【E36 M3C】24ヶ月法定点検&車検整備【180,000Km】
お盆明けから、修理・メンテナンス入庫が多く、ブログが全く追いつきません・・・
季節感がずれていたりする写真もあるかと思いますがご容赦下さい。
E36 M3Cが24ヶ月法定点検と車検整備の為入庫したのでレポートしていきましょう。走行距離は180,000Km。
20年が経過しているモデルという事と走行距離も180,000kmなので各部をチェックしていきながら
基本的な点検作業を進めます。
ボンネットを開けてエンジンルームの全体を見渡した所大きく汚れている訳でも無く、一見問題は無さそうなのですが…リフトアップをして下廻りを確認するとエンジン前部にオイル漏れを発見。
全体的にオイル汚れが酷く、何処から漏れているのか判らないので、
一度綺麗に洗浄しオイル漏れの原因をつきとめて修理を行います。
VANOSからのエンジンオイル漏れ。カムカバーからのオイル漏れもかなり多かったので、VANOS脱着と同時にカムカバーガスケットも交換しましょう。カムカバーを外しカムに傷など問題が無いか状態を確認し、
カムカバーの接着面に残った古いガスケットや液体ガスケット等を
オイルストーンで綺麗に除去して表面を整えておきます。E36 M3CにはE36 M3の初期モデルから変更されたダブルVANOSが搭載されシングルでは吸気側のみだった制御が
吸気と排気の制御になった事で更に低速域から高速域までストレスの無い走行を楽しめる様になったのですが、
その反面、可変バルブ機構が複雑になった分、
シングルVANOSでは見られなかった症状がダブルVANOSではオイル漏れだけでなく
動作による不具合も増えている印象です。
VANOSのオイル漏れはエラーコードとして検知されないので気付きにくく、
漏れが悪化してから気付くケースが多いので、
リフトアップ時などにアンダーカバーを外しチェックするようにすると良いかも知れません。
本体を外して各パーツの状態を確認し、各部のOリング等を新品へ交換。
交換部品点数が多いので見落としてしまうと未交換の箇所から必ずオイルが漏れ出すので要注意。
装着する前に本体は分解し綺麗に洗浄しておきます。新旧のVANOSフィルター。
このパーツも消耗品なので定期的な交換が必要です。本体を装着してVANOSからのオイル漏れ修理が完了。新旧のカムカバー、プラグホールガスケット、 ラバーシール。
漏れやすい箇所には液体ガスケットを併用して慎重に装着します。
交換の際にカムカバーガスケットのみを交換しているケースがあるのですが、
ラバーシールも忘れずに。
エンジンオイル交換。
交換の前にフラッシング剤を注入してエンジン内部のフラッシングを行い
内部に堆積したスラッジやカーボンを落として古いオイルと共に排出します。10~15分程アイドリングを行ってエンジン内部にフラッシング剤を浸透させて汚れを落としてから古いオイルを排出。
出来るだけ古いオイルが残らない様に排出はしずくが垂れなくなるまで時間を掛けて行い、廃油のチェックを行って
異常な金属片等が混ざってないかエンジン内部の状態を探ります。
新旧のオイルエレメント。
装着に使用するパーツは全て新品へ交換。
オイルエレメントを装着したら新しいエンジンオイルを適量注入してエンジンオイル交換が完了。使用しているオイルは当社ではお馴染みのFUCHS社のTiTAN SuperSyn 5W-50。
低温時から高温時まで安定した性能を誇り、エンジンパフォーマンスを十分に発揮させてくれるので
特にM3やALPINAのオーナーに支持されている高性能オイルです。オーナーによるとクラッチ操作が困難との事なのでクラッチの状態を確認します。
エンジンが暖まってくると非常に操作が困難になる状況を確認したので、
クラッチ交換を前提にミッションを降ろす準備を進めていきましょう。
クラッチを確認する為にマフラーや遮熱板、プロペラシャフトを車体から外しておきます。
外したパーツは異常が無いか各部の状態を確認。ミッションを車体から外して状態を確認。作業の前にスチーム洗浄を行って綺麗にクラッチダスト等の汚れを落としてから状態を確認。インプットシャフトのスプラインのグリスがきれると錆が発生し易く、
レリーズベアリングの動きにも影響してしまいます。
今回は錆の発生は無かったのですが、摩耗して荒れてしまっているのでスムーズに動くように表面を整えます。
ここ最近ブログでお伝えしているE46モデルより錆の発生は少な目でしたね。
マフラーの遮熱板の汚れなどを綺麗にスチーム洗浄。インプットシャフトのスプラインを研磨して綺麗に整えてからグリスアップをしておきます。SSTを使用してフライホイール奥のパイロットベアリングを外します。新旧のパイロットベアリング。
ベアリング系のパーツは内部の球体が動く事でスムーズに動作しているのですが、
使用していくと内部の球体が摩耗する事で
スムーズな動きが出来なくなって異音の発生や最終的には固着する等で破損してしまうので
不具合が出なくても経年を考慮して交換をしておく事が必要です。新旧のクラッチカバー、クラッチプレート、レリーズベアリング。
