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MAINTENANCE REPORT

【E46 M3 SMGⅡ】クラッチ交換【117,000Km】

本日2本目!
コンスタントにUPしていきたいところですが・・・なかなか動きも取れず・・・

今回のメンテナンスレポートはE46 M3 SMGⅡ 走行距離117,000Kmのクラッチ交換をお届けしていきましょう。

停車する際に1速に入れたままにし、翌日にエンジンをかけようとしたらどうやってもギアが反応してくれず
エンジンもかからない・・・というSMGⅡでは故障が少なくなったと言えどたまに見られる症状で
自社ローダーで引き取りに伺いました。
今回の様に車輌の症状により自走する事が不可能な車輌でも引き取りに行く事は可能です。
自走が出来なくてどうしようか・・・という時にはお気軽にご相談下さいね。
国内であればほぼ一日でどこでも辿り着けちゃいますので。
今回入庫したE46 M3 SMGⅡはセミATのSMG(シーケンシャルマニュアルトランスミッション)を搭載しており、
ステアリングには手を離さずにシフトチェンジが行えるパドルシフトを備え
F1さながらのシフトチェンジを行える事で爽快なスポーツ走行が楽しめるモデルで
生産は2000年~2006年まで行われました。
SMGはMTミッションをベースに油圧と電子制御により変速を行っており、
E36M3Cから搭載され、そのシステムにここまできたか~と当時も驚かされましたが
初代SMGは故障が多発した為、人気が無かったですね・・・
とはいえ、2000年代初期には初代SMGをお乗りのオーナーも多かったので、結構な台数を修理した記憶があります。
SMGⅡになり故障が減ったとはいえ、MTよりも変速機構等への負担が多く、クラッチやハイドロユニットやセンサー、
油圧系統のトラブルや消耗などに注意を払いつつメンテナンスしていく事をおすすめしております。
低速時のジャダーの発生等々の現象がすでに出ていた事、
オーナーにクラッチの交換をおすすめしていた事もあったので、すぐにパーツを手配し作業を進めていきます。
トランスミッションを降ろす前に、アンダーカバー、遮熱板、マフラー、プロペラシャフトを取り外し。
ワイヤーハーネス部やホース類に破損やオイル漏れ等の異常が無いか確認。
初代SMGはこのワイヤーハーネスが燃えたりして大変でした・・・
ミッションを降ろします。
予想していましたが、ここでミッションを降ろすのに通常の倍以上時間がかかりました・・・
インプットシャフトが固着して抜けてくれない・・・
ようやく・・・ミッション降ろし完了・・・大の大人が4人がかりで・・・
錆による固着です。オーナーから低速時のジャダーが・・・という事でクラッチ交換をおすすめしておりましたが
こういった点も、そういった症状が出る原因のひとつになるでしょう。取り外したミッションハウジング。
ハウジング内部はクラッチダストでかなり汚れていますので綺麗にしていきましょう。レリーズベアリング、インプットシャフトのスプライン部は錆が多く発生しており、
これではスムーズな動作が出来ません。フライホイールはダイアルゲージを使用して歪みや摩耗の状態を計測。
許容値だった為、表面を綺麗に整えておきます。取り外したクラッチディスク。
SMGモデルはクラッチの交換サイクルがMT車より早目です。走行環境やご自身の走行方法、
経年等を考慮してトラブルが発生する前に交換しておくと良いでしょう。
トラブルが発生してしまうと走行不能になってしまう事が多いので注意が必要です。取り外したクラッチカバーを確認。
新旧のクラッチディスク・クラッチカバー・レリーズベアリング。
クラッチ交換は基本的に1点でも不具合が出ていればパーツの状態の良し悪し関係無しにこの3点を同時に交換します。新旧のクラッチディスク。
比較するとクラッチの摩耗具合がお判りになると思います。
取り外したレリーズベアリング。
ミッションハウジングの汚れをスチーム洗浄で綺麗に落としてから作業を進めます。ミッションハウジング内部のクラッチダストも各パーツを取り外した後に綺麗に洗浄を行います。洗浄後に錆を綺麗に落としグリスアップを行います。マフラーの遮熱板をスチーム洗浄。ミッションハウジングをスチーム洗浄。クラッチダストで真っ黒だったハウジング内もここまで綺麗になりました。洗浄をする事で作業効率をUPさせ、今後のオイル漏れ等のトラブルを発見し易くする為にも有効な作業なのですが
やはり汚れたままの状態にしておくよりも綺麗にしておいた方が気分的にも良いですね。
フライホイールは研磨して表面を綺麗に整えておきます。インプットシャフトのスプライン部を丁寧に研磨して綺麗に錆を落としてからグリスアップを行います。ボールピンは消耗品なので交換。新旧のボールピン。
樹脂製なので消耗して折れてしまう事があるので
見た目に使用可能だとしても必ず新品に交換して下さい。
ボールピンを支点としてレリーズフォークが動くので徐々に消耗していきます。
小さなパーツですが、摩耗したり経年でクラックが入って破損してしまうと
ギアが作動しなくなってしまうのでクラッチの交換の際は同時に交換します。錆の発生でスムーズな動きが出来なかった影響でインプットシャフトに段付き摩耗が発生してないか
クラッチディスクを仮組してスムーズに可動するかチェックを行います。レリーズフォーク、レリーズベアリングを装着しミッションハウジング側の作業が完了。
クラッチを装着後に車体へ戻します。クラッチカバーを留めているボルトは全て交換。センター出しをしっかりと行ってクラッチディスク、クラッチカバーを装着。新旧のプロペラシャフトのセンターフランジのガスケット。
一度使用した物は再使用不可なので必ず新品を使用します。デフ側のセンターフランジに新品のガスケットを使用してプロペラシャフトを装着。プロペラシャフトを車体へ戻し、マフラーや遮熱板を装着。ミッションオイルの交換。
交換の前にフラッシング剤を注入し内部のスラッジを落とし古いオイルと同時に排出します。排出は必ず温めた状態で行い、フラッシングで落とした汚れと共に一気に排出させます。ドレンボルトにはシールテープを巻いておくのですが、
巻き方を間違えてしまうと逆にオイル漏れに繋がるので要注意。規定量のミッションオイルを注入し交換作業が完了。最終のテストランを行ってSMGのギアチェンジのチェックやその他に違和感が無いか確認し納車となりました。
メンテナンスをしっかりと行っていればSMGシステムのトラブルを軽減する事は可能ですし、
ATとして運転したり、MT感覚でパドルシフトを使った運転は
MTとはまた違った運転する楽しさを再認識させてくれますね。オーナーに分解整備記録簿と今後のメンテナンスや注意点等をお伝えして納車となりました。

今回はE46 M3 SMGⅡのクラッチ交換を行いましたが、
扱い方やメンテナンス方法によってSMGⅡの不具合の発生率に差が出て来ます。
どのモデルもそうなのですが、10年以上もしくは10万kmが経過している車輌は
各パーツの経年劣化やオイル漏れ等にも注意し、各部のメンテナンスと油脂の交換は必ず定期的に行う事が大切です。

2018年09月18日