【E30 M3 SportEvolution】24ヶ月法定点検&車検整備【72,000Km】
今回のメンテナンスレポートはE30 M3 SportEvolutionの24ヶ月法定点検と車検整備で入庫です。
今回は24ヶ月法定点検と車検整備で入庫したのですが、点検の際にパワステポンプからのオイル漏れが発生していた為、
基本的な油脂の交換の他に、パワステポンプとステアリングギアボックスのオーバーホール、
スピードメーターが動かないなどの症状もあったので症状を見ながら、早速作業を進めていきましょう。
エンジンオイル交換。
古いエンジンオイルを排出する前にフラッシングを行って、
エンジン内部で発生、堆積してしまったスラッジやカーボン等の汚れを落としやすくします。
渋滞地区を多く走行する方やスポーツ走行をする方、近所までの短い走行を繰り返す等のシビアコンディションでの使用は、
スラッジやカーボン等が発生しやすく、結露等で水分が混ざるとオイルの乳化等、エンジンオイルの劣化が早まるだけでなく、
スラッジやカーボン等の汚れが堆積する原因になってしまいます。
どこのセクションにも言える事ですが、ご自身の乗り方によってメンテナンス頻度などは変わってきますので
クラシックモデルであればあるほど、定期的なチェックが必要になるでしょう。
フラッシング剤を1本分注入し、エンジン内部の手の届かない箇所まで浸透させて汚れを除去させやすくします。10分~15分程アイドリングを行って汚れを落とした後に古いエンジンオイルと共に一気に排出。
排出したエンジンオイルは直ぐに処分してしまうのではなく、エンジン内部の状態を探る為に、
エンジンオイルの汚れ具合や金属片の有無等を確認し、排出には時間を掛けて古いオイルが内部に残らない様に、
しずくが垂れなくなるまで行う事が大切です。
新旧のオイルエレメント。
E30はスピンオン式のオイルエレメントが採用されており、簡単にオイルエレメントの脱着が可能なのですが、
ケースの中にフィルターが内蔵されている為、見た目だけでは汚れの状態を把握する事は出来ません。
オイルエレメントはエンジンオイルが吸着した汚れをフィルターで濾過する事で汚れを取り除いているのですが、
エンジンオイルの交換を怠ったまま使用を続けると、フィルターに汚れが溜まる事で目詰まりを起こし、
オイル流量が少なくなってしまいます。
その為、オイルエレメントベースにはオイル流量が少なくなってしまうと、
濾過を行わずにエンジンへオイルを戻すバイパス機能を備えており、オイル流量は維持されるのですが、
汚れたままのオイルが循環してしまう為、エンジンの負担が多くなってしまいます。
通常エレメントの交換はエンジンオイル交換2回に1回のサイクルの交換で性能的には問題ないといわれているのですが、
エレメント内には汚れた状態の排出されないエンジンオイルが残っており、新油と混ざってしまってしまう事を防ぎ、
新油の性能を充分に発揮させる為にも、当社ではエンジンオイル交換と同時毎回交換をおすすめしています。
今回チョイスしたエンジンオイルは、当社ではお馴染みの【FUCHS TiTAN SuperSyn 5w-50】
過酷なレースでも使用される程の性能で信頼度も高く、真冬の低温時での始動性の良さや、
真夏の渋滞時でも充分に性能を発揮し、低速域から高速域まで一気に吹け上がるエンジンに驚かれる方も多く、
その性能の高さから当社でも支持率・リピート率も非常に高い100%化学合成オイルです。
古いエンジンオイルの排出を十分に終えたら、オイルエレメントを装着し、
規定量の新油を注入してエンジンオイル交換が完了。
デファレンシャルオイル(デフオイル)交換。
デフオイルを排出する前にフラッシング剤を注入し内部の汚れを落としやすくします。
デファレンシャルギアは通称デフと呼ばれており、内部にはギアが組み込まれ、このギアが作動している事で、
