーキパッドとブレーキローターの密着度を高めると共にブレーキローターの初期歪みが出来るだけ出ないように。
パッドとローターを交換した際は摺り合わせがピッタリと合っていない為、
街乗りでは走行距離で300km~1000km程度ぐらいを目安に
通常の走行方法で激しいブレーキングを控えて徐々に馴染ませる事が大切です。分解整備記録簿をオーナーへお渡しして作業内容や今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。
今回はベルトからの異音の修理、ブレーキの摩耗による交換、デフオイル漏れ修理を行いました。
車は使用していけば徐々にトラブルの発生頻度が増える為、法定点検の際には消耗品だけでなく
経年や走行距離を考慮して各部の状態をチェックしておく事が必要で、
出来ればトラブルが発生する前に事前にパーツを交換しておく事が理想なのですが、
異常が無ければそのまま使用してしまうケースが多く、
トラブルが発生してから対処するケースも多いのではないでしょうか?
トラブルとなると予期せぬ2次被害や3次被害にまで発展する事もありますので
ご自身の走行距離や使用頻度などではどれぐらいでメンテナンスが必要なのかを把握しておく事も大切です。
トラブルの発生を出来るだけ回避する為にも法定点検の際に定められた作業以外に
経年部品の点検や交換時期の把握等、年間のメンテナンスコストを考えながら
掛かりつけの工場と長期のメンテナンスプランを立てておくと安心なのではないでしょうか。
2019年02月20日