【E36 318is Coupe】フルブッシュ交換【120,000Km】
本日、デスクに張り付かされているので一気にアップしていきましょう。
今回のメンテナンスレポートはE36 318is Coupeのフルブッシュ交換です。走行距離は120,000Km。
今なお人気のあるモデルのひとつではないでしょうか。
コンディションの良い車輛のアクセルを踏み込んだ際のレスポンスの軽さは個人的にも◎な一台です。
こちらの318isは2度目のフルブッシュ交換です。前回交換は8年前ほど前でしょうか。
そろそろ2・3度目のブッシュ交換を検討している方やフルブッシュ交換未経験の方も参考にしながらご覧下さい。まずはリアセクションから作業を進めます。
リアアクスルキャリアを降ろす為、事前にマフラー等の排気システムやプロペラシャフト等を取り外し、
アクスルキャリアで確認できなかった箇所にクラックや、錆の発生等異常の有無を確認しておきます。取り外したリアアクスルキャリアやデファレンシャルギア、リアスタビライザー等、リア足廻り一式。作業の前にスチーム洗浄を行い、砂埃やオイル汚れ等を綺麗に落としておく事が大切です。
洗浄後に各パーツに分解して状態を確認し、各ブッシュを交換していきます。リアアクスルキャリアは経年で錆が発生したり、状態によっては凹みやクラックの発生、
経年劣化や事故等で何らかの無理な力が掛かって歪んでしまっている事もある為、
適切に使用されていたのか、異常を見逃さない様に各部の状態等を慎重に点検していきます。現状のリアアクスルキャリアのブッシュ。
劣化が進行し多くの亀裂が発生しています。各ブッシュには亀裂が多く発生しており、ブッシュとしての機能は不十分な状態でしたね。
交換時期としてはもう少々早くても良かったかなという状態です。SSTを使用し古いブッシュを抜いていきます。デフマウントにも亀裂が発生。新旧のリアアクスルキャリアブッシュ一式。
交換を行う際は状態に関わらず、単品で交換する事はせずに全てのブッシュを同時に交換します。SSTを用いて取り外した逆の手順で新しい各ブッシュを圧入。リアアクスルキャリアブッシュの交換が完了。
ブッシュを圧入する際は、装着面に付着した錆や砂埃等の不純物を取り除き、
無理に圧入したり斜めに入らない様に慎重に作業を行う事が大切です。リアトレーリングアームの各ブッシュを交換。リアの足廻りで重要な箇所の一つになる為、異常が出ていると走行が不安定になり、
加速時や減速時にリアが振られたり、轍に取られたりする症状が出るので注意が必要です。
元々ブッシュが破損しやすく、現在リリースされるパーツは対策品へ変更されています。
SSTを用いて古いブッシュを抜き取ったら砂埃や錆等を除去し装着面を綺麗に整えておきます。新旧のリアトレーリングアームブッシュ。
ナックル部上側に装着されているボールジョイントを交換。SSTを用いて抜き取り、装着面を綺麗に整えておきます。新旧のナックル部のボールジョイント。
経年で動きが渋くなったり、ブーツ部が破損してしまう事がある為、左右共にセットで交換が必要です。取り外した逆の手順で慎重にナックル部のボールジョイントを装着。ナックル部のボールジョイントの交換が完了。ナックル部下側のマウントブッシュを交換。
SSTでマウントブッシュを抜き取ります。装着面に付着した砂埃や塵、錆等を綺麗に取り除き装着面を整えておきます。新旧のマウントブッシュ。ナックル部のマウントブッシュの交換が完了。
リアトレーリングアームのブッシュに異常が出るとガタが出て異音を発生させたり、
不安定になる事で操作性が悪くなり走行中にふらつく原因になる為、
定期的に状態を確認し、経年や走行距離を考慮して症状が出る前に交換しておくと安心ですね。
デファレンシャルカバーのブッシュを交換していきます。作業の前にデフオイルを抜いてからデフカバーを取り外します。
デフマウントを交換。
カバーを装着する際は必ず新しいガスケットを使用します。プレス機で古いデフマウントを打ち抜き、新しいデフマウントを慎重に圧入。デフマウントの交換を終えたらデフカバーの装着面をオイルストーンで綺麗に整えて、
新しいガスケットを使用して漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用しデフカバーを装着。取り外した左右のロアコントロールアーム、アッパーコントロールアーム。
それぞれ装着されているブッシュを交換。比較しても劣化具合は判り難いのですが、
偏心してしまっていたり見た目以上に劣化が進んでいる事がありますね。プレス機を使用して古いロアコントロールアームブッシュ、アッパーコントロールアームブッシュを打ち抜いて
新しいブッシュを圧入し交換が完了
リアのスタビブッシュ・スウィングサポートの交換。古いスウィングサポートを取り外します。新旧のリアスウィングサポート。
ブッシュのみの供給はない為ASSY交換。
画像はありませんがリアスタビブッシュも同時交換済。コイルスプリング、新旧のスプリングパッド(アッパー・ロア)
コイルスプリングは異常が無ければそのまま使用するのですが、
スプリングパッドはアッパー・ロア共にセットで交換。リアアクスルキャリアを組み立てて車体へ戻し、リアアクスルキャリア関連のブッシュ交換、