3点全てを同時に交換する事がセオリーなのです。フライホイールを軽く研磨して表面を綺麗に整えた後、クラッチプレート、クラッチカバーを装着。
新しいレリーズベアリングを装着してミッションを車体へ戻します。プロペラシャフトを装着する前にデフ側のガスケットを新品へ交換。ミッションを車体へ戻したら、プロペラシャフト・マフラー・遮熱板を装着してクラッチ交換が完了。スティック気味だったブレーキのオーバーホールを実施。
走行はエンジンだけでなく止まる為のブレーキも非常に重要ですね。
安心した走行を楽しむ為にも定期的な点検と経年や走行距離を考慮してオーバーホールを実施する事も大切です。
前後輪共に全てのブレーキキャリパーを外し、分解してピストン等のパーツの状態を確認。キャリパーからピストンを抜き取ってキャリパー側やピストンに錆の発生や傷が無いか確認。前後輪共にピストンに若干錆が発生していましたが、綺麗に研磨すればまだまだ頑張ってくれるでしょう。
クレーターのような腐食が出てしまっているピストンは残念ながら使用できませんので、
そういった場合は、新品に交換になります。
ピストンはブレーキフルードの劣化や漏れ、キャリパーシールの劣化等の影響で
水分が侵入して錆が発生するのですが、
錆が発生するとピストンの動きが妨げられてしまう為、スムーズな動きが出来ずに固着してしまい
ブレーキの引き摺りや片効き等の原因になるので
ブレーキに違和感を感じたら直ぐに掛かりつけの工場へ相談するのが良いでしょう。キャリパーオーバーホールキットを使用してブレーキを組み上げます。
ピストンの表面を綺麗に研磨して錆を落とします。
ブレーキキャリパーのオーバーホールに合わせて前後輪のブレーキパッドを交換。
パッドは装着前に面取りしておく事で音鳴り防止やブレーキフィーリングも向上させます。
ローターの写真を撮り忘れていますが、前後ともにローターも交換しています。
ブレーキフルードの交換。
ブレーキラインのフラッシングを行ってブレーキライン内で発生した水垢や錆等の汚れを車外へ圧送。
同時に排出されたフルードを確認して異常な錆等が含まれて無いか確認。
もし、異常が見つかれば原因を特定する為にブレーキシステム全体を調査するので大掛かりな作業が必要になります。
特に問題が無ければ新しいブレーキフルードを注入してエア抜きを行って交換作業が完了。クラッチフルードの交換。
ブレーキフルード同様に吸湿性が高い為、
交換をせずに使用していると水分の影響でレリーズシリンダー内に錆が発生して
その影響でフルード漏れを起こしてしまうと油圧が伝わらずクラッチ操作が出来なくなってしまうので、
MT車はブレーキフルード交換時には必ずクラッチフルードも交換しましょう。
新旧のファンベルト・エアコンベルト。
ベルト類も徐々に経年劣化してしまうので、経年や走行距離に関わらず状態を確認して交換して下さい。
キュルキュルとベルトを鳴らしながら走行している車を見かける事が有るのですが、
ベルトが切れてしまうと走行出来無くなるばかりか、
切れたベルトがエンジンルーム内で暴れる事で他のパーツを破損させて
更に被害を悪化させるので、安易に放置してしまうと思わぬトラブルに発展する事がある為、注意して下さい。ベルトを確認するとヒビ割れて亀裂が多く入っていました。
M3の様なハイパフォーマンスなエンジンを搭載しているモデルはベルトへ大きな負荷が掛かる為、
多少の亀裂でも安易に見逃すと大きなトラブルへ発展してしまいます。
ベルト劣化の初期症状としては、エンジン始動時にキュルキュル音~暖まってくると音が止む・・・です。
ベルトの交換と同時にベルトプーリーやテンショナー・ローラー等も交換。
ローラー内のベアリングがグリス切れを起こして固着してしまうと
ベルトとの摩擦が大きくなりベルトの断裂に繋がってしまう為、
消耗品としてベルトの交換と同時に交換するのがセオリーなのですが、
工場によってベルトのみの交換で済ませてしまう事があり
無料点検等で持ち込まれた車輌を点検するとベルトは新品なのにその他の付随するパーツは交換されて無い等、
安易な修理を施されているケースがあるので、自身でも作業内容に目を通して把握する事も大切です。
全ての作業を終えたら最後にテストランを行って各部に不具合が無いか確認。
特に問題が無ければ最寄りの陸運支局へ車輌を持ち込んで車検を取得し、
後日オーナーへ24ヶ月定期点検記録・車検証・車検ステッカー・定期点検ステッカー等を渡して納車となります。
今回の車輌は走行距離が180,000kmという事で通常の作業の他にオイル漏れの修理やクラッチ交換、
ブレーキのオーバーホール、ベルト類の交換を行いました。
どんなメーカーのモデルでもそうかも知れませんが、それぞれウィークポイントが異なる為、
車の状態を把握しないと通常のメンテナンスだけでは見逃してしまうケースがあり、
メンテナンスをしっかりと行っているつもりでも注目するべき箇所を見逃してしまっては
十分なメンテナンスとは言えないので、オーナー自身も所有する車輌のウィークポイントや
現状の状態を把握して的確なメンテナンスを実施していく事が大切ですね。
2018年10月29日