【E46 ALPINA B3S】シリンダーヘッドオーバーホール【78,000Km】
今回はオイル漏れの点検修理の為E46 ALPINA B3Sが入庫です。
何処からオイルが漏れているのか各部位の状況を確認して作業を進めていきます。まずは上部からエンジンルームを確認します。
パッと見た印象では漏れたオイルが飛び散ったりしている箇所はなさそうです。アンダーカバーを取り外してみるとエンジンオイルの漏れ跡を発見しました。
この車輛のオーナーは割と短期間で3,000Km程を走行しオイル交換をする方なので、
期間と走行距離を考えると、それなりのオイルが漏れている事が考えられますね。
点検の結果、シリンダーヘッドのガスケット不良によるオイル漏れでE46モデルでは割と多く見られる症状でした。
シリンダーヘッドガスケット不良とタイミングチェーンカバーからの漏れはもはや定番と言っても良いかも知れません。
このままガスケットだけを交換すればオイル漏れの作業は終了なのですが、走行距離も80,000km弱との事で
今後の事を考慮し、オーナーと相談して今回はシリンダーヘッドのオーバーホールを行う事に。
まずはインテークマニホールド等の補機類を取り外していきます。カムカバーを取り外して、カムなどに傷が無いかをチェック。
オイル交換は定期的に行われている車輛なので、綺麗なヘッドですね。VANOSユニットを取り外し。シリンダーヘッドを取り外しました。洗浄液に漬けてスラッジやカーボンの汚れを落とします。
燃焼室側の汚れは、走行距離・経年を考えればこの程度かと思います。洗浄が終わり、バルブを外していきます。全て元の場所へ戻しますので、分からなくならないように・・・
この距離でバルブスプリングが折損する事はまずありませんが、自由長や直角度などに問題が無いか調べておきます。古いガスケットを綺麗に落とし、ストレートエッジとシックネスゲージを使用して6箇所で平面度を測定します。大きく歪みは出ていませんでしたが、面研をしましょう。
取り外したエキゾーストバルブとインテークバルブです。バルブはカーボンの堆積で真っ黒な状態でしたが想定内の汚れですので特に問題は有りません。
フェーズを傷付けないように、カーボンを削り落としていきます。各バルブのカーボンを落とし終了。鏡面まで磨き上げる必要はないので程々に・・・洗浄剤でほぼ汚れは落ちましたが、細かい箇所をチェックして汚れが残らないように・・・インマニのポート面などに古いガスケットなどが残らないよう処理を進めます。内部の汚れも丁寧に落とします。
アルピナのポートはどのモデルも美しい仕上がりですね。バルブ摺り合わせの準備を進めます。
ステムとガイドの隙間測定を行います。ガタがあるかどうかのチェックですね。
バルブガイド・ステムは摩耗しますので使用限度を超えていたらそれぞれ交換が必要になります。バルブラッパーとタコ棒を使用してバルブの摺り合わせ。
摺り合わせをする事でバルブとシートの密着性を高め圧縮圧力の低下を防ぎます。
24箇所全て丁寧に摺り合わせを行なっていきます。
シリンダーヘッドのプレッシャーバルブを新品に交換。24箇所全てのバルブの摺り合わせが完了。綺麗な状態に蘇りました。
バルブのステムシールも新しく交換。
バルブのステムシールは劣化していくと燃焼室内にオイルが侵入し
燃焼室でエンジンオイルが一緒に燃えてしまいマフラーから白煙が出る原因になります。
こういった作業の時しか交換できない消耗品のひとつですね。
ピストン上部のカーボンスラッジの付着具合やシリンダー内部の状態を確認。
その後、ピストンの上部に堆積したカーボンスラッジを丁寧に取り除きます。
ピストントップのカーボンを取り除くだけで思った以上に走行のフィーリングが向上します。
こちらもストレートエッジとシックネスゲージを使用して平面度を測定します。シリンダーヘッドにカムケースとカムシャフトを装着します。カムシャフトの状態は良好。初期始動で傷が入らないように組付けペーストをしっかり塗布。インテークマニホールドはサンドブラストをして綺麗に塗装を落とし結晶塗装で仕上げます。トルクレンチを使用してカムホルダーを取り付けていきます。シリンダーヘッドとブロックを組み付け・・・完成までもう少し。
角度締めを行う箇所にはトルクアングルゲージを使用して既定の数値で締め付けていきます。VANOSの装着準備。新旧のVANOSのガスケット。
このパーツが劣化してオイル漏れを発症する事が多いので定期的な点検と交換が必要なパーツになります。
漏れやすい箇所には液体ガスケットも併用して装着します。VANOSを装着しました。エアで調整しながらVANOS位置を決めていきます。新旧のバキュームホース類。
劣化がみられましたので新しいパーツへ交換します。
ホース類も経年劣化により固くなりヒビ割れてしまいますので点検の際には必ず確認します。
交換時期を想定し、出来ればアイドリング不良などを起こす前に交換しておきたいパーツなのですが
インマニの下に隠れていたりと普段では良否判断が難しい所なので、こういった作業時に交換すべき部分は必ず交換しましょう。新旧のVANOSのオイルホース。
劣化するとオイル漏れを発症致しますので定期的な点検が必要な箇所になります。
ホースと同時にワッシャガスケットも交換します。VANOSホースの装着が完了しました。エアポンプラインのメタルガスケットを新品に交換。
エアポンプのラバーマウントブッシュは写真の状態なので当然交換です。各エアホースも交換します。インテークマニホールドの結晶塗装が仕上がりました。ロゴの部分の塗装を削り出し仕上げます。
インマニに取り付けられるセンサーカバーのガスケットを交換します。
センサーカバーをインマニに装着します。サーモスタットのガスケットを交換します。
サーモスタットの装着が完了しました。テンプセンサーの交換。スロットルのガスケットも交換します。インジェクターのOリングを交換します。インジェクターの噴射試験も行いました。問題無し。新旧のスパークプラグ。
全て新しいプラグへ交換します。
取り外したプラグの焼け具合を確認しておきます。カーボン多めで黒く焼けておりますが状態は特に問題無さそうです。カムカバーのガスケットを一式交換します。
新旧のエアクリーナーエレメント。
交換の際にはエアクリーナーエレメントのケース内も事前に綺麗にしておく事が大切です。専用の機械を使用して冷却液を交換します。
FUCHS FRICOFIN G12
これでシリンダーヘッド廻りの作業は完了です。
エンジン内部の整備・修理はキーを回す段階になると、ドキドキしますね。
当然、ひとつひとつの作業を確認しながら間違いの無いよう進めていますが
この感覚は何基組んでも変わらないでしょうね・・・
問題無くエンジンは始動しました。
これからテストランを行って問題が無ければ納車になります。
綺麗に粉体塗装されたインマニが装着されただけでエンジンルームの印象がガラッと変わりました。
一般道・高速道路を走りテストラン。
作業箇所やその他の部分に問題が無いかを繰り返し確認します。
今回大きな加工はしませんでしたが、やはり丁寧な清掃と組み付けによってフィーリングの向上も体感出来ました。
納車も無事終わり、オーナーにも喜んでいただけたようです。
今回のようなオーバーホール等の作業は予算の都合もございますので車輌の状態を見極め、
事前にオーナーと相談をしながらスケジュールを組んで作業を進めるようにしております。
皆さんは年式や走行方法・走行距離・所有期間などを考慮してご自分の車輌の状態を把握しておりますでしょうか?
状態を把握する事は快適に走行するだけでなく自身の安全にも注意を払う事になりますので
一度車輌の状態を確認してみるのも良いと思います。
2016年07月18日