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MAINTENANCE REPORT

【E36 M3】VANOSオイル漏れ修理【65,000Km】

本日のメンテナンスレポートはE36 M3のVANOSからのオイル漏れ修理です。走行距離は65,000Km。

VANOSは可変カムシャフトコントロールシステムの事でアクセルペダルの踏み加減やエンジンの回転数に応じて
吸気側や排気側のカムシャフトのバルブタイミングを無段階に調整しており、低速域では安定したアイドリング、
中速域では高トルクと綺麗な排出ガスや低燃費を実現し、高速域では十分なパワーを発揮する為に
状況に応じた最適なエンジン性能を引き出してくれるシステムで前期モデルではシングルVANOSの吸気側のみの制御、
後期モデルではダブルVANOSとなって吸排気共に制御する事でM3の性能をUPさせています。
VANOSからのオイル漏れは内部で使用されているガスケットやOリングの劣化が原因なので
エンジンからVANOSユニットを取り外し、分解しつつ各部の動作確認と各パーツを交換していきます。エンジンルーム内のエンジンの一番手前側に付いているアルミ製のパーツがVANOSユニットになりますね。VANOSからのオイル漏れは比較的多く、VANOS内は高い圧力が掛かっている為、
内部のガスケットやOリングが劣化してしまうと
オイルが噴き出してしまいVANOSだけでなくフロントカバー周りをオイルまみれにしてしまいます。
ただ、パッと見て気付きにくい箇所でもあるので、定期的にチェックし
VANOS本体下部やフロントカバーが酷くオイルや埃で汚れている場合は
確実にオイル漏れを発症しているので要注意です。
VANOSユニットへアクセスする為、カムカバーを外します。SSTを使用しVANOSを外していきます。取り外し。
VANOSユニットを取り外しました。
各パーツにそれぞれ分解して動作確認や内部の汚れ方、
スラッジの量を確認しながらガスケットOリングを交換していきます。
カバー類のヘキサゴンボルトはアルミ製なので外す時も取り付け時もトルクのかけ方には注意が必要です。
少しでも締め付けトルクが強かったりすると、簡単にボルト頭が飛びますし、無理に緩めようとするとネジ山が
あっけなく壊れます・・・
汚れているので先に綺麗に洗浄を行ってから作業を進めます。ソレノイドカバーのガスケットを交換。 オイル汚れや内部のスラッジを洗浄して綺麗に取り除いてからOリングを装着。VANOSの動きを制御するソレノイドバルブは動作確認を行って問題が無ければOリングを交換して使用するのですが、
ソレノイドバルブが故障して動作しないケースもあるので、その際はソレノイドバルブの交換が必要になります。リミットバルブを取り外し、装着されているOリングを交換。VANOS本体に使用されているOリングも全て交換します。ガスケット、Oリングの交換を終えたらエンジンへVANOSユニットを装着。取付完了。
カムカバーの装着に使用するカムカバーボルトのラバーシールを交換します。新旧のカムカバーボルトのラバーシール。
カムカバーガスケットの劣化に目が行きがちなのですが、
ラバーシールが劣化する事でカムカバーからのオイル漏れも多くなる為、
交換はカムカバーガスケット・プラグホールガスケット・ラバーシールの3点をセットで交換する事が大切です。
新旧のカムカバーガスケット・プラグホールガスケット。
当然ながら1度使用したガスケットはどんなに綺麗な状態だとしても、
自身が潰れて密着性を高めている為、再使用は出来ません。
カムカバー装着時はカムカバーボルトのトルクに注意しながら慎重に装着します。
力任せに締めてしまうとオイル漏れを発生させたりボルトを折ってしまう事があるので注意が必要です。エンジンカバーを装着してVANOSのオイル漏れ修理が完了。エンジンオイルの交換。
交換の前にフラッシング剤を注入しエンジン内部に堆積したスラッジやカーボンの汚れを落とし易くします。
エンジンオイルは、その役割として潤滑・冷却・防錆・密封・清浄の効果があり、
使用していくにつれて徐々に効果は薄れてしまう為、
交換時期を過ぎてしまったオイルは出来るだけ早めに交換しなければなりません。
10~15分程アイドリングを行ってフラッシング剤をエンジン内部へ浸透させて汚れを落とたら、
古いオイルと共に排出します。
出来るだけ内部に汚れたオイルを残さない為にも雫が垂れなくなるまで時間を掛けて排出を行います。
同時に廃油に金属片や異常な汚れが含まれていないか確認してエンジン内部の状況を探ります。
新旧のオイルエレメント。装着に使用するパッキン等も全て新品へ交換。
新しいオイルの再汚染を防ぎ、新しいエンジンオイルの性能十分に発揮させる為にも
オイル交換時は交換サイクルに拘らずに新しいオイルエレメントの使用をお勧めしています。
古いオイルの排出を終えたらオイルエレメントを装着し規定量のエンジンオイルを注入してオイル交換が完了。
エンジンオイルは多くても少なくても不具合を発生させる為、注入する量には注意が必要です。今回使用したオイルは当社ではお馴染みのFUCHS TiTAN SuperSyn 5w-50。
M3やALPINAのオーナーに支持され性能の高さからリピート率が高く、当社でもお勧めの高性能オイルです。
オイルインスペクションのリセットを行います。
インジケーターのメモリは約3,000km毎に消えていくのですが、特にM3やALPINAのオーナーは
3,000km~5,000kmでのオイル交換をお勧めしているので1コマが消えた時点で交換時期を意識して
2コマが消える前にオイル交換を行って下さい。
オイルの管理は走行だけでなくエンジンやVANOSシステムへ与える
影響も大きいので最高なパフォーマンスを維持する為にもしっかりと行う事が大切です。全ての作業を終えたら最後にテストランを行って修理箇所やその他に不具合や違和感が出ないか確認を行います。
アクセルを軽く踏み込んだだけでシートに身体をググっと押し付けられるM3ならではの本来の加速感を取り戻し、
高回転域まで一気に吹け上がる爽快感にテストランという事を忘れてしまう程に走行を楽しむ事が出来ました。後日、オーナーへ分解整備記録簿をお渡しして作業内容や今後のメンテナンスメニュー等をお伝えし
納車となりました。

2018年08月05日