左右の車輪を制御しスムーズなコーナーリングを可能にしています。
ギアが噛合う事で内部では多くのスラッジが発生しデフオイル内に浮遊する為、交換を行わないと、
スラッジが研磨剤の様になってシールを傷めてオイル漏れの原因になったり、
内部のギアを摩耗させるだけでなく、バックラッシュや異音の原因になったりします。
デフオイルは相当な極圧で消耗が進んでいくので、ご自身の予想以上に汚れている事も多い箇所です。
こちらも定期的にチェック・交換が必要です。
デフオイルは粘度が高く冷えた状態では排出に時間が掛かるだけでなく、汚れも排出し難くなってしまう為、
デフオイルを温めた状態で排出作業を行う事が大切です。
フラッシングで落とした汚れと共に一気にデフオイルを排出。スピードメーターが動かなかった原因はメーターではなくデフに装着されているパルスセンサーに問題がありました。
こちらが反応しなくなるのはあまり今まで経験がないので故障内容としては新鮮です。
新旧のデフパルスセンサー。デフオイルの排出を終えたら新しいデフオイルを規定量注入し、デフオイルの交換が完了。
トランスミッションオイル交換。
デフオイル同様に古いミッションオイルを排出する前にフラッシング剤を注入し、内部で発生した汚れを排出しやすくします。
ミッションオイルを温めた状態から、古いミッションオイルを一気に排出。ドレン・フィラーボルトには必ず新しいシールテープを巻き直してミッションオイル漏れを防止します。
シールテープは巻く方向が決まっており、逆方向に巻いてしまうとオイル漏れを引き起こすので要注意。規定量のミッションオイルを注入しミッションオイルの交換が完了。
ブレーキフルード交換。
ブレーキラインに発生した水垢や錆汚れを車外へ圧送させます。
4輪全て作業を行い、排出した古いブレーキフルードに異常な汚れや錆等が含まれていないか確認。
異常等が見つかれば問題の個所を特定する為、ブレーキシステム全体を点検する必要がありますね。
ブレーキフルードは新油の状態は無色透明なのですが、吸湿性が高く空気中の水分を含む事で劣化が進行し、
徐々に紅茶色へ変化して黒みを帯びてきます。
劣化が進行すると含まれた水分が錆を誘発してブレーキキャリパーを固着させたり、
ブレーキの熱で含まれた水分が沸騰してしまうと、ライン内に気泡が出来てしまう事で、
ブレーキペダルを踏んでもスカスカと油圧が伝わらなくなり、ブレーキが機能しなくなる【ベーパーロック現象】を引き起こす為、
大きな事故へ発展する恐れがあり非常に危険です。
ブレーキフルードは基本的に定期点検の際に交換する事が多く、定期的に点検を行っていれば特に問題はないと思いますが、
気になる方はリザーブタンクのフルードの色を見る事で判断が可能ですので、
定期点検時にフルード色の変化を確認し、交換時期の色味を把握しておくと良いでしょう。クラッチフルード交換。
クラッチはクラッチフルードの油圧を利用して操作をしており、フルードはブレーキフルードと同様に吸湿性が非常に高く、
水分を含んでしまうと錆が発生し、錆の影響でクラッチレリーズシリンダー等のシール部分が劣化してしまうと、
クラッチフルード漏れを発症したり、思うようにクラッチが切れなくなってスムーズな変速が出来なくなってしまいます。
スポーツ走行等を楽しむモデルはシフトチェンジがギクシャクしてしまうと魅力も半減してしまう為、
快適に走行を楽しむ為にもブレーキフルード交換と同時に交換を行って下さい。パワステポンプを取り外してオーバーホールしていきましょう。取り外したパワステポンプ。
各部の状態を確認しながら分解していきます。ステアリングギアボックスも取り外し、同様にオーバーホールを行います。
単体でそれぞれをオーバーホールするケースもあると思いますが、ステアリングシステム全体でリフレッシュを行う事で、
整備時間や工賃等のメンテナンスコスト軽減に繋がるだけでなく、
関連するパーツ全体を管理をする事で突然のトラブルを回避し、安心した走行を楽しめます。
