【E36 M3】クラッチ交換【70,000Km】
今回はE36 M3が入庫致しました。走行距離は70,000Kmです。
この車輌は当社が10年程前に販売した車輌になり、変わらず大事にしてもらっています。
オーナーからエンジンが暖まるとギアの入りが悪くなってしまうという事で、今回はクラッチ廻りを重点的に点検修理していきます。
この症状は、E36モデルで良く見られる症状のひとつですね。
ミッション内部ギアの可能性もありますが、ほとんどがクラッチディスクやプレートの反りによる不具合が多いです。
今回も走行距離を考えると、ミッションメカニズムの不具合は考えづらいので、クラッチ廻りから整備を進めえていく事に。クラッチ残量のチェック。
遮熱板、マフラー、プロペラシャフトを取り外してミッションを降ろし、クラッチの摩耗具合や他に不具合が無いか点検致します。プロペラシャフトを外す際にユニバーサルジョイントに亀裂を見つけました。
ユニバーサルジョイントはミッションのアウトプットシャフトとプロペラシャフトの間に装着され、
エンジンからの回転運動を適切にプロペラシャフトへ伝える役割を持っているのですが、
ここに写真のような亀裂があると振れが大きくなり、プロペラシャフトのセンターベアリングやプロペラシャフトのヨーク部にも
問題が出てきますので、このように亀裂が入る前に定期的な点検と交換が必要です。シフトアーム部分も取り外して不具合が出ていないか確認致します。クラッチカバー、クラッチを取り外し。フライホイールをまずは目視点検。
クラッチとの当たりが均一か、ムラが出ていないかを見ていきます。
ダイアルゲージにてチェック。
今回はフライホイールは軽い研磨でそのまま使用出来そうです。
取り外したミッションハウジングです。
ハウジング内はクラッチダストで汚れておりますので綺麗にスチーム洗浄致しますプレッシャープレートを押す役割をしているインプットシャフトのスプラインはどうしても錆が出てしまいますが
レリーズベアリングの動作を出来るだけスムーズにさせたいのでのちほど綺麗に錆を取り除き、グリスアップをしておきます。取り外したシフトアーム部分です。
ブッシュ類に劣化がみられますので交換致します。走行中は常に操作されている箇所ですからこういったところも二度手間にならないよう同時に交換が望ましいですね。ボールピンを新しい物へ交換致します。新しいボールピンと取り外したパーツになります。
ボールピンを支点にしてクラッチレリーズフォークが動きボールピンが消耗していきますので必ずクラッチと同時に交換致します。新しいブッシュ、ブッシュベアリング、カラーと取り外したパーツになります。
必ず3点を同時に交換致します。新しいブッシュ類を装着する事でカッチリとしたシフトチェンジを体感頂けます。取り外したプロペラシャフトも確認致します。ミッションを降ろす為に取り外したマフラー、遮熱板もミッションハウジングと同様にスチーム洗浄で綺麗に致します。スチーム洗浄をして綺麗になりました。
普段手の届かないパーツを洗浄する事で整備性の向上や今後トラブルが起きた場合も対応しやすくなりますので
必ず綺麗に洗浄をして作業を進めています。インプットシャフトのスプラインに出ていた錆を丁寧に落とします。クラッチカバーに注油をします。
注油をする事でクラッチカバーの動きを滑らかにし、クラッチを踏んだ際に発生する異音を防ぐ役割も兼ねています。
ちょっとした事なのですが、この様な作業をする事で更にベストな状態へ導く事が出来ますので大切な作業になります。新しいクラッチカバーと取り外したパーツです。
摩耗するパーツですので必ず交換が必要なのですが、走行方法の違いで交換時期は違ってきます。
特に半クラッチを多用した走行を繰り返すと摩耗は早くなりますので渋滞の多い地区で使用されている車輌は消耗が激しいので
交換時期が通常の車輌よりも早くなりますね。拡大してみると摩耗だけでなくクラッチプレートの焼けがあまり良くありませんね。
クラッチ焼けは半クラッチを多用したりする事で部分的に表面の摩擦係数が変化し、
摩擦力の低下からスムーズな発進が出来なくなったり、クラッチ滑りを起こす原因にもなります。
最悪の場合は走行不能になり自走できなくなる事も。
必要以上の半クラッチは出来るだけ避けた方が良いですね。新しいクラッチディスクと取り外したパーツです。
見比べただけでも消耗具合がお判り頂けると思います。拡大すると更に摩耗具合が判ります。
摩耗が酷くなるとクラッチが滑ってしまい、クラッチディスクのリベットが露出して
フライホイールやクラッチカバーにダメージを与えますのでクラッチに違和感を感じたら早期な点検が必要です。新しいレリーズベアリングと取り外したパーツです。
クラッチの交換はクラッチカバー、クラッチディスク、レリーズベアリングを1セットとして考えますので
交換の際は必ず3点同時に交換致します。
まだ使用出来るからと3点の内どれか1点だけを交換したりする場合では、いずれ交換時期が来て
再びミッションを降ろさなければならないので手間や時間、コストなどを考えると同時に3点を交換した方が
メンテナンスコストを削減し同時に安心感を得る事が出来ますので必ず3点を1セットとして交換しております。新しいレリーズベアリングを装着し、インプットシャフトのスプラインに出ていた錆も綺麗に落としました。インプットシャフトのスプラインに薄くグリースを塗る事で錆を防止し、クラッチの動きをスムーズにします。フライホイールの表面を軽く研磨し整えました。
新しいクラッチディスク、クラッチカバーを装着してクラッチの交換は終了です。プロペラシャフトを外す際に亀裂を発見したユニバーサルジョイントを新しいパーツへ交換致します。
駆動系の振動を抑えるパーツなので少しの亀裂が有るだけでも車輌に影響を及ぼしますので
見つけたら早期に交換する事が大切です。新旧ミッションマウント。劣化具合がお判り頂けると思います。
こちらも駆動系の振動を抑えるパーツですので交換をしないと車輌全体に振動が起きるだけでなく
その他のパーツにも影響を及ぼしますので全体的にボディの振動を感じるようになったら点検が必要です。
プロペラシャフトを取り付ける前にデフ側のガスケットも新しい物へ交換致します。全ての作業が終了後、テストランを繰り返してクラッチや他のぶぶんに問題が無いかを確認致します。
入庫の際の症状も解消されM3本来のカチッとしたシフトチェンジでシフトアップ、シフトダウンも
スムーズな走行が出来る様になり、その後オーナーの元へ納車となりました。
今回の症状はクラッチの異常による作業だったのですが、クラッチ部分の不具合だけで考えても様々な原因が考えられます。
ですので症状だけでの判断は非常に難しく、実際に車輌を確認した方が原因を特定しやすくなりますので
車輌に違和感や不具合を感じた際はお気軽にお問い合わせ下さい。
2016年02月10日