第70回 納車
閉店後、東名名神を走り抜け、着いた場所は
なにわ自動車検査登録事務所。
在庫車輌を購入いただいた新しいオーナーに車を引き渡す納車日。
日本国内である限り、特別な理由が無い限り陸送会社は使わず、直接お届けし、
納車前の整備内容、各操作方法、これから乗っていく為のアドバイスやお礼等々お伝えしたいとも思いますし
遠方からのお客様でも一度はご来店いただいている方が殆どですから、失礼の無いようにと思っています。
毎週毎週こういった納車があるわけでもないですから、行く本人も結構楽しみだったりします。
今回納車した車輌は97年式ALPINA B3 3.2
キャリアカーに乗った写真のみで終わりではなんですから、納車整備の一部をご紹介したいと思います。
最近では他店で購入された方で納車されて間もないにも関わらず無料点検でご来店される方も多いですね。
購入店での納車整備の内容も分かっていらっしゃらない方も多く見受けられます。
納車整備料をばっちり取られているにも関わらず、エンジンオイルしか交換されていないなんて事も。
中には全く何もしていない。ネジの一本も緩めた形跡の無い車輌も少なくありません。
新車であれば基本的には何もする必要は無いと思います。
(厳密に言うと必要な場合もあります。初期スラッジの出方が多いときは必ずオイルの交換は致します。)
ですが中古車の場合、車輌状態を一度リセットし新しいオーナーにベストな状態から乗り始めてもらい。
そのフィーリングを体で覚えてもらい、そのベストな状態をキープさせていく為のコツをメンテナンスメニューとして
ご提案していくのも私達の仕事だと考えます。
そのメニューも基準となるものが無ければ作る事は出来ません。最初から汚れっぱなしでは基準がありませんからね。
納車前整備はお客様の為でもあり、私達の為でも有る訳です。
エンジンオイル交換は当たり前すぎるので写真は割愛させていただきます。
使用オイルはもちろんFUCHS 5W50。
M3アルピナにお乗りの方々に一番評判の良いオイルです。
まずはブレーキ部。自分と愛車だけではなく第三者の安全にも関わる部分ですね。
どんなに早く走れる心臓を持ち合わせていても
そのスピードを打ち消すストッピングパワーが無ければその心地良いレスポンスを味わう事も出来ません。
規格はDOT4。サーキットを走らない限りは十分な性能です。
同時にキャリパー、パッド、ローターも点検。オーバーホールや交換が必要であれば施工致します。
ブレーキオイルは常に極圧で酷使されていますし、経年等により徐々に沸点降下が起こります。
ペーパーロック現象が起きてからでは遅いですから、一年半~二年に一度は必ず点検し、交換をおすすめ致します。
パワステ部。
オイル漏れがあればもちろんパーツは交換しますが、全く漏れていないのでオイル交換のみ。
それでもスラッジは多く、ギアボックス内のスラッジも綺麗に除去し、FUCHS ATF4000を使用。
整備とは関係ありませんが、上の写真のインナーの部分。アルピナブルーが綺麗に確認出来ますね。
こういった所でも前オーナーがいかに大切にしてきたかが伝わると言うものです。
フロントスタビブッシュも変形して開いていないのが分かります。
デフオイル交換。
今回はFUCHS HLS90を使用。粘度は75W-90。
ATF交換。
もちろんですが全量交換。ATエレメントも交換。
一晩かけ十分にオイルを抜いた後
各パーツのスラッジを除去とバルブボディを洗浄し元通り組み込み
ATFを注入していきます。油温を確認しながら油面を調整し、テストランをし問題が無ければ作業は終了。
冷却水の交換。
交換前に加圧試験をし、漏れが無い事を確認。
漏れがある場合は、もちろん修理。
フラッシング剤を入れ、フラッシングを十分にした後、圧送で古い冷却水と新しい冷却水を入れ替えます。
汚れの度合いを見て、一度で取れない場合は二度施工します。
エアクリーナーとエアコンマイクロフィルターの交換。
タイロッドエンドの動きが悪かったので交換。最後に4輪アライメントの測定と調整をし、作業は終了。
全作業終了後に、テストランをしばらくさせていただき問題が無い事とフィーリングの向上を確認し
後はオーディオ取り付け作業や細かい作業を残すのみです。
オーナーからの依頼でFOCALの2WAYセパレートスピーカーとDENONのDCT-100の取り付け。
スピーカー、ツィーターは純正位置にピッタリとトレードインさせました。
クロスオーバーも邪魔にならない所にセットアップ。
後は納車を待つのみです。
B3 3.2 Limousine Switch-Tronic
B8 4.0 Limousine Switch-Tronic
B6 2.8/2 Coupe 5MT
B3 3.0/1 Edition30 Coupe Switch-Tronic
全てアルピナブルー。4台同時に集まったのでそれぞれ写真を撮ってみました。
興味が無い人から見れば全て同じ車にしか見えないでしょう。
それぞれを乗り比べるとフィーリングが重なり合う部分もありますが、重なり合わない部分の方が目立ちますね。
どのモデルが秀でているとかでは無く、どのモデルもそれぞれに味のある面白い車です。
そんな車、探しても中々見つからないですよね。
B8、B3はメンテナンスで入庫。B6は在庫で入庫なのでご興味ある方はお気軽に。
Edition30は定期メンテナンスを兼ねたフューエルライン、インジェクター、燃焼室
プラグの交換、エンジンオイルの交換を実施。
日本の道路事情故か、アルピナはノッキングの症状が多く見られるモデルでもあります。
高回転域を定期的に使ってあげないとカブリ気味になり、それが蓄積されカリカリカリという
ノッキングにつながります。燃調やエンジン回転数はDMEや各センサーで常に補正がかかりますので
カブリ気味でも普通に乗れてしまう訳ですが、普通に乗れてしまうが故にノッキング症状に気付かず
いざ回して走ろうといった時にそのポテンシャルが十分に発揮出来ない
エンジンになってしまっているアルピナも多く見受けられます。
E46モデルではその症状が更に目立ちます。低走行でもノッキングの出ている車輌が目立ちますね。
初期のノッキングであれば今回施工する内容とその後の走り方で改善出来ますが
重度のノッキングになるとヘッドを下ろさない限りは改善策はありません。
E46モデルの低走行車でも多く見られますので注意が必要です。
フューエルラインとインジェクターの洗浄。フューエルフィルターも当然交換。
納車の時に中身を確認しましたが真っ黒でした。
VICにて燃焼室、バルブ廻りのスラッジを除去。汚れは排気ガスと一緒にマフラーより排出。
プラグの交換。純正から今回はイリジウムプラグに変更しました。
こういった車輌にロングライフという言葉は似合わないでしょう。
トータルチェック時に発見したエアブーツのヒビ割れ。
そろそろ交換が必要です。もちろんオーナーには伝えました。
ビニールテープ等で補修されてしまっている車輌も見ますが不調の原因になりますので交換すべき部分は交換しましょう。話しが脱線しましたが、無事B3 3.2は名義変更を終え、自宅まで車輌を届け、各説明をし、帰途に着きました。
2007年08月27日