【E30 M3】法定24ヶ月点検&納車整備FileNo.3【100,000Km】
FileNo.1から3回目を迎えたM3納車整備の模様を今回もお届け致します
前回の記事は
【E30 M3】法定24ヶ月点検&納車整備FileNo.2【100,000Km】からご覧になって下さいね。
リアセクションを元に戻す前に、クラッチ、ミッションマウント、プロペラシャフトのセンターベアリングの交換。
ミッションマウントの劣化は徐々に進んでいきますので、
『最近ミッションマウントが劣化したなぁ・・・』とは体感しにくいものです。
ですが、交換した際に車のダイレクト感がはっきりと体感出来る部分になり
アクセルオンオフのレスポンスアップやシフトの入りやすさが格段に向上します。まずはミッションを降ろしていきます。マニュアルトランスミッションであれば必ずクラッチが付いています。
クラッチ交換時期に関して問い合わせを受ける事も多いのですが
こればかりは、走り方によって変わってくる部分なので
何ともお答えのしようがないというのが正直なところですが、
今まで最短で1ヶ月でクラッチを滑らせてしまった人を見たことがありますし
150,000Km以上も無交換で乗り続けた人も知っていますので
この部分に関しては乗り方によってパーツの寿命が大きく変わってくるところでしょう。ストック車輛として入庫した際に、一度ミッションを降ろしクラッチ残量をチェックしており
そのついでにケース内を洗浄していたので粉塵の付着も無く綺麗な状態。E30 M3のクラッチ交換では、大概フライホイールの表面が焼けている事がほとんどで
しっかりと研磨し、新しいクラッチを取り付ける必要があります。
この焼けや歪みをそのままに新しいクラッチを取り付けてしまうと
クラッチの摩擦力が低下し、ジャダーや滑りが起こりやすくなります。クラッチの交換はクラッチディスク、クラッチカバー、レリーズベアリングの三点ワンセットで
交換するのがセオリーですね。
クラッチディスクが摩耗しているからディスクのみを・・・
といったような、安易な交換をしてしまうとシフトチェンジがスムーズに行われなかったり
ジャダーが多くなったりとトラブルが出る可能性がグンと上がり
一ヶ月も経たないうちにまたミッションを降ろさないと・・・なんて事も今まで多く見てきました。ダイヤフラムスプリングから異音が出ないようポイントごとに注油していきます。
クラッチペダルを踏み込んだ際に出る異音等を防ぐ為に必要な作業になります。インプットシャフトの汚れと錆を取ります。
こういった部分もそのままにしておくとクラッチのディスクの動きが悪くなり
切れ不良を引き起こすことも。
また錆はそのままにしておくとインナーシャフトに飛び火する事もありますので
錆を除去したのちにグリースを薄く塗り、錆の発生を抑えます。この程度綺麗にしておけば問題無いでしょう。クラッチを取り付け。ミッションマウントも新品に交換。ミッションを元に戻しクラッチ交換は完了です。プロペラシャフトのセンターベアリングを交換。
プロペラシャフトはミッションのアウトプットシャフトとデファレンシャルのコンパニオンフランジを
つなげている鋼管になります。センターベアリングはプロペラシャフトの1軸と2軸との間に設置されていますが
適正な位置に固定されていないと走行中にドコドコといったような打音が
室内に鳴り響きます。センターベアリングを固定する取り付け穴は見ても分かる通り
かなり余裕のある作りになっており、しっかりとセンター出しを行いながら
取り付けをしないと、簡単に斜めに固定されてしまいせっかく新品に交換したのに
上記のような打音が鳴りはじめたりする事もありますので注意が必要です。プーラーを使用してベアリングを引き抜いていきます。
車によっては焼き付いてなかなか取り外せない場合も。センターベアリング新旧。スプライン部分を綺麗に清掃し、新しいベアリングをプレスで圧入していきます。各アームにブッシュの圧入をしている間に下廻りの清掃をしていきます。
新品のアンダースポイラーを取り付けする為の下準備・・・リヤ廻りの汚れと微妙に錆の出ているタッピングスクリュー類が気になります。ブラシでゴシゴシと・・・ブラシ作業後にスチーム洗浄。リア廻りも綺麗になりました。フィラーパイプラバーも交換。ブッシュの取り付けが終わったアクスルキャリアやアーム類も汚れを落としていきます。錆の出ているところは綺麗に錆を落としていきます。リアスプリングパッドも新品に交換。リアスウィングサポート交換。スウィングサポート新旧。フューエルホースのヒビが目立っていたので急遽パーツを用意し交換。かなり変形しているのが分かりますね。
