【Z3 M Coupe】足廻りフルブッシュ交換【14,000Km】
埼玉からご来店のZ3 Mクーペ。
走行距離はまだ14,000Km弱とかなりの低走行車ですが
走行中に車体が左に流れる為、足廻りを中心に診断した結果
経年によるブッシュ類の消耗が見られたので、オーナーと打ち合わせをし
足廻りのフルブッシュ交換を実施する事になりました。 まずはフロントセクションを分解していきます。 走行14,000Kmという事もあり、ホイールハウス内も綺麗ですね。 リアセクションは内装パーツを取り外し、ショックアブソーバーを脱着します。 前後ショックアブソーバー、スプリング、スタビライザーの取り外しが完了致しました。
この時点で、ショックアブソーバーの減衰値を調べ、使用出来るかどうかを判断します。
幸い減衰値は4本共に規定値をキープしていたので、交換せずにこのまま使用することにしました。リアアクスルキャリアをそのまま降ろします。
ご存じの方も多いかと思いますが、Z3のリアセクションは
E30モデルと同じく、セミトレーリングアーム式サスペンションが採用されています。
セミトレーリングアームはBMW社が確立したサスペンションシステムのひとつで
70年代から80年代にかけては、世界中の各メーカーが、この足廻りをお手本として
開発が進んだ事でも有名ですが、唯一の欠点としてはリアアクスルキャリアのブッシュと
トレーリングアームのブッシュの消耗が進むと、タイヤの内側の偏摩耗が酷くなるという欠点を持っています。
偏摩耗が酷い状態のままブッシュ交換をせずに、乗り続けているとタイヤだけでなく
リアアクスルキャリア自体が変形してくる事もありますので、セミトレーリングアームが採用されている
モデルにお乗りの方は、そういった点も注意しメンテナンス計画を立てた方が良いかも知れません。今回交換するパーツ一式。
もちろん純正パーツを使用しての交換になります。 フロントショックアブソーバーから分解し、新しいパーツを組み上げていきます。 スプリングパッドは実際に触ってみると、劣化の程度が良く分かります。
やはり使用したいたパッドは硬化が進み本来の性能を発揮できていない事が良く分かります。 アッパーマウントベアリングのグリスは完全に切れてしまっていますね。
こうなってしまうと、異音や乗り心地にも影響が出てしまいますので
交換時期としては良い時期なのではないでしょうか。 こちらは新品になります。 上が新しいパーツを使用して組み上げたショック。
下がこれからのものになります。
各パーツをしっかりと洗浄し、組み上げていきます。 見た目だけでなく、組み上げた後の品質を保持すると共に
問題が起きた場合に、すぐに原因が分かるようにする為でもあります。 フロントスタビブッシュとスウィングサポートの交換。 スウィングサポートは外した際に、ボールジョイントの動きを確認すると
かなり動きが悪くなっているのが分かります。
ブーツが破れている場合は、当然交換になりますので、
リフトアップ時には必ずチェックしておきたい箇所でもあります。
スタビブッシュは消耗の程度の判断が付きづらいブッシュでもありますが
新品と比較すると伸びやよじれが出ているのが良く分かりますので
足廻りの見直しをする場合は、必ず交換をおすすめしているパーツのひとつになります。スタビブッシュはシリコンスプレーをたっぷり塗布し、組み上げ時に余計なねじれがでないようにしておきます。 リアスタビブッシュとスウィングサポートの交換。 フロントのようにステアリング操作に直接関わるわけではありませんが
リアも非常に重要な役割を果たしています。 右が新品になります。
古いスウィングサポートは中央のブッシュが随分偏芯しているのが分かります。
ヒビ割れは確認出来ませんでしたが、
ここまで偏芯していると本来のスタビの性能を発揮する事は難しいですね。 リアも同様に、シリコンスプレーをスタビブッシュ廻りに塗布し
組み付け時のよじれを防ぐよう一手間加えておきます。 リアショックアブソーバーアッパーマウントの交換。 走行中にゴトゴトと音が出ているような車は
アッパーマウント中央から断裂し、バラバラになっている事も実際にありますので
異音が出る前に交換というのが一般的でしょうか。 スプリングパッドはアッパーロワー共に交換します。 リアアクスルキャリアブッシュの交換。 リアセクションでも最重要といっても過言では無いブッシュが、この通り断裂してしまっています。
すぐに不具合として確認しづらい箇所でもありますので
リフトアップ時に定期的に点検し、少しでも亀裂が確認できた場合には
すぐに交換をおすすめしております。左右共に同じように断裂しているのが分かります。 セミトレアームのブッシュを交換します。 プレス機を使用し、圧入していきます。
ブッシュは、向きや組み付け位置が決まっているものが多いので
慎重に作業を進めます。
また何tもの力をかけながら、圧入していきますので安全第一で。リアアクスルブッシュも同様に。 これで10年は安心でしょう。 アクスルキャリアにアームとデフを取り付けし、車体を下げ取り付けしていきます。 フロントのロアコンブッシュの交換。 SSTを使用して取り外していきます。 E46モデルと違い、目視での良否判定が難しいブッシュ形状ではありますが
発進や停止時のステアリング部分からの振動や異音によって、交換時期の判断はつきますので
何となくステアリング廻りの違和感を感じる場合は、まず第一にロアコンブッシュの消耗を疑っても良いでしょう。こちらもプレス機を使用して交換していきます。フロント、リアの足廻りが組み上がり、まずはテストランを実施し
足廻りを馴染ませた後、各部のボルトナットを本締めして固定していきます。
最後に4輪アライメントの測定と調整を実施。
リアがセミトレ構造の車はフロントのトーのみの調整しかできないから
サイドスリップテスターでの調整で十分。
などと言われる方もいらっしゃるようですが、それは大きな間違いなので鵜呑みにしないように。
あくまでもサイドスリップテスターはトーイン・トーアウトどちらにタイヤが向いているかを
測定するものであり、その車の基準値に合わせるものではありません。
必ず前後のアライメント数値を読み取り、車全体のボディアライメントもどのような状態になっているかを
把握しながら、調整を進めていく事で気持ち良くドライブ出来る状態に仕上がっていきます。テストランを繰り返しながらベストなセッティングに仕上がり、無事作業は終了致しました。
もちろん左に流れていた現象も収まり快適そのものです。
同時にクラッチの交換も実施しましたが、またの機会に取り上げたいと思います。
久しぶりに、この時代の10,000Km台の車を運転しましたが
非常にコンディション良く、爽快に運転できました。
2014年02月05日