【E30 M3】24ヶ月法定点検&車検整備【110,000Km】
本日のメンテナンスレポートはE30 M3の24ヶ月法定点検と車検整備をお伝えしていきます。走行距離は110,000Km。
ラックスシルバーが綺麗なコンディションの良いM3です。
ドイツツーリングカー選手権(DTM)等の欧州のツーリングカーレースで勝つ事を目的に開発された初代E30M3は
生産終了から約30年が経過している今でも人気が高く、
グラマラスなブリスターフェンダーと大きなリアウィングは外観だけでも圧倒的な存在感を感じさせますね。
今回は基本的なオイルの交換をメインとして紹介しながら、その他に劣化消耗が気になるパーツの交換を行います。エンジンオイル交換。
エンジンオイル交換の前にフラッシング剤を注入して
エンジン内部に堆積したスラッジやカーボンの汚れを落とし易くします。
車のメンテナンスとして真っ先に思いつくのがエンジンオイル交換だと思いますが、
交換時期を経過してしまっても走行が可能な為、交換時期を逃してしまっているケースが非常に多いと思います。
エンジンは走行中にスラッジやカーボンの汚れが発生する為、
エンジンオイルが汚れを吸着しオイルエレメントが濾過する事で
吸着した汚れを取り除いて再びエンジンへ循環させているのですが、交換時期を過ぎてしまったエンジンオイルは
スラッジ等の汚れを多く含みガスケット等にダメージを与えてオイル漏れを発生させたり、
取り除けなくなった汚れがエンジン内部に堆積してしまい良い事なしです。
スポーツ走行をする方や渋滞地区等を走行する方は思いのほかオイルの劣化が早い為、
走行距離が3,000kmぐらいから交換を意識して通常の使用でも5,000kmまでには交換を完了しておくと良いでしょう。
10~15分程アイドリングを行ってフラッシング剤をエンジン内部の手の届かない箇所まで浸透させ
充分に汚れを落とした後に古いオイルと共に一気に排出を行います。
出来るだけエンジン内部に汚れを残さない為にも排出はしずくが垂れなくなるまで行い、
同時に廃油に異常な汚れや金属片等が含まれて無いか確認し、エンジン内部の様子を探ります。オイルエレメントの交換。
E30のオイルエレメントは中のフィルターのみを交換するカートリッジ式ではなく
ネジ式で装着するフィルターとケースが一体型になったスピンオン式になるので本体毎の交換になります。
オイルが冷えていて粘度が高い時(エンジン始動時)や汚れでフィルターが目詰まりしてしまうと
オイル流量を減らさない様にする為、バイパス機能を備えており濾過を行わずにそのままエンジンへ供給されるので
オイル交換を怠っていると、汚れたオイルがそのままエンジン内を循環してしまいエンジンに悪影響を及ぼします。
安価である事と新しいオイルの再汚染を防ぎ、
性能を発揮させる為にもエンジンオイルとセットでの交換をおすすめしています。
今回のオイルはLIQUI MOLY SYNTHOIL RACE TECH GT1 10W-60をチョイス。
高回転域でパワフルに楽しむM3では高温時のオイルの性能の安定が重要になる為、
今回のオイルは10W-60と若干固めの印象ですが、高温時のエンジン保護性能の高さや静寂性に優れ、
汚れの集約性も高い為、高性能な経年車のエンジンにはおすすめの100%化学合成オイルです。ミッションオイル交換。
スムーズなギア変速の為にも定期的に交換が必要ですね。
ミッションオイルはエンジンオイルと同様に内部のギアの潤滑や冷却を行っているのですが、
使用していればギアが噛合う事でスラッジを発生させ徐々に汚れを含んで劣化していきます。
交換を怠ると潤滑を妨げてギアの入りを悪くさせ、スラッジが研磨剤の様になりギアを傷めて
最悪の場合ギア欠けの原因になる事があります。
変速時に異音やギアの入り難さを感じたら早めに交換する事を心掛けて下さい。
通常の使用でしたら車検毎に交換していれば問題無いでしょう。ドレンボルトは新しいシールテープを巻き直してから装着。
シールテープは巻く方向が決まっている為、間違って巻いてしまうと逆にオイル漏れを発生させるので注意が必要です。ドレンボルトを装着し、規定量のミッションオイルを注入してミッションオイル交換が完了。デフオイル交換。
古いオイルを排出する前にフラッシング剤を注入し、
内部で発生したスラッジを落として古いオイルと共に排出しやすくします。
デフオイルは粘度が高く冷えた状態では排出に時間が掛かるだけでなく
内部のスラッジも排出が困難になってしまう為、
排出の前にテストランを行って温めた状態から内部のスラッジと共に一気に排出を行う事が大切です。デフオイルもミッションオイル同様にギアが噛合う事で内部にスラッジが発生する為、
定期的に交換を行わないとギアにダメージを与えるだけでなく、オイルシールにも悪影響を及ぼし
オイル漏れの原因になるので、こちらも車検毎に交換しておくと安心です。デフオイルの排出を終えたら規定量のデフオイルを注入し、デフオイルの交換が完了。パワステオイル交換。
