【E46 M3 SMGⅡ】クラッチ交換etc,,,【70,000Km】
明日から11月ですね。さすがに日蔭は涼しさを感じますが、日が当たっている場所は
まだまだ半袖でも大丈夫な陽気が続いています。
今月最後のレポートはE46 M3 SMGⅡのクラッチ交換等をお届けしていきます。走行距離は70,000Km。
クラッチ操作にトラブルが出たわけではありませんが、走行距離等を考慮し、
早めの予防整備の一環としてクラッチ交換を実施します。
SMGはシーケンシャルマニュアルギアボックスの略でトラブルが多かった
先代のE36M3Cに搭載されたSMGを更に進化させSMGⅡ(オプション装備)としてE46 M3へ搭載されています。
ベースとなる6速MTをドライバーに代わり油圧アクチュエーターがクラッチ操作を行う為、
MTでありながらクラッチペダルは無く、自動変速を行う6速セミオートマなのですが、
ATモードも選べるのでオートマ限定免許でも運転が可能となっており
パドルシフトが装備されたステアリングはF1さながらのシフトチェンジを楽しめます。
変速モードの使い方により半クラッチが多用されていると
通常のMTよりもクラッチの減り方は早くなる傾向なのですが、
ドライバーの走行方法や走行環境等でも左右される為、
ご自身の使用方法等も含めて交換時期を考慮する必要があるモデルですね。
クラッチの修理の前にまずエンジンオイル交換を行なっていきましょう。
フラッシング剤を注入してエンジン内部のフラッシングを行います。
エンジンオイルは潤滑の他に清浄効果や冷却効果、
ピストンとピストンリングの隙間を密閉しガス抜けを防ぐ密封効果、
錆から守る防錆効果等の役割を担っており、汚れていく事で徐々に効果は薄れてしまいます。
その為、交換時期を過ぎてしまったオイルを使用し続けると取り切れなかったスラッジやカーボンが堆積してしまい
通常のオイル交換だけでは汚れを落とせなくなってしまう為、交換時期には注意が必要です。
使用しているフラッシング剤は汚れを効果的に落とすだけでなく、洗浄の際の摩擦を少なくし、
再付着防止効果で落とした汚れの再付着を防止する事で新しいオイルの再汚染を防ぐ効果があります。10~15分程アイドリングを行って、エンジン内部にフラッシング剤を浸透させて汚れを落とし、
エンジン内部に汚れたオイルを残さない様にしずくが垂れなくなるまで時間を掛けて排出。
廃油はそのまま処分してしまうのではなく、
異常な汚れや金属片等が含まれていないか確認を行ってエンジン内部の様子を探ります。
エンジンオイルの交換時期なのですが、M3やALPINAではパフォーマンスを維持する為にも
半年、もしくは3,000km~5,000kmを目安に交換を行うと良いでしょう。
近距離等のチョイノリしかしない方は、冬場になると結露が発生しやすく、
水分がオイルと混ざって乳化してしまう事でエンジンへダメージを与えてしまう事もある為、
オイルキャップに白いオイルが付着していたら、早めにオイル交換を心掛けましょう。
オイルエレメントの交換。装着に使用するパッキンやワッシャ等も全て新品へ交換。
オイルエレメントはエンジンオイルを濾過する事で吸着した汚れを取り除き、
綺麗な状態にして再びエンジンへ循環させているのですが、
エンジンオイルの交換を怠ると汚れが堆積してしまい、
いずれは目詰まりを発生させオイルの流入量が減ってしまいます。
オイルの流入量が減るのを防ぐ為、エレメントベースにはバイパス機能を備えており
濾過を行わずにオイルを循環させる様になるのですが、そうなるとエンジンへ与えるダメージも多くなっていきます。
エンジンオイルの再汚染を防ぐ為にも新しいオイルには新しいオイルエレメントの使用をお勧めしています。
オイルエレメントはフィルターのみを交換するタイプなのでオイルエレメントベースへ装着します。オイルエレメントを装着したら、規定量のエンジンオイルを注入してエンジンオイル交換が完了。クラッチの残量を確認。ミッションを降ろす為に遮熱板、プロペラシャフト、マフラー等を外します。取り外したマフラー一式。
クラックなどの異常が無いか各箇所を確認。下廻りに異常が無いかも確認しながらプロペラシャフトを外します。取り外したプロペラシャフト。
プロペラシャフトを取り外したら、下廻りの見えなかった部分も念入りに確認します。
