【E39 ALPINA B10 V8S】定期メンテナンス【60,000Km】
本日はALPINA B10 V8Sが定期点検の為に入庫しました。
初めて入庫したのが今年の2月だったのですが、約半年程が経過して走行距離は前回の点検から約20,000km増えています。
平均的な走行距離よりも多めなので、この点も考慮しながら各部に不具合が出ていないか点検・確認していきます。下廻りを点検するとパワステラインにオイル漏れを発見。
BMWでは定番のトラブルなので、多少の漏れが出ていても放置されてしまう場合が多く、そういった車はポンプやギアボックス、
高圧側のホースに異常が出ているケースが有るので注意が必要です。
新旧の低圧側のインテークホースとリターンパイプ・高圧側のプレッシャーホース。
パワステラインのホース類を全て交換。
カシメが施されているホースは経年や走行距離等でカシメ部からオイルが漏れ出してしまう事が多く、
消耗品として考えた方が良いでしょう
更にゴム製のホース類は経年劣化する事が原因でオイル漏れを発生させるので、点検の際は劣化具合を見極め
経年を考慮して事前に交換する事が大切です。新旧のシールガスケットとホースバンド。ホローボルトはそのまま使用します。
シールガスケットは締め付ける事でガスケットが潰れ密着するので一度使用した物は再利用出来ません。
ホースバンドも脱着を繰り返すとバンドの締め付けが弱くなるので消耗品として考え交換。
点検の際に交換されていない車を見る事があるのですが、ホースが新しいのにオイル漏れを起こしていたりするので
安易に装着せず再使用しても問題無いか状態を確認する事が大切です。パワステオイルの交換。
ホースを交換後に専用の機材を使用してフラッシングを行いオイルポンプやギアボックスのスラッジを除去します。
古いオイルを圧送して車外へ排出を行い、新しいオイルを注入、エア抜きを行いパワステのオイル交換が完了。
何度かテストランを行い、オイルに濁りが出ていないか確認します。
少しでもオイルに濁りが出てしまう場合は、残った古いオイルと混ざっている状態なので完全な交換が出来ていません。
その様な事を防ぐ為にも交換の際には適切な方法と施工が重要になります。平均より走行距離が多かったのでデフオイルに異常なスラッジが出ていないか状態を確認。
平均的な走行でしたらギアの破損はそれ程気にしなくても良いのですが、ギアは経年劣化で破損する事があり
異常なスラッジが出ていたらギアの異常磨耗や破損が起きている可能性があるので修理が必要です。
状態を見ても特に問題は無かったのでデフオイルの交換をします。
エンジンオイルの交換。
排出の前にフラッシング剤を注入してエンジン内部のカーボンやスラッジの汚れを落としておきます。
折角新しいオイルを入れても内部が汚れていては十分な機能が発揮出来ません。
10~15分程アイドリングを行いフラッシング剤を循環させ内部の汚れと共にオイルを排出。
古いオイルを出来るだけ残さない様にする為、排出には時間を掛け出来るだけ古いオイルを残さない様に行う事が重要で
オイルは画像の様に真っ黒な状態でした。
M3やALPINAをお乗りの方にはパフォーマンスを維持する為、3,000km~5,000km毎の交換をお勧めしています。新旧のオイルエレメント。
オイル交換と同時にオイルエレメントも交換。
フラッシング剤の効果で落とされた汚れでエレメントも真っ黒な状態でした。デフオイルの交換。
必ず温めた状態で粘度を下げて内部で発生したスラッジと共に古いオイルを一気に排出させます。新旧のドレンボルトワッシャ。
ドレンボルトを規定のトルクで締め付ける事でワッシャが潰れ密着してオイルが漏れるのを防ぐので
一度使用したワッシャは再使用はせずに必ず新しい物を使用します。排出後に規定量のデフオイルを注入してデフオイル交換作業が完了。運転席のリクライニングが出来ない状態なので外して確認します。座席はパワーシートで電動で可動するのですが全く動かない状態。シートのモーターは動いていて動力側は問題無かったのでシートを可動させているワイヤーを外して確認します。新旧のパワシートのワイヤー。先端を確認すると破断していて使用出来ない状態。
長く使用していると、金属疲労で破断してしまう車も少なくありません。
新しいワイヤーを装着してリクライニングの可動チェックを行い作業完了。後部座席のドアから水漏れがするとの事でドアの内張りを剥がして内部の状態を確認。インシュレーターを接着しているブチルテープが劣化して粘着力が失われ
インシュレーターが剥がれた影響で、そこから浸水していた様です。BMWでは良く見られる症例です。
一度全て剥がし、ブチルテープを新しく貼り直す必要があり、その際にインシュレーターも破れてしまう事が
ほとんどなので、新しくインシュレーターとブチルテープを用意する必要があります。
インシュレーターを外したら、ドアに残った古いブチルテープを丁寧に剥がしていきます。反対側の後部座席のドアも確認します。確認すると同じ箇所が剥がれていました。
こちらも同様に新しいインシュレーターへ交換。新旧のドアインシュレーター。
ドアインシュレーターは防音や防振の他に雨水等の浸水を防ぐ役割を担っています。
接着には粘着力の高いゴム製の防水ブチルテープを使用するのですが、
経年で接着力が弱まってしまうので注意が必要です。
雨の日は濡れた傘や靴等でなかなか気付き難いのですが、洗車時にも浸水するのでもし車内が濡れていたら放置せずに
修理しないと悪臭や錆の発生、電気系のパーツの故障等に繋がりかねないので要注意です。ブチルテープを丁寧に貼り直し、新しいドアインシュレーターを装着。左右共に内装を戻し浸水のチェックを行って浸水が無い事を確認して全ての作業が完了。
全部の作業を終えた後はテストランを繰り返し作業箇所やその他に不具合が出ていないか確認し、
問題が無ければ納車になります。
前回の点検から約半年で20,000kmと平均よりも多い走行距離でしたが走行に関する部分には特に大きな不具合は見られず
基本的なオイル交換のみで作業は終了しました。
駆動系以外のシートの故障や定番のトラブルに関しても経年を考慮すれば想定内の症状だったのですが、
定番のトラブルは放置されてしまう事が多く、二次被害に繋がる可能性が高いので注意が必要ですね。
オイル系は定期的に交換していれば問題無いのですが、その他に経年や走行で劣化するパーツも多いので
主治医と相談しつつ定期的なメンテナンスを行う事は、安心した走行を楽しむ為にも非常に重要です。
2017年01月06日