E30モデルだけでなくBMWは全般的にパワステオイル漏れが多くウィークポイントでもある為、
一年毎の法定点検の際に各部の状態を確認しておくと良いでしょう。
新油は透明な赤色なのですが、スラッジを含む事で透明度は薄れ徐々に黒味を帯びていく為、
リザーブタンクのオイルの色を確認すれば劣化具合の判断が可能です。
専用の機械を使用してフラッシングを行ってオイルポンプやギアボックスで発生したスラッジを
古いパワステオイルと共に車外へ圧送させます。
パワステ経路内をクリーンな状態にしてから規定量の新油を注入しパワステオイルの交換が完了。
単にオイルを抜いて交換を行っても経路内のスラッジは排出されない為、
新油を入れてもすぐに再汚染されてしまいます。
新旧のタイロッドエンド。
ブーツ部が破損しており、この状態では気持ち良く走れませんね。
ブーツ部が破損していなくてもガタつきが出ている場合など交換が必要です。テストラン時にブレーキのタッチに違和感を感じた為、点検を行った所ブレーキブースター不良が判明。
この状態では安全なブレーキ操作は出来ません。
新旧のブレーキブースター。
劣化していたバキュームホースも同時に交換。
ブレーキブースターはドライバーのブレーキの踏力を軽減させる為にエンジンで発生した負圧と大気圧の差を利用して
ブレーキの踏力に応じて必要な強い制動力を発生させています。
その為、エンジンが停止してしまうとバキューム圧が無くなってブレーキブースターが作用しなくなるので
ブレーキを効かせる為の大きな力が必要になり、ブレーキを踏んでいるのに効かない錯覚(踏力不足)に陥り
大きな事故に発展してしまう恐れがあります。
何らかの原因で走行中にエンジンが停止してしまったら、慌てずにブレーキ(バキューム圧がある間は使用可能)や
パーキングブレーキ、エンジンブレーキ等を併用しながら安全な場所に停車して
掛かりつけの工場へ相談し対応して下さい。
新旧のブローバイホース。
新旧のブローバイホース。
ホース類の経年劣化について共通する事なのですが、
ホースバンドで締め付けている箇所は大きな負荷が掛かっている為、
経年劣化して固くなっているとクラックが入りやすく伸縮性も失われてしまうので、
オイル漏れや液漏れ、圧力漏れ等の不具合を発生させ、漏れているからとホースバンドを再び強く締めても
更に症状を悪化させるだけなので、劣化具合を判断して適切に対応する事が大切です。
新旧のアイドルバルブホース。
アイドルバルブに接続している2本のホースを交換。新旧のアイドルバルブホース。
単に不具合を起こしたパーツのみを交換するのでは無く、関連するパーツ一式を交換する事は
パーツの経年を同時にするだけでなく、取り外しに掛かる時間や工賃等のメンテナンスコストを
軽減させる事に繋がります。
ブレーキフルードの交換。
新油は無色透明の状態から劣化が進むと紅茶色へ変化して徐々に黒味を帯びてくるのですが、
ブレーキフルードは吸湿性が高く吸湿した水分の影響で錆や水垢等の汚れを発生させるだけでなく、
ベーパーロック現象などを引き起こして他人を巻き込む大きな事故に繋がる事もある為、
日頃からしっかりとしたメンテナンスを心掛けましょう。排出した古いブレーキフルードに異常な汚れや錆等が含まれて無いかチェックを行い、
もし異常が見つかれば原因を突き止める為、ブレーキシステム全体を点検する大掛かりな作業が必要になります。クラッチフルードの交換。
現在ではATモデルが主流なので存在自体を知らない方がいるかも知れませんが、
MTモデルではクラッチ操作の際にクラッチフルードの油圧を利用して変速を行っています。
ブレーキフルードと同様に吸湿性が高く劣化が進むと含まれた水分によって錆や水垢等が発生する事で
クラッチの操作を妨げたりフルード漏れの原因になる為、定期的な交換が必要です。
ブレーキフルードの交換が完了。
ブレーキフルードの劣化はリザーブタンク内のフルードの色で判断が可能なので日頃から確認しておくと安心です。
全ての作業を終えたら最終のテストランを行って修理箇所やその他に違和感が無いか確認を行い、
特に問題が見つからなければ最寄りの陸運支局へ車輌を持ち込んで車検を取得します。後日、オーナーへ24ヶ月定期点検記録・車検証・車検ステッカー・定期点検ステッカー等をお渡して
今後のメンテナンス等をお伝えして納車となりました。
今回はE30 M3の基本的なオイルの交換と経年劣化によるブレーキ廻りの修理を行いました。
クラシックモデルは各パーツに経年劣化が進行している事を考慮しながらメンテナンスを行う事が大切で
見た目に問題が無かったとしても劣化は進行している事を考慮して、
各メンテナンス箇所毎に全体の状態を把握し総合的に判断した上で作業を行う事が大切です。
同じモデル・年式でも使用環境や使用方法によってもそれぞれに症状は変化していく為、
主治医となるショップや整備工場とメンテナンスプランを立てて、
ご自身の車輌のウィークポイント等を把握しながらメンテナンスを行っておくと安心ですね。
2019年04月15日