アクチュエーターユニットの先に付いているギアスイッチに不具合が出るとギアの変速が出来なくなるので、
本体だけでなくソケット部の破損等にも注意が必要です。
ミッションからアクチュエーターユニットを取り外します。車体から慎重にミッションを降ろします。取り外したミッションハウジング。
異常が無いか全体の確認を行います。ハウジング内部は想定していたより汚れが少ない状態でした。レリーズフォーク、レリーズベアリング、インプットシャフトのスプライン部に錆が出ていましたが、
想定内なので全体的に特に異常は無さそうです。クラッチカバー、クラッチディスクを外します。フライホイールは焼けや歪みも無く良い状態です。フライホイール奥に付いているパイロットベアリングを交換。SSTを使用してパイロットベアリングを引き抜きます。新旧のパイロットベアリング。
ベアリングが摩耗したりグリス切れを起こしてしまうとスムーズに回転する事が出来なくなってしまう為、
ゴロゴロと異音を発生させたり、破損してしまうと固着する等で他のパーツに負担を掛けて
二次、三次被害とトラブルを拡大してしまうので異常が出てからでは無く、
経年や走行距離を考慮して交換しておくと安心です。新しいパイロットベアリングを圧入して交換作業が完了。フライホイールを研磨して綺麗に整えておきます。クラッチハウジング内部のパーツを取り外したら、
洗浄を行って内部にこびりついたクラッチダストをブラシで落としていきます。落とした汚れをスチーム洗浄で洗い流します。洗浄が終わり、組み上げ作業に入ります。
新旧のクラッチディスク・クラッチカバー・レリーズベアリング。
クラッチ交換は必ずこの3点をセットで交換するのがセオリーです。
どれか1点のみに異常が出たとしても交換は必ず3点同時に行って下さい。
新旧のクラッチディスク。
SMGはMT車よりも摩耗が早い傾向なので、ご自身の走行方法や走行環境等を考慮して
少し早目でも異常が出る前に交換しておくと安心です。新旧のレリーズベアリング。クラッチカバーを留めているボルトは再使用はせずに全て交換。消耗品のボールピンを交換。新旧のボールピン。
樹脂製なので使用していくと先端が摩耗していき、
劣化が進むと先端がポキッっと折れてしまう事があるので注意が必要です。ボールピンの交換が完了。
小さく単純なパーツなのですが、ボールピンを支点としてレリーズフォークが作動する為、
このパーツに異常が出るとギアチェンジが出来なくなってしまうので、クラッチ交換の際には必ず交換を行います。スプライン部に発生した錆を丁寧に落としてからグリスアップを行います。グリスアップは多くても少なくても動作不良を起こす要因になるので注意して下さい。スプライン部に錆が発生してしまうとスムーズに動かなかった影響で段付き摩耗している事がある為、
クラッチディスクを仮り組みしてスムーズに動くか動作確認を行います。カバーの動きをスムーズにし、ダイヤフラムスプリングからの異音を防止する為にポイントごとに注油を行います。クラッチのセンター出しを行って慎重にミッションを戻します。ミッションを装着したらプロペラシャフト、マフラー等の排気システム、
遮熱板等を車体へ戻してクラッチ交換が完了。全ての作業を終えたら最終のテストランで修理箇所やその他に違和感が無いか確認を行います。
テストランではSMGⅡの各モードを切り替えて異常が無いか1つ1つ動作確認を行ったのですが、
瞬時にギアチェンジを行う体感はSMGシステムならではですね。
パドルシフト操作しながら一気に加速していく感覚は、
楽しすぎて思っているよりスピードが出てしまうので公道でのスピードの出し過ぎには注意が必要ですね。後日、オーナーへ分解整備記録簿をお渡しし、今後のメンテナンスやSMGⅡの注意点等を伝えて納車となりました。
今回はE46 M3 SMGⅡのエンジンオイルとクラッチの交換を行ったのですが、SMGⅡはモードや走行方法により
半クラッチを多用する事があり、どうしてもMT車と比較すると摩耗が早くなります。
今回は交換しませんでしたが、SMGⅡを快適に使用する為、ハイドロリックオイルの状態を確認しておく事も大切です。
E46 M3 SMGⅡは経年や走行距離を考慮すると、総点検が必要な時期に来ているので、
トラブルを防ぐ為にも掛かりつけの工場と相談しながら長期のメンテナンスプランを立てておくと安心です。
2018年10月31日