修理をしているのに短期間で不具合を起こしてしまう等で悩んでいる方は、症状が出ている箇所だけでなく、
関連する全体のシステムを点検し、各部の問題を探し出し解決しておく事が大切です。
パワステポンプの汚れ具合から、以前よりオイルが少しずつ滲み出ていた様なのですが、
ご自身ではなかなか気付き難く、漏れたオイルが他に飛び火して2次被害によって気付いたりとする事も多いですね。
特にE30モデルはウィークポイントとしてパワステ系のトラブルには注意が必要で、
定期的にリザーブタンクのパワステオイルの汚れ具合や減り方等を確認し、各ホースがオイルでしっとりと濡れて汚れていたり、
操作時の異音の発生や違和感を感じたら放置をせず、被害が拡大してしまう前に早めに掛かりつけの工場へ相談して下さい。パワステポンプを分解洗浄し、内部で使用されているオイルシールを交換していきます。
オイルシールはゴム製のものが多く使用されているのですが、経年や走行距離で
柔軟性が無くなり固くなってしまう事で密着度が薄れてオイル漏れを発生させてしまいます。
パワステオイルの管理が悪いとギアボックス等で発生したスラッジがオイル内に浮遊し、
パワステポンプ内部のオイルシールやパワステホース等を傷めて劣化を早めてしまう為、
汚れたままの使用は避け、定期的にパワステシステムの点検、パワステオイル交換を行う事が大切です。それぞれの部品は綺麗に洗浄を行い、傷などの異常等がないか消耗具合等を確認しておきます。新旧のオイルシール。
古いオイルシールは弾力が失われて厚みが薄くなっています。
このオイルシールは細いオイルシールと2重セットになっている為、取り付けの際は要注意。新旧のCリング。
見た目では劣化の判断は難しいのですが、使い回してしまうと思いのほか固定できずに部品間の遊びが多くなったりし
異音の原因になったりしますね。
Oリングなのですが、見た目以上に劣化が進行し、硬化収縮した影響でOリングの太さも微妙に変わっています。シャフトシールを交換。シャフトシールを圧入する際は装着部分の汚れやゴミ等は綺麗に取り除いておきます。
シャフトシールは斜めに入るとオイル漏れを引き起こす為、斜めに入らない様に慎重に圧入する事が大切です。
元通りに組み上げし、ポンプオーバーホールは完了です。
新旧のステアリングラックブーツ、ブーツバンド。
ステアリングラックブーツはステアリング操作中は常に伸縮しており、経年・走行距離による劣化等で柔軟性が失われて亀裂が入ったり、
跳ねた小石等が当たった衝撃で破けてしまう事もあり、破損した状態で走行を続けると、
ブーツ内部に砂埃等の異物が混入する事で、ラックを傷付けて内部部品の交換で済まなくなってきてしまいますので
定期点検の際にブーツの柔軟性や亀裂等がないか消耗具合を確認しておく必要があります。
FR車ではそこまで交換頻度は高くありませんが、FF車や4WD車の交換頻度は高い箇所ですね。
ステアリングギアボックスを分解して洗浄、シャフト・ギア部の摩耗や傷等がないか確認。Oリングやオイルシール等は全て新品へ交換。取り外したラックバー。
摩耗、傷等の有無をチェック。虫食いのような腐食痕が出ている場合は、ラック交換しかありませんが
今までの経験から、そこまで酷い状態のラックはあまり見た事が無いので、シールキットの入手が出来れば古いモデルでも心配は無いかと思います。
取り外す際にシャフト等に傷を付けない様にインナースリーブに圧入されているシャフトシールを取り外します。新旧のOリング・シャフトシール・オイルシール等。
ステアリングラックガイドの樹脂製のパーツも新品へ交換。新旧のピニオン部分のOリング。
数が多く細いOリングもある為、傷を付けたり取り付け忘れが無い様に注意しながら、
ピックツールやピンセット等を使用して慎重に取り付けます。ここで問題が発生。
ピニオン側の径と発注したオイルシールの径が合わない…?