コイルスプリング、スプリングパッドの交換が完了。
車体を降ろした際に新しいブッシュを馴染ませる為に装着時は一気にボルトナットを締める事はせずに、
仮組みの状態で軽くテストランを行った後に規定のトルクで締め直します。新旧のリアショックアブソーバー。
ショックアブソーバーの劣化は走行性能や乗り心地等の影響、タイヤの偏摩耗にも繋がってしまう為、
ご自身の走行方法や走行環境、経年等を考慮して交換が必要で、
交換する際は前後どちらか一方だけの交換は行わず、基本的に前後共に同時交換します。新旧のリアアッパーマウント。
劣化が酷くなって中心部からクラックが入って破損してしまうとショックアブソーバーを保持する事が出来なくなり、
ゴトゴトと異音を発生させ、その他の箇所にも負担を掛けて大きなトラブルへ発展してしまう為、
点検の際は状態を確認し、経年や走行距離を考慮して交換が必要です。新しいショックアブソーバーにリアアッパーマウントを装着し車体へ戻します。
ダストカバー・バンプラバーも消耗品として同時に交換が必要です。リアショックアブソーバーを装着しリアセクションの作業が完了。フロントセクションの作業へ入ります。
フロントコントロールアームは交換します。タイロッドエンドのボールジョイント部が破損している事も多く、
ブーツ部が破損すると中のグリスが出てしまう事で内部のボールジョイントがダメージを受けて異音を発生させたり、
ステアリング操作が不安定になり非常に危険な為、定期点検の際には確認しておきたい箇所のひとつです。
ステアリングラックブーツも経年劣化や石等が跳ねて破損してしまうと
亀裂が入ってパワステオイル漏れに繋がってしまう為、見落としがない様に慎重に点検を行う事が大切です。フロントショックアブソーバー等、各足廻りパーツを車体から取り外します。取り外したフロントショックアブソーバー。
スプリングコンプレッサーを使用して各パートへ分解し交換を行います。新旧のフロントショックアブソーバー。
新旧のフロントアッパーマウント、バンプラバー、ダストブーツ、スプリングパッド(アッパー・ロア)
サスペンションに関するパーツは基本的に一式セットで交換。新旧のフロントコントロールアーム、ロアコントロールアームブッシュ。
外したフロントロアアームコントロールブッシュ。
ブラケットからブッシュのみを取り外し交換。新旧のフロントスウィングサポート。
経年劣化でボールジョイントのブーツ部が破損してしまう事がある為要注意。新旧のステアリングラックブーツ、ブーツバンド、タイロッド。
ステアリングラックブーツ、タイロッドエンド、フロントコントロールアーム等、各パーツを装着。装着時はリア同様に仮組みの状態でタイヤを接地させてブッシュを馴染ませて、
軽くテストランを行ってから本締めを行います。足廻りの装着を終えたら4輪ホイールアライメント調整を行います。
足廻りを脱着した場合は数値が変わってしまう為、必ず調整が必要なのですが、
長期間調整を行わなかったり、縁石等の段差を激しく乗り越えたりするケースでも数値が変わってしまう事がある為、
走行中にステアリングから手を離すと左右に流れてしまう、ステアリングを維持してないと真直ぐに走らない、
タイヤが偏摩耗している、ステアリングのセンターがずれている等の症状が出ていたら再調整が必要です。
4輪ホイールアライメント調整は簡単に数値を入れれば完了するものではなく、
タイヤの摩耗やパーツの劣化具合等で同じ調整になる事は無い為、
当社では各モデルを把握した経験豊富な整備士がメーカーの基準値を元に、
テストランを何度も繰り替えしながらその車輌に最適な数値を導き出しています。
走行性能に大きく関わる作業の為、最近走行がしっくりこないと感じているオーナーは、
再調整をする事で走行が安定するケースもある為、お気軽にご相談下さいね。全ての作業を終えたら最終のテストランを行います。
テストランは街乗りをメインとして修理箇所やその他に不具合や違和感が無いかチェックを行い、
足廻りの脱着を行う等のケースでは高速走行を行って高速走行時の状態も確認しています。
テストラン時に気になる事があれば、再調整を行って納得がいくまでテストランを繰り返し、
ベストな状態へ仕上げていきます。オーナーへ分解整備記録簿、4輪ホイールアライメント調整データや今後のメンテナンス等を伝えて納車となりました。
今回はE36 318is Coupeのフルブッシュ交換を行いました。
ブッシュ類等のゴム系のパーツは走行の有無に関わらず経年劣化していく為、
状態を見極めて交換が必要になるのですが、目の届かない箇所にも多くのブッシュが使用されており、
取り外してみると大きく破損しているケースもある為、経年や走行距離などを考慮して点検・交換が必要です。
走行時の異音や振動の発生は勿論の事、走行が安定しないと感じたら早めに掛かりつけの主治医に相談して下さい。
特に経年車は各パーツの劣化や消耗等、車輌の管理が重要になる為、
トラブルを回避するだけでなく、メンテナンスコストを削減し、安心して走行を楽しむ為にも
主治医と相談しながら長期のメンテナンスプランを立てて管理していくと良いでしょう。
2020年04月27日