第46回 M3C各部リフレッシュ。
今回入庫したM3Cは走行距離がもうすぐ70,000kmで、心なしか吹け上がりの悪さと
足廻りのふらつき具合に疑問をお持ちになったようで当社に初めてご来店されました。
無料の50項目点検から始まり各部のオイル漏れやオイルの汚れ具合を目視でお客様と共にチェックし
その他足廻りやエンジンの吹け上がりの良し悪しは無料点検内では判断がつきかねる場合が多いので
お預かりさせて頂き、テストランと各部の分解点検により詳細な見積もりをメールにてお伝えしメニュー自体に優先順位をつけ
お客様と相談し今回のメンテナンスメニューを決めさせて頂きました。
シリンダーブロック横のプレッシャーバルブからのオイル漏れ。初めてご来店されたお客様の
車輌の約七割近く漏れが見られます。中には納車されたばかりなのに・・・・という車輌も少なくありません。
Oリングがしっかり潰れてしまっているのが分かります。
オイル漏れは早期に直す。これが速く走ることの出来る車とのうまい付き合い方です。
VANOS外観も最初は全体がオイルまみれで埃がかぶり真っ黒の状態でした。
そのままではオイル漏れ箇所の特定が出来ないのでスチーム洗浄後、テストランと分解をし
確認するとVANOSフィルターからのオイル漏れを確認したので交換。
ソレノイドバルブはしっかりと正常に機能しておりました。
今年に入ってからVANOSの不具合が目立ちます。エンジン始動時ガラガラとエンジンルームから異音が
出ている車輌はVANOSの機能チェックをする事をおすすめします。
意図的では無いと思いたいですが中には粘度の硬いオイルを入れて音を消してしまっているなんて事も。
VANOSはM3独特のアクセルレスポンスの良さを制御している重要な役割箇所の一つ。
アッセンブリーだと非常に高価なパーツです。ちょっと神経質になりすぎても良い箇所でしょう。
M3では初めてでした。ステアリングからの異音修理です。
実害はありませんがエアバックの裏辺りからプラスチックを引っ掻いている様な音は気になりだすと、非常に耳障りです。
ステアリングシャフト先端のパーツ交換になりますのでステアリングシャフトの脱着が必要になります。
ステアリングシャフト先端は錆だらけでした。アッパー、ロアーベアリング交換後
同じような症状が起こらないように錆びない為の工夫をちょっと凝らし、元通り組み込みました。
VICにて燃焼室の清掃実施。排気ガスと共にマフラーから燃焼された汚れが出て行きます。
エンジンをかけながら注入しますが途中で必ずエンジンストップさせます。
しばらく放置し、汚れを浮かせエンジンを始動した時の排圧で汚れを飛ばします。
エンジン始動のタイミングを誤るととエンジン始動が困難になります。
燃圧値は許容範囲内でしたがインジェクターにも汚れが随分付着していた為
フューエルラインの洗浄も同時に施工。フューエルフィルターもいつ交換したのか不明なので
同時に交換です。目視での汚れの判断が付き難い場所なので早期交換がおすすめです。
プラグもご覧の通り真っ黒の状態。燃焼系清掃を施工した場合は当社の場合必ず新品と交換します。
R2000の施工、各オイルのリフレッシュ。オーナー様自身が何時どのようなメンテナンスを施し、
次回の交換時期をどのくらいか把握して乗っていくのがうまい付き合い方です。
何を何時何処で施工したのかも把握していないと自分の愛車の状況が良いのか悪いのかさえも判断が出来なくなっていくでしょう
当社もお預かりしメンテナンスさせていただいた車輌に関しては車輌データを取らせていただき管理させてもらっています。
お客様ご自身と私達とで車輌状態を把握しておくように心がけていくことにより大きなトラブルが回避出来る事も多いです。
足廻りの頼りなさが気になるとの事でしたのでテストランした所、確かに粘りがなくステアリングも左左と
持っていかれるので、チェックした所キレや欠損はあまり見られませんが経過年数を考えれば交換時期なので
足廻りもリフレッシュ。今回はショックも交換。M3本来の性能を楽しみたいとのお客様からの要望でビルシュタインに
するかSACHSにするか打ち合わせをした結果、SACHSをチョイス。純正リプレイスメントタイプなので車高も変わらず
乗り味もM3本来の物に激変。価格も純正に比べリーズナブルで当社でも好評です。
各部のブッシュの状態は・・・
ネジレ、ヒビ、硬化多数といった所でしょうか。
こういった補助パーツが消耗する代わりに肝となる部分へのダメージを少なくしているのがドイツ車の良い所。
交換すれば誰もが車輌の挙動が変化した事に気付くのも施工した方としてもうれしいものです。
最後に4輪アライメント測定調整を行い、とりあえず基準値内に収めテストラン。
基準値内でも挙動が不安定な場合もありますのでそういった場合はタイヤの磨耗具合等も見て再調整します。
それとブッシュ交換時には車体自体をリフトアップして交換します。タイヤを付け接地した時に各ブッシュに初めて
力が加わるのですがその時にネジレが発生する箇所もあります。そういった箇所の取り付けの再調整を
することにより車本来が持つポテンシャルを十分引き出します。手間はかかりますが意味のない作業にならないよう
かなりの距離をテストランに費やし何人かのスタッフが確認し問題がない事、
レスポンスアップがしっかりと確認出来るまで作業は続きます。
もちろんテストランはお客様に了承をもらってしております。逆に大概『いくらでも乗って頂いて結構です。』
と仰っていただけるのでこちらとしても非常に有り難くも思います。
今回お客様の車輌保険で飛び石のあったフロントガラス交換、
ボンネット再塗装も同時に施工したので外装は各モール類をリフレッシュ。
東京海上日動火災保険株式会社の代理店をしておりますので、保険アジャスターとの交渉も当社が
お客様に代わって致します。使用する塗料、工程の違いによって修理の仕上がりは大きく変わってきます。
塗装したてではパッと見分からないかもしれませんが半年、1年と月日を重ねていった時に
パテ目が浮き出てきてしまったり、塗面がぼやけてきてしまったりといった修理も少なくないようです。
またその違いを保険アジャスターに説明し、一番ベストな修理方法を提案、説明し
その一番ベストな修理方法で修理を実施するのも私達の仕事になります。
モール部分に関しましては前回のメンテナンスレポート内容と被りますので詳細は割愛させて頂きます。
作業終了後はテストラン。フラフラと左左と取られていたステアリングもピシッと真っ直ぐ安定し
コーナーリングの切れ込みも中もしっかりと粘ってくれ本来の足廻りがよみがえりました。
吹け上がりも言うこと無し。低速から高速までトルクフルなM3Cらしい走りをしてくれます。
マニュアルでも渋滞が気にならないし、高速もゆったりした走りから一気にシフトダウンし
アクセルを踏み込むと321PSの力強い走りで首が後ろに持っていかれるほど。
70,000kmという距離は決して少ない距離ではありませんがこれからのレスポンスアップが期待出来るM3Cでした。
納車時、お客様と次回のメンテナンスメニューと今回施工した箇所の説明をさせて頂きました。
M3Cも最近ではなかなか良質な車輌が少なくなってきましたので大事に乗っていただければと思います。
又のご来店をお待ちしております。
2007年08月03日