ブッシュ交換が完了したリアセクションを元に戻していきます。微調整をしながらリフトを徐々に下げていき、ドッキングさせます。マフラーステーが割れていたので修理。ステンレスの溶接は鉄に比べ難しい上、マフラーは板厚が薄いので慎重に。サンダーで余分な溶接痕を削り整えてガッチリ固定出来ました。作業も大詰め。フロント、リアのブレーキ整備を開始します。ローター、パッドの交換とあわせてキャリパーの錆が目立つ為
錆を落とし塗装していきます。使用限界目前。残0.05m。キャリパーは取り外しサンドブラスト後に塗装します。
ただ取り付けて終わりではなく、ローターの焼き付けやブレーキパッドとのアタリを
丁寧に行う事で、ブレーキペダルを踏んだ際のタッチは格段に良くなりますので
取り付け方ひとつとっても、きちんと考えながら進めていく事が大事になってくるわけです。
リアパッド新旧。サイドブレーキの調整も、しっかりと行い前後ブレーキ整備は完了です。4輪アライメント測定と調整。調整前。
フロントはタイロッド交換しているので、出鱈目な方向に向いていますが
トー調整で問題無く気持ち良く走れるようになりました。
リアはブッシュ交換しているので理想的な数値が出ていますね。
良い感じです。全リレーとヒューズを新品に交換していきます。10年に一度は交換しても良いパーツでしょう。
電気の流れが良くなれば、電装パーツの動きも良くなり、寿命も長くなります。交換完了。フォグランプ球が切れていたので交換。
フォグランプが枠に綺麗に収まっていなかったので調整します。経年でバンパー自体が歪み、そのままでは綺麗に取り付け出来ませんでしたが
取り付け穴を拡大し、調整幅を大きくとるようにしてピタリと収まりました。フロントタイヤハウスのインナーカバーの交換。
フロント側に付くカバーも交換します。
ここが割れてしまっているM3も良く見かけますね。ワイパーブレードが歪んでおり、拭き取りがあまり良くなかったので
ワイパーゴムだけでなくブレードも交換。ガラスに付着した雨染みを研磨していきます。手作業で根気のいる作業ですが、コンパウンドの量と力の加減を
考えながら進めないとガラスを傷つけてしまうので注意。左が除去後、右が除去前。
違いが良く分かりますね。納車に向け、着々と仕上がってきました。
作業前と比べると随分変わっているのが分かりますね。予備検査取得の為に陸運支局へ。
問題無く検査は通りました。自走で長崎に納車へ向かう為にテストランを何日か繰り返し行います。が!
スタンドで満タン時に事件が・・・
FileNo.1でお伝えした問題が発生・・・
右リアタイヤハウス内にガソリンのエア抜きホースが付いているのですが
このホースからガソリンがじゃじゃ漏れに・・・清掃時に何となく嫌な予感はしていたのですが、予感的中でした・・・
新オーナーの手に渡る前に発見できたので結果オーライではありましたが
まだまだ・・・だなと痛感。自社にストックがあったので、すぐに交換できました。走行中にフォグランプが点いたり消えたり・・・ビニールテープで固定されていますが、経年で粘着力も無くなりボロボロに・・・結線をやり直してコーキングで防水処理。その夜もテストラン。
この日は首都高周回でみっちりとテストラン。翌日、電動ファンの動きがイマイチである事が発覚。ファンレジスターのHi-Loがうまく切り替わらずに、いきなりHiから動き出してしまい
電動ファンのヒューズが飛んでしまう為、レジスターの交換。ファンレジスター新旧。
E30 M3のパーツストックはそれなりにしているので、こういった予期しないトラブルでも慌てず対応。交換後、電動ファンの動きも快調になり車の仕上がりも合格点に近くなってきました。走行中に助手席ドアパネルからコトコトと音がしていたのでチェックします。若干緩んでいたようなので増し締めし、完全に音は消えました。最後のテストラン。
この日は第三京浜から湾岸へ。
大黒ふ頭周回コースで快調に飛ばし、いよいよ納車準備OKです。いざ、長崎へ。
自走で1,200Kmを走り抜けます。
夕方18:00に出発し、夜中の1時に吹田ジャンクションを通過し山陽道をひた走り。本州と九州をつなぐ関門橋には朝の7:00に到着し
ここで朝食をとり更に西へ西へと向かい無事に長崎に到着しました。
機関トラブルも無く快調なドライブを楽しみましたよ。陸運支局で名義変更完了。夏の夜の高速は虫がかなり飛んできますので、納車前に洗車。
丁寧に洗車してくれました。1,200km快調に走り抜け、新オーナーのガレージにピットイン。
車が本当に好きなんだなと誰が見ても分かるガレージですね。
M様、納車まで長らくお待たせしました。
次回はM様が当社までのドライブを楽しむ番ですよ。
これからも宜しくお願い致します。
今回の納車整備は、整備内容と写真点数が相当多かった為
FileNo.1 FileNo.2、そして今回のFileNo.3でお届しました。
2014年08月20日