オイルシールの径の方が約1.3mm程小さい状態。ステアリングコラム側も計測。こちら側は約0.8mm程オイルシールの内径が大きい状態。
外車部品あるあるですね。
オイルシールは種類も豊富なので、今回は新たに同種類の適正なサイズの物を用意して装着しております。新旧のOリングを比較すると下側は弾力性がなくなって潰れてしまっている様子が判ります。交換するパーツを間違えない様に確認しながらシールパーツを交換していきます。オイルシールと同様に使用されているテフロンパーツなども新品へ交換。
元通り組み上げてギアボックスのオーバーホールも完了です。
冷却水交換。
当社の交換方法は専用の機材を使用した圧送交換方式で行っており、冷却システムにバイパスした専用アタッチメントを装着。
フラッシング剤を注入し内部で発生した錆や水垢等の汚れを落として古い冷却水と共に車外へ圧送します。近年の夏の気温と湿度の高さによって、2000年以降の車でも冷却関連のトラブルは非常に多く、
冷却系のトラブル悩まされている方も少なくありません。
LLCだけでなく、ホースやウォーターポンプ等にも注意が必要で、
定期的に冷却システム全体の状態を確認しておく事が大切です。
新旧のラジエターキャップ。
ラジエターキャップは密閉弁・加圧弁・負圧弁の3つの弁が付いており冷却経路の圧力を一定に保つ役割を担っており、
密閉弁はラジエターからの液漏れを防いでいるのですが、劣化してしまうと冷却水漏れの原因になります。
加圧弁は通常水は100℃で沸騰してしまうのを圧力をかける事で沸点を高くし、温度が高くなって圧力が上がってくると、
弁を開いて冷却水をリザーブタンクへ逃して圧力の調整を行っているのですが、加圧弁のパッキンやバネが劣化する事で、
圧力調整が不十分になってオーバーヒートが発生しやすくなります。
負圧弁は逆に冷却水の温度が低くなって冷却経路の圧力が低くなった際に弁が開いて、
高温時にリザーブタンクへ逃がしていた冷却水をラジエターへ戻す事で圧力を調整しているのですが、
劣化してしまうと適正に弁が開かなくなり、ラジエター内にエアが入る事で冷却効果が低くなるだけでなく、
ラジエター内が負圧の状態になってしまうとラジエターが損傷する危険性が高くなる為注意が必要です。
この様にただの蓋ではなく、ラジエターキャップは非常に重要な役割を担っておりますので、定期的にチェックし
必要であれば交換しましょう。
サービス・オイルインスペクションのリセットを行います。
リセット後はグリーンのランプが全点灯して、様々な走行状況を元に1つずつランプが消灯していき、
最適なエンジンオイルの交換時期をドライバーへ知らせています。
全消灯してから、もしくは黄色、赤色が点灯してからオイル交換を行うと思っている方がいると思いますが、
当社ではエンジンオイル交換後半年が経過するか、ランプの2つ目が消える頃までの、
どちらか早いタイミングで交換する事をお勧めしています。
予定が合わず交換時期を引き延ばしがちな方は、最初のランプが消えた時点から交換を意識し、
交換する日程を決めて多少早めのタイミングでも交換しておいた方が安心です。
オイルインスペクションランプは走行方法によっても消灯するタイミングが変わる為、
渋滞地区の走行や短距離を繰り返す等のシビアコンディションでの使用やスポーツ走行を行う方は、
通常よりもオイル交換時期が早くなるので要注意。
今回はE30 M3 SportEvolutionの24ヶ月法定点検と車検整備を行いました。
希少なモデルですので、今後も良いコンディションで長く楽しんで頂きたいですね。
有難うございました。
2022年09月12日