第26回 VANOSユニット
50項目点検でご来店されたお客様のM3Cが入庫致しました。
点検の結果、エンジンミッションからのオイル漏れ等が見つかりましたので
お客様と打ち合わせをし、今回はエンジンオイル漏れ修理及びミッションオイル漏れ修理を依頼されました。
エンジンオイル漏れはVANOSユニット下とエンジンブロック脇のプレッシャースイッチ
より大きくオイル染みが目立ち、ミッションはミッションスイッチ部より大きくオイル漏れが見られました。
まず、カムカバーを取り外しVANOSユニットの脱着を開始します。上段右の写真の
プラグホールガスケットもカムカバー脱着時にオイル漏れをしていないか確認します。
この部分からオイル漏れをし、プラグホール内にオイルが溜まってしまい調子を崩している車輌も多く見られます。
VANOSユニットの電源ライン等を一本一本調べ、しっかりと作動しているか確認し、
カムの位置の初期設定を出す為、専用のSST(スペシャルツール)を使用しユニットを外します。
VANOSユニット下側とエンジンブロック部にオイル漏れが確認されたので
各部のOリングを新品に交換し、きちんと清掃を施し再度SSTを使用し組み込みます。
使うパーツはゴム製のOリングのみですがオイル漏れは見た目も汚いですし、
思いもかけないトラブルを引き起こします。早期の発見と修理をおすすめしております。
エンジンブロック脇のプレッシャーバルブも同様に交換し、スチーム洗浄をし
オイル漏れ跡をきれいに清掃します。
ミッションを下ろし、オイル漏れの確認等をします。
ミッションスプラインの錆が目立つのがちょっと気になりました。
ミッションケース内側とレリーズベアリングにはクラッチ板のダストがびっしりと付着しており
クラッチの交換時期もお客様にご報告致します。
今回ミッションからのオイル漏れはスイッチからの漏れのみでしたので
スイッチを交換し、ミッション本体も清掃し、錆が出ていた箇所はグリースアップし組み込みます。
エンジンオイルラインの清掃とミッションオイルの交換も同時に行いました。
エンジンオイル、ミッションオイル共に随分汚れが目立ちました。
上段右の写真は左から交換前のミッションオイル、右は新品のオイル(FUCHS ATF4000)になります
施工後エンジンのアイドリングの安定、吹け上がりの良さ。ミッションの各速の入り具合は随分改善され、
M3独特の心地良いフィーリングを運転していて感じることが出来ました。
最後に100km程テストランをし、各部の機能チェック、コンディションの調整をし、
残っている何点かの課題は夏前にしましょう。と打ち合わせをし
オーナー様の元へ。オーナー様にも喜んで頂けました。
補足
VANOSユニットとはポルシェのバリオカムやホンダのVTECと同様の可変バルブ機構の一つで
何故そんな機構が必要かというと、従来のエンジンは同一の排気量であっても、燃費や最大トルク幅等から
高回転高出力型エンジンと中低速型エンジンに大別され、一般に高回転高出力エンジンの代表としては
F1等のレースで使われるようなエンジン。常用回転域での出力が低く
ゴーアンドストップの多い一般道等では非常に乗りにくいピーキーでエンストの起こしやすいエンジンになります。
一方量産型エンジンでは常用回転域での出力特性が重視されている為高回転出力には限界があり、
高回転、常用回転が両立できるレスポンスの良い理想的なエンジンを作り出す事に
必要不可欠な機構が可変バルブ機構になります。
高回転高出力エンジンの高回転時のレスポンスは素晴らしいが発進時などトルクが細く乗りにくいエンジン。
中速型エンジンの常用回転域でのストレスを感じないが高回転域まで回らない高回転出力に限界のあるエンジン。
この2つのエンジン特性をうまく調和させ、あらゆる回転域でのレスポンスの良さ、燃費、運転のしやすさ等に
VANOSユニットは非常に重要な役割を担っています。
2007年07月14日