第37回 E30 M3エンジン不調
87年式M3が無料の50項目点検で来店されました。
まだ乗り始めて日が経っていないそうで車輌コンディションの把握をしたいそうです。
所々、修理の形跡はあるのですが壊れてから直すを繰り返していた様子。
シリンダーヘッドからオイル漏れが見られたのでお預かりし修理となりました。
一度、オイル漏れ箇所のオイル汚れをスチームで洗浄しテストランを行った所
カリカリカリカリとノッキングが酷く、とにかくレスポンスが悪い上にトルクも細い。
この症状はエンジンを下ろした時に調べることにしました。
内容とは関係ありませんが上の写真E30E36E46と3世代M3が並んでいました。
この車輌にとっては初めてのエンジン脱着だったようです。
エンジンルーム内も約20年の汚れが積もっていました。
綺麗に直したエンジンを載せる予定ですから、エンジンルーム内も後ほど綺麗に洗浄します。
エンジンスタンドに乗せ、オイル漏れの再チェック。どこもかしこもオイル汚れがひどい状態。
シリンダーブロック内はスラッジがびっしりと。。。
年月の長さだけではなくオイル管理があまり良くなかった模様。
シリンダーのボア内に傷が付いていました。ピストンが振れて出来たような
線状の傷で、予想外の症状でしたから急遽お客様と相談し、ベストな修理方法を
提示させていただき、せっかくここまで分解したし・・・と言うことで
シリンダーブロックのボーリングとホーニング作業と純正オーバーサイズピストンに交換する作業を依頼されました。
ホーニングが完了したシリンダーブロック。傷も消え非常に綺麗。
シリンダーとピストンクリアランスを当社で指定しボーリング、ホーニング加工しました。
スラッジも除去され、綺麗なエンジンに。
新品のピストン。93.755MMの純正オーバーサイズピストン。標準サイズは93.35MM
ピストンの精密さが良く分かる数値ですね。
シリンダーブロックにピストンを組み込みます。当たり前ですがピッタリと収まりました。
燃焼室もカーボンスラッジの塊でしたが、しっかりと清掃。
地味な作業が大きな効果をもたらします。各パーツも灯油でしっかりと洗浄し
段々と見慣れたエンジンに組み上がってきます。
チェーンテンショナーもM3C用の対策品に交換しました。
精密整備する場所が当社の2階になるのである程度組み上げが完了した時点で1階のピットスペースに
エンジンを移動し、フライホイールとクラッチを装着。クラッチはまだ使用できそうなのでそのまま使用します。
事前にエンジンルーム、クラッチダストがビッシリと張り付いたミッションの清掃を行いました。
パワステポンプも長年のオイル汚れが積もり積もっていました。
エンジンを載せ、ミッションと結合。スプラインが切ってあるので中々決まらない時もあり
これが一発で決まってくれるとうれしいものです。
各部補器類を組み上げ、各オイル、LLC等NEWエンジンに火を入れる準備を進めて行きます。
全てを完了した時点でプラグを入れない状態でエンジン内の油圧を上げいざ始動。
組み上げに間違えは無いと確信していても、この時はいつも緊張します。
無事、エンジン始動し、一安心。そのまま1時間ほどアイドリング状態で待機。
オイル漏れやアイドリング不調が無いかその間にチェック。アイドリング音は非常にいい感じ。
調子の良いM3のフォーンという音が変化無くピット内で響いていました。
工場長より許しを得て、テストラン。MAX3500rpmを厳守。
しばらくは慣らしの状態ですが、修理前のトルクの無さはアクセルを踏んだ瞬間分かるくらいの激変ぶり。
ギアチェンジするたびにカリカリカリうるさかったノッキングも無くなって、
エンジンに関しては文句無し。他の部分が気になっちゃいました。
お客様にこれからのメンテナンスメニューと注意点をアドバイスし、納車となりました。
お客様も愛車の変化ぶりに驚き非常に喜んでいただけたようです。
2